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「バックアップを入り口にデータのエンドユーザーに利益を提供」、新興ストレージベンダーのRubrik
成城大学とCNCIの担当者がそれぞれの事例を紹介
2019年3月7日 06:00
Rubrikは2014年に設立された、比較的新しいバックアップアプライアンスのベンダーだ。その日本法人であるルーブリック・ジャパン株式会社(以下、ルーブリック)が3月6日に、自社とその製品に関する記者説明会を開いた。
Rubrikソリューションの特徴としては、セットアップや運用の簡単さが強調されたほか、クラウド対応やデータの利用性についても紹介された。ユーザーとして、成城大学と株式会社コミュニティネットワークセンター(CNCI)の担当者も登場し、Rubrik採用事例を語った。
セカンドストレージでなくデータの利活用に重点
Rubrik社とそのソリューションの特徴については、ルーブリック チャネルディベロップマネージャーの永井弘訓氏が説明した。
Rubrikは2014年に設立され、本社は米国カリフォルニア州パロアルト。VMworld Best of Show Awardを2年連続受賞するなど、業界で大きく注目されていることを永井氏はアピールした。
Rubrikのソリューションについて永井氏はまず、従来のバックアップやデータ管理について語った。それらは、バックアップソフトウェアやバックアップサーバー、レプリケーション、カタログデータベース、重複排除、バックアップストレージなどの組み合わせから構成される。そうしたシステムでは、バックアップされたデータは塩漬けされているだけで再利用性が低く、クラウド対応や自動化なども遅れていると氏は主張した。
それに対するRubrikの特徴として、まず各機能がアプライアンスで1つにまとめられていて、その1つのアプライアンスの面倒をみるだけでバックアップの運用管理ができることを永井氏は挙げた。クラウドや自動化などにも対応している。
また、データの再利用性も永井氏は挙げた。「世の中のバックアップはしばしば『セカンドストレージ』と言われるが、Rubrikではそう呼んでいない。バックアップをとるだけでなく、それをいかに利活用するかに重点を置いているからだ」(永井氏)。
日本法人は2016年12月に設立され、現在は社員数13名。代理店は、ディストリビューターが3社(nox、東京エレクトロンデバイス、ネットワールド)でリセラーが20社あり、販売は100%パートナー経由となっている。これまで、大手インフラやMSP、文教関連、製造業などでの導入実績があるという。
日本での成長に向けては、アライアンスパートナーとの連携拡大や、最新バージョンであるv5.0から対応した日本語管理GUI、日本語Webサイトや情報発信などを永井氏は挙げた。
バックアップを入口に、データのエンドユーザーに利益を提供する
製品については、シニアSEマネージャーの神近孝之氏が説明した。
製品ラインアップとしては、まずオンプレミス向け製品として、自社ハードウェアのアプライアンス製品「r6000」シリーズと、サードパーティのハードウェア(Cisco、Dell、HP)と組み合わせた製品がある。
また拠点(ROBO:Remote Offices and Branch Offices)向けに、仮想アプライアンス製品の「Rubrik Edge」がある。さらに、クラウド上で動作するRubrikソフトウェアの「Cloud Cluster」がある。
説明会には、実際の製品としてRubrik r6404アプライアンスが展示された。1つの筐体に4ノードが入って1つのクラスタファイルシステムを構成し、ノードを追加すればスケールアウトできるという。
Rubrikの特徴としては、「エンタープライズ向け」「クラウド連携機能」「セキュリティ」の3つを神近氏は挙げた。
エンタープライズ向けの特徴としては、まず「簡単なセットアップと運用」があり、30~40分でセットアップできるほか、バックアップもポリシーを決めれば自動的に取れる。また「すべてのエンタープライズアプリケーションに対応」ということで、VMwareなどのハイパーバイザーのVMから、WindowsやLinuxなどのOS、OracleやSQL Serverなどのデータベースなどに対応している。さらに、数テラバイトを数分でリカバリ(リストア)するインスタントリカバリできるのも特徴だという。
クラウド連携機能としては、まず長期保管のためのクラウドへのアーカイブ機能がある。そして、リストアするときにはGoogleライクの検索で目的のファイルを探し、ファイル単位でリカバリできる。
セキュリティとしては、通信経路からストレージまで、エンドツーエンドの暗号化がなされているほか、一度書き込んだら書き換えられない非脆弱性によって、ランサムウェアに対抗する。さらに、Rubrikを一元管理するSaaSサービス「Rubrik Polaris」の中で、機械学習を用いてデータの変化の異常を検出する「Poraris Rader」機能も用意している。
Rubrikの最新版であるv5.0では、多数の新機能が加わった。その中で日本で大きいものに、日本語GUI対応がある。
クラウドアーカイブ関連の新機能としては、NAS Direct Archiveが追加された。大規模なNASのバックアップにおいて、Rubrikではインデックスとキャッシュデータだけを持ち、データの実体がクラウドにあるようにする。これにより、アーカイブコストを削減し、Rubrikの素早いファイル単位の検索とリストアを活用し、データの可搬性を上げるという。
