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NECの2018年度連結決算、構造改革の影響で増収減益

次年度は構造改革費用効果で増収増益目指す

 日本電気株式会社(以下、NEC)は26日、2018年度の決算概要と2019年度の業績予想を発表した。

 2018年度連結売上収益は前年比2.4%増の2兆9134億円で、予想を834億円上回った。営業利益は前年から54億円減の585億円、調整後営業利益は同26億円減の699億円、税引き前利益は同89億円減の780億円、当期利益は同57億円減の402億円、調整後当期利益は同34億円減の469億円、フリーキャッシュフローは同1282億円減のマイナス124億円となった。

2018年度 実績サマリー

 NECでは4月24日に、連結業績予想の修正を発表しており、システムプラットフォーム事業、エンタープライズ事業、ネットワークサービス事業などで想定を上回る売上収益となったことが要因だと説明していた。

 26日付けで行われた決算発表でも、「売上収益は、グローバルを除く全てのセグメントで増加した」(代表取締役執行役員社長兼CEOの新野隆氏)と好調な結果となった。

 しかし、調整後営業利益は構造改革費用を計上したことで減少しており、調整後当期利益も税引前利益の減少によって減少している。

代表取締役執行役員社長兼CEOの新野隆氏
2018年度概況

 また、2020中期経営計画の進捗状況として、売上収益3兆円、営業利益率5%、営業利益1500億円という目標は変更せず、「2019年度は中期経営計画実現に向けた、ターンアラウンドの年」(新野社長)と位置づけていく。

国内は全セグメントで増収を達成

 セグメント別2018年度実績の総括として、国内については好調な事業環境を背景に全セグメントで増収を達成した。

セグメント別 2018年度 実績サマリー

 パブリックの売上収益は、国内の好調な事業環境を背景に前年比1.8%増の9496億円となったが、調整後営業利益は構造改革費用の計上もあって前年から11億円減の563億円となった。

 エンタープライズは金融業向けが好調で売上収益は前年比6.4%増の4350億円、調整後営業利益はAI、IoT関連への投資費用増加で前年から7億円減の351億円となった。

 ネットワークサービスはネットワーク領域の増加により売上収益は前年比4.6%増の3948億円、調整後営業利益はITサービスの特定プロジェクトの損失、構造改革費用計上などにより前年から41億円減益の131億円となった。

 システムプラットフォームは、ビジネスPCを中心としたハードウェアが増加したことで売上収益は前年比2.8%増の5467億円、調整後営業利益は構造改革費用計上により前年から77億円減の223億円。

 グローバルは、セーフティ事業は増加したものの、ディスプレイ、サービスプロバイダーソリューションなどが減少し売上収益は前年比2.9%減の4407億円、調整後営業損益は構造改革費用、固定資産およびのれんの減損失を計上したもののワイヤレスソリューション、サービスプロバイダーソリューション、セーフティが改善し前年から15億円増のマイナス221億円。

 「第3四半期の説明会の際にお話しした通り、グローバルはディスプレイ、エネルギー、光IPなどのリスク改善ができず、予想比で損益が悪化した。また、第4四半期に19年度以降の収益性改善を目的として構造改革、固定資産・のれんの現存など合計200億円を実施した」(新野社長)。

2018年度 実績総括

 電極事業については、予定していた通り、3月29日付けでNECエナジーデバイス全株式をエンビジョングループに譲渡。NECおよびNECエナジーデバイスが保有するオートモーティブエナジーサプライの株式を日産自動車に譲渡した。

 このほか、2019年度以降の収益改善に向けた構造改革として特別転身支援施策として200億円、筑波研究所の稼働停止で50億円、NECプラットフォームズ生産拠点再編で20億円、NECライティング構造改革で10億円、オフィスフロア効率化で20億円、海外拠点の効率化で50億円と合計で350億円の構造改革費用を計上。

 さらにグローバルでは、資産のクリーンアップとしてNECオーストラリアの資産減損で60億円、その他のグローバルの減損などで60億円と計120億円、将来に向けた収益改善投資として30億円の合計150億円を計上している。

 新野社長は、「構造改革費用は2018年度に集中して計上したため、2019年度には計上する予定はない。ただし、リソースシフトについては一過性というよりも、継続的に取り組むべきことだと考えている」と説明している。

2019年度以降の収益改善に向けた施策

2019年度は構造改革効果で増益を見込む

 2019年度の業績予想としては、前年度に実施した構造改革効果を織り込んで増益予想となっている。

 2019年度の業績予想としては、18年度に実施した構造改革効果により増益を計画し、売上収益は前年比1.3%増の2兆9500億円、営業利益は前年から515億円増の1100億円、調整後営業利益は同551億円増の1250億円、当期利益は同248億円増の650億円、調整後当期利益は同271億円増の740億円、フリーキャッシュフローは同774億円増の650億円を見込む。

