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IoTセンサー込みで月額500円から、アステリアがエッジIoT向けのミドルウェア「Gravio」新版を提供

 アステリア株式会社は2日、ノンプログラミングで利用可能なエッジコンピューティング用ミドルウェア「Gravio(グラヴィオ)」とIoTセンサー機器をセットにして、月額500円(税別 以下、価格はすべて税別)で提供すると発表した。IoTセンサーは中国Benjing Xiaomi Technologyのグループ会社であるLumi United Technologyと提携し、同社のセンサーを活用するという。

 アステリアは10月1日に、社名をインフォテリアから変更したばかり。新サービスについて、代表取締役社長の平野洋一郎氏は、「今回は、ハードウェアを無料で貸し出すことが大きな提案だ。ADSLの普及期には、ソフトバンクグループがモデムを配布したことで一気に普及したが、今回はハードウェア、ソフトウェアをセットで提供し、IoTをちょっと使ってみようか?という気持ちを刺激して、オフィス内、店舗、学校などでIoT利用を促す狙いがある。また、ハードによりがちなIoTをソフトウェアのハブが主導し、これまで難しかった『つなぐ』をハード、クラウドとあらゆるものにつないでいく。つなぐことのエキスパートである、当社ならではの提案だ」と述べ、IoT市場活性化を狙いとして新サービスをスタートするとした。

 将来的には、数千個レベルのセンサーとの接続や管理機能を強化したEnterprise版の提供も予定し、IoT分野のミドルウェアとして、国内の定番製品に成長させることを狙う。

アステリア 代表取締役社長 CEOの平野洋一郎氏

接続認証済みのセンサーを無償貸与し、迅速かつ手軽にIoTをスタート可能に

 アステリアでは2017年6月、ソフトウェア単体でGravioの提供を開始していた。今回はソフトウェアの機能を強化するとともに、接続認証済みのセンサーハードウェアを無償貸与することで、迅速かつ手軽にIoTをスタートさせることができる環境を提供する。

貸与されるセンサーが入ったパッケージ

 さらに、今回のポイントとなっているのが、「新しいGravioで機能強化の肝となっているのが『ソフトウェアセンサー』。AI推論機能を実装し、例えば画像、動画から何人が写っているのか、男女何人いるのかといった優位な情報を引き出す、ソフトウェアによるセンシング技術を搭載している」(アステリア エンタープライズ本部Gravio事業部長 垂見智真氏)という点だ。

 平野氏は、「IoTは、現時点では工場、医療、災害対策など特定領域での利用が進んでいるが、われわれが狙うのは一般市場で使われるIoT。そのためには、AI/ML(マシンラーニング:機械学習)の活用と、デバイスとIoTの連携が不可欠となる。そこには、現在はクラウドで処理されているAI/MLを現場で処理するための、エッジコンピューティングが不可欠」とアピールする。

 その理由としては、「クラウドを活用してAI/MLを処理することで、通信による全体処理速度の低下、プライバシー保護といった課題が生まれるため」と説明。

 エッジでIoTとAI/MLをつないで処理する「エッジウェア」を活用するとともに、クラウド、オンプレミス、スマートフォンやタブレットなどとの連携によって、IoTの利便性が向上するという。

汎用IoTとAI/MLはエッジで実用化が進む
アステリア エンタープライズ本部Gravio事業部長 垂見智真氏

 エッジウェアはアステリアが作った造語だが、「広く汎用的に使われる単語として使われるものとなってほしい」(平野社長)という。

 「IoTとAI/MLをつなぐだけでなく、クラウド、既存システムなどと『つなぐ』ことは、これまでも当社が得意としてきた領域。今後、データ接続開発キット、スマートフォンやタブレット用アプリの開発SDKなどエッジウェアのエコシステムを構築。Gravioの販売パートナーをはじめ、IoTデバイスパートナー、AIモデル開発パートナー、アプリ開発パートナーなどパートナーと一緒に、すぐに使えるIoT実現を進めたい」(平野社長)とした。

エッジウェアがハブとなってさまざまなものをつないでいく
エッジウェアのエコシステムを推進
エッジウェアのパートナー

 IoTの用途としては、例えばオフィス内ではセンサー付近にいる人数を算出し、CO2濃度を測ることで、空調設備のオン、オフを呼びかけることや、コンビニエンスストアのレジに並んでいる人数を算出して、バックエンドにいるスタッフにレジに向かうようアナウンスするといった機能を想定している。

 Gravioに搭載するソフトウェアセンシング技術によって、画像データから優位なデータを抽出することで、こうした用途に活用できる人数、性別、年齢、天候などの判断が行える。クラウドとの接続は可能だが、クラウド側にAIを置くのではなく、現場でAI処理を行うエッジコンピューティング型のソリューションとなっている。

 ソフトウェアセンサーは、用途に応じてモデルそのものを更新することや、外部ベンダーが開発した推論モデルの活用・追加にも対応していく方針だ。

 こうした、IoTソリューション開発を容易に行える特徴により、トイレIoTや会議室利用を判断するIoTといった用途から、さらに進んだスマートオフィスソリューションの開発や、スマートスクール、スマートショップといった分野への活用を進める。

 価格は、無償貸出センサーが4個付属する「Gravio Basic」が月額500円。無償貸出センサーが10個付属し、推論・認識モデルのアップデート、ユーザー専用サポートなども提供される「Gravio Standard」は、月額2万円で提供する。

 Gravioの今後のロードマップとしては、「当初はスモールスタートを想定しているが、スケールしていくためには運用管理、大量センサー対応などが必要となる。これを可能とするEnterprise版を追加提供する予定で、グループ管理、推論エンジンの追加、アプリ開発SDK提供などを行う」(アステリア 執行役員副社長 CTO 北原淑行氏)と大規模システム対応を計画している。

 今回、ハードウェア提供企業として提携するLumi United Technologyは、2015年に最初のスマートキットを発売。それ以来、工事なしでスマート化を実現するハードウェアセンサーを提供している。

 「これまではB2Cを主な市場としてきたが、今回、アステリアとのパートナーシップによってB2Bマーケットに挑戦する。中国以外の国でのビジネスも初めてのことなので、今回の日本での提携は大きな挑戦になる」と、CEOであるEugene You氏は話した。

Lumiのプロダクトはデザインに配慮
Lumiのセンサーは、室内のあちこちに置く場所があるという
Lumi CEOのEugene You氏

 アステリアでは、今回のソリューションについて今期中に1000ユーザーの利用を想定。さらに、「エッジウェアというマーケットを確立し、この分野でのナンバー1となることを目指す」という。

 なおアステリアへの社名変更については、ASTERIAが同社の主力ソフトウェアであると同時に、「アステリアはギリシア語で星座を意味する。システムのみならず、この世の中にある輝くものをつないでいく企業となっていく、という意味がこもっている」(アステリアの平野社長)と説明している。