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日立の2018年度第3四半期連結業績、当期純利益が68%減

英国の原発プロジェクト凍結の影響 最終黒字見通しは上方修正

 株式会社日立製作所(以下、日立)は1日、2018年度第3四半期累計(2018年4月~12月)の連結業績を発表した。それによると、売上収益は前年同期比1.6%増の6兆7829億円、調整後営業利益は同12.6%増の5345億円、EBITは同2.6%減の3054億円、税引前利益は同34.5%減の3067億円、当期純利益は同68.0%減の826億円となった。

2018年度第3四半期累計の連結業績概要

 日立 代表執行役執行役専務兼CFOの西山光秋氏は、「売上高は情報・通信、鉄道、日立ハイテクノロジー、建設機械で増加。営業利益は、半導体、スマホ、自動車の市況の悪化の影響を受けた高機能材料、オートモーティブシステムが減益となったが、情報・通信、社会産業セグメントが収益性の改善と、建設機械の売り上げ増がプラス要素になった。営業利益は、第3四半期累計では4745億円だった2017年度の過去最高を更新した」と総括した。

日立 代表執行役 執行役専務CFOの西山光秋氏

 売上収益、調整後営業利益では、日立国際電気の再編影響や為替がマイナスに影響。一方で収益改善効果がプラスとなった。また、英国原子力発電建設プロジェクト(ホライズンプロジェクト)の凍結に伴う減損損失で、第3四半期に2772億円のマイナス費用が発生している。

英国原子力発電建設プロジェクト(ホライズンプロジェクト)の凍結について

Lumadaの売上収益は12%増

 Lumada事業の売上収益は前年同期比12%増の7570億円。年間見通しは100億円増の1兆800億円とし、それに対する進捗率は70.1%となった。

 Lumadaコア事業の売上収益は前年同期比53%増の2050億円(通期見通しは3200億円)。Lumada SI事業の売上収益は同2%増の5520億円(同7600億円)となっている。

Lumada事業の進捗

 Lumadaのソリューション拡充として、サントリー食品との協創を通じ、AIを活用した生産計画立案システムを開発し、需要変動に即応した商品の安定供給と業務効率改善に貢献したことを紹介した。

 さらに東京海上日動とは、製造現場のデジタル化に向けた協創を開始。Lumadaのソリューションを活用して、機器の予兆診断と保険を組み合わせた新たなサービスを開発したという。

 また、グローバルな協創の拡大として、インド最大の国営商業銀行であるインドステイト銀行と合弁会社を設立。同銀行の加盟店ネットワークと日立のデジタル技術を融合することで、新たな電子決済サービスを構築した。インドにおける電子決済の利便性向上、品質向上を目指すという。

 「工場の合理化や省力化、品質向上に関するアプリケーションが増加しているほか、Fintechなどの金融関係でのAIの応用も増えている。セグメントとしては、情報・通信が8割、残りが産業領域などになり、鉄道でも予兆診断などでLumadaの応用が始まっている。このトレンドは今後も続くと考えている。ハードウェアへの投資は不透明だが、省力化や品質向上、新サービスの創出などの取り組みが増加していくと考えている」とした。

事業部門別の業績

 国内売上収益は前年同期比1%増の3兆2215億円、海外売上収益は同2%増の3兆5614億円。海外売上比率は53%。

 事業部門別では、情報・通信システムの売上収益は、前年同期比3%増の1兆4508億円、調整後営業利益は前年同期から387億円増の1570億円、EBITは同605億円増の1649億円となった。

 システムインテグレーションを中心としたフロントビジネスの売上収益は前年同期比5%増の1兆0231億円、調整後営業利益は前年同期から205億円増の1011億円。ITプラットフォーム&プロダクツの売上収益は前年同期比2%減の5377億円、調整後営業利益は前年同期から144億円増の519億円となった。

 「情報通信ネットワーク機器子会社のアラクサラネットワークの譲渡によるマイナス影響があったが、システムインテグレーションの増加および収益性改善、通信ネットワーク機器の旧生産拠点である戸塚事業所の土地売却益もプラスに働いた」という。

 一方、社会・産業システムの売上収益は前年同期比5%増の1兆6982億円、調整後営業利益が前年同期から342億円増の977億円。

情報・通信システムと社会・産業システムの業績概要

 電子装置・システムの売上高は前年同期比9%減の6930億円、調整後営業利益は前年同期から7億円減の551億円。建設機械の売上高は前年同期比9%増の7431億円、調整後営業利益は前年同期から190億円増の843億円。

 高機能材料は売上高が前年同期比5%増の1兆2978億円、調整後営業利益は前年同期から111億円減の820億円。オートモーティブシステムの売上高は前年同期比2%減の7268億円、調整後営業利益は前年同期から147億円減の186億円。

電子装置・システムと建設機械の業績概要
高機能材料とオートモーティブシステムの業績概要

 生活・エコシステムの売上高は前年同期比12%減の3528億円、調整後営業利益は前年同期から58億円減の96億円。その他部門の売上高は前年同期比2%減の3953億円、調整後営業利益は前年同期から61億円増の220億円となった。

生活・エコシステムとその他などの業績概要

通期業績見通し、最終黒字を上方修正

 2018年度の通期業績見通しは、売上収益は前年比0.3%増の9兆4000億円、営業利益は4.9%増の7500億円は据え置いたが、EBITは1月17日公表値に比べて500億円増の5000億円、税引前利益は550億円増の前年比23.3%減の4900億円、当期純利益は800億円増の同50.4%減の1800億円とした。

2018年度の通期業績見通し

 情報・通信システムでは、調整後営業利益で前年から70億円増の2070億円へと修正。ITプラットフォーム&プロダクツの収益性改善が寄与した。

 「情報・通信は、ストレージの原価低減や新機種の投入も計画通りに進んでいる。また、プロジェクトマネジメントがしっかりし、ロスが出なくなっている」とした。

 最終黒字の上方修正は、オートモーティブシステム事業におけるクラリオン株式の売却に加えて、2019年3月までに、エネルギーステーション事業(日立オートモーティブシステムズ・メジャメント)、商用車用パワーステアリング事業(日立オートモーティブシステムズ)、車載用リチウムイオン電池事業(日立ビーグルエネジー)の売却益、鉄道システム事業におけるアジリティ・トレインズ・ウエストの株式一部売却などが影響するためと説明した。

 また、今後の見通しとして、「2019年度は、マクロ経済の不透明のほか、各産業分野においても厳しい状況でみる必要がある。しかし、社会イノベーション事業は、Lumadaがけん引するソリューションの拡大や、デジタルソリューションは拡大していくことができると考えている。さらに一段収益性をあげて、グローバルコンペチターに対抗していく必要があり、そのための研究開発投資も必要である」との見方を示し、「現在策定中であり、2019年4月に発表を予定している『2021 中期経営計画』に反映したい」と述べた。