2019年度 業績予想サマリー

 セグメント別では、パブリックは社会公共領域は前年並みとなるものの、社会基盤領域は前年度の大型案件分が減少することで、売上収益は前年比1.5%減の9350億円、調整後営業利益は売上減少するものの、不採算案件の抑制、構造改革効果で増益を見込み前年から147億円増の710億円と予測している。

 エンタープライズは、好調であった前年並みの水準を計画し、売上収益は前年から増減なしの4350億円。前年は金融分野が好調であったものの、今年度は製造業の伸びが期待できるという。調整後営業利益は前年から29億円増の380億円。構造改革効果による増益を見込んでいる。

パブリック
エンタープライズ

 ネットワークサービスは、通信事業者の設備投資が依然として低調に推移していることから、売上収益はほぼ横ばいの前年比1.2%減の3900億円。調整後営業利益は、構造改革効果や前年度30億円の損失を計上した特定プロジェクトの改善により、前年から89億円増となる220億円。

 システムプラットフォームは、前年度のビジネスPCが前年比150%と絶好調であったことから、ここまでの伸びは難しいと判断し、売上収益は前年比4.0%減の5250億円。Windows 7のリプレース需要は引き続き堅調ではあるものの、前年ほどの伸びは難しいと見込んでいる。調整後営業利益は、構造改革費用の減少と構造改革効果での増益を見込んで前年から197億円増の420億円。

ネットワークサービス
システムプラットフォーム

 グローバルはセーフティ、サービスプロバイダーソリューション、海洋システムなどの増加を見込んで前年比31.6%増の5800億円。調整後営業損益は、前年度に計上した資産減損、構造改革費用など一過性費用の減少および構造改革効果などにより黒字化を見込み、391億円増の170億円。

 グローバル事業の売上収益は、セーフティはKMDの新規連結での増収を見込み、サービスプロバイダーSLは光IP、ソフトウェア・サービスともに増収の見込み。ワイヤレスSLは収益重視で選別受注を徹底することから19年度も減収となる見込みで、海洋システムは前年度の受注増を受けて増収を見込んでいる。ディスプレイは、18年度は北米での競争激化により減収となったが、19年度は回復を見込んでいる。

グローバル
グローバル事業の状況(売上収益)

 なお、NECではセグメントの中身を一部変更し、システムプラットフォームに属していたネットワークSI事業をネットワークサービスへ、グローバル事業の海外向けUC事業をシステムプラットフォームへなどの変更を行う。

「2020中期経営計画」の進捗状況

 現在進行中の中期経営計画「2020中期経営計画」の進捗状況については、収益構造の改革についてはSGA削減として特別転身支援施策、オフィス改革やマーケティング費用などの経費削減を実施。ワイヤレスソリューション事業については、事業継続を決定し、3年後に利益率5%の黒字化を最優先とする。2019年度に構造改革、選別受注、機種統一により収益を改善することで黒字化を目標とする。

 また、セラゴン社との協業による開発費削減、さらなるパート名リング推進も進める。エネルギー事業については、受注拡大によってグローバルでトップグループに入る規模を確保したとしているが、19年度については保守的な目標にとどめた。また、このポジションを活かしたパートナーリングも視野に入れて収益化をはかる。

 成長の柱の1つ「NEC Safer Cities」は、NPS、KMDの買収により事業が拡大。19年度予想では調整後利益率9%と利益貢献拡大を見込む。また、さらなる提供価値拡大に向け、NPS、KMDを通じたM&Aもさらに推進し、2020年度海外売上2000億円を実現するために、19年度海外売上は1750億円と予測している。

収益構造の改革
NEC Safer Cities

 5Gへの取り組みとしては、NTTドコモと5G商用サービスに向けた基地局装置開発で合意。サムスンとは5G領域での協業として両社アセットの相互接続試験などを実施中で、グローバル通信事業者への共同提案も進める。キャリア及び産業パートナーと5Gトライアルの推進を行う他、ケータイ通信に参入した楽天向けビジネスも展開していく計画だ。

 成長の実現として、成田空港の新しい搭乗手続きOneIDへの顔認証システム採用、大規模スポーツイベントに向けた顔認証システムなどの生体認証、デジタルシフトへの対応とクロスインダストリーでの事業創出のためにチーフデジタルオフィサー(CDO)を新設するなどの取り組みも行っている。

5Gへの取り組み
成長の実現

 また、最新技術を活用した医療システム事業に加え、創薬関連事業をさらに推進していくために、6月の株主総会で定款変更も行う計画だ。

 新野社長は、「2019年は、令和元年と同時にNECにとっては120周年を迎える。その中で当面の目標は売上三兆円、利益1500億円という中期経営計画達成」と強調した。