Oracleデータベースでの新機能としては、「インスタントリカバリとクローン作成」がある。大量のデータベースのポリシー制御と、インスタントリカバリ、開発やテストのためのライブマウントを、1クリックで実行できる。また、リカバリ時にスライドバーにより復旧地点を選べる「ポイントインタイム(PIT)リカバリ」も新機能だ。
Office 365での新機能としては、「Office 365 Protection Polaris SaaS」がある。RubrikのSaaSであるPolarisがコントロールプレーンとなり、Office 365のメールやカレンダーをAzure BLOBストレージにバックアップする。つまり、すべてクラウドで完結する。
そのほか、SAP HANAでの新機能としては、SAP HANAのポリシーによる保護が紹介された。
このように、Rubrikは「これ1台でバックアップできる」からスタートし、ディザスタリカバリ(DR)や、データを開発環境など用に再利用するコピーデーターマネージメント、クラウド連携などに進化してきた。
神近氏は「ここまでなら競合社でも同じ」として、これからのRubrikの進化について、Rubrikを一元管理するSaaSサービス「Rubrik Polaris」に軸足を置くと語った。Polarisが、オンプレミスやクラウド、拠点のRubrikを一元的に統合管理する。クラウド間DRやコンプライアンス向けも予定しているという。「バックアップを入口にして、データのエンドユーザーにベネフィット(利益)を提供する観点で、機能をリリースしていく」と神近氏は今後を語った。
「Rubrikを入れていたことを忘れるぐらい簡単」
ユーザー事例の1つめとしては、学校法人 成城学園 成城大学 メディアネットワークセンター 課長の五十嵐一浩氏が登壇した。なお、五十嵐氏はVMUG(VMware User Group)の代表でもある。
五十嵐氏の仕事は大学のIT部門にあたる。もともと、学術情報ネットワークSINET4の、現在から見ると狭い回線でDRのレプリケーションをするため、重複排除の要件を踏まえ、2014年からVMware vSANを使っていたという。
ただし、当時使っていたバックアップソフトウェアではトラブルが多く、「バックアップに引きずられて管理が煩雑になるのはおかしい」と感じていた、と五十嵐氏は語った。
そこで、好評を聞いていたRubrikを導入した。五十嵐氏から見たRubrikの良いところは、シンプルで簡単であり、ポリシーを決めれば自動的にバックアップが取られるところだという。自動で動くため「自分でもRubrikを入れていたことを忘れていたぐらい」と、氏はジョークを交えて語った。
そのほか、バックアップからの検索が簡単で、必要なファイルだけ取り出せる点、アップグレードしたときにも作業が簡単で、20分で問題なく完了したことも、良い点として挙げた。
「運用が楽で、ノートラブル」
ユーザー事例の2つめとしては、株式会社コミュニティネットワークセンター(CNCI) 技術本部 サーバグループ リーダーのニコライ・ボヤジエフ氏が語った。CNCIは、複数のCATV事業者を束ねるケーブルテレビMSO(Multiple System Operator)の事業者で、東海地区のCATV 11局で合計約150万世帯が加入しているという。ボヤジエフ氏はそこで、ISP事業の運用・構築をしている立場だ。
CNCIではその事業上、大きなインターネットバックボーンにマルチデータセンターを持ち、メールサーバーのような、重要インフラに認定されているリソースも抱えている。
その中で2017年に、100VM以上を扱う新しい基盤を作ることになった。それにともない、オフサイトバックアップが必須要件となり、統合的なバックアップが必要になったという。そのためのシステム構成では、バックアップに関連するさまざまなコンポーネントが必要になるほか、スケーラビリティや可用性を担保する必要があった。
そこでボヤジエフ氏は、好評を聞いていたRubrikについて、2017年9月に検証機を借りて検証してみることにした。自分たちだけで、ラック設置を含めて45分以内にセットアップしてバックアップ開始でき、マニュアルなしでポリシー設定やリストアができたという。リカバリも数秒で完了。「いい製品という印象を持った。特に、運用が楽だと感じた」と、ボヤジエフ氏は語る。
この検証結果から、2017年11月に導入した。「五十嵐さんとは違って私はちょこちょこ動作を見ていますが(笑)、特にエラーもなく順調に動いています」とボヤジエフ氏。
約1年使ってみての感想としてボヤジエフ氏は、「ノートラブル」「運用が楽」という点をまず挙げた。バックアップもちゃんとでき、リストアを数回実施したが短時間で完了したという。
オペレーションミス時のエピソードもボヤジエフ氏は語ってくれた。ノードの接続先ネットワークを間違えてしまったときには、ログインもできなくなり、接続しなおしたところ、ノードに異常が発生していた。この異常はRubrik自身により自動的に修復されたという。
また、バージョンアップ作業のときに、ゴミファイルがあって進まないという症状が起きたときに、Rubrikのサポートとやりとりして、1時間以内に解決したという。「サポートの速さに感動した」とボヤジエフ氏は語った。