仮想化道場

Broadwellコアベースの省電力プロセッサ「Xeon D」

 Xeon Dは、サーバー向けプロセッサとしては、初めてBroadwellコアを利用した製品だ。Xeon E3/E5/E7などと比べると低消費電力でありながら、Broadwellコアを採用することで、高い性能や機能を持つプロセッサになっている。

 Xeon Dは、昨年9月に行われたIntelの開発者カンファレンス「IDF」において、開発が明らかにされており、この時、すでにサンプルが出荷されていると発表されたため、2015年の早いうちリリースされると予測されていた。

 Xeon Dは、単に低消費電力化されたサーバープロセッサではなく、周辺I/Oを統合した1チップのSoCとして提供されている。プロセッサ以外のPCH(Platform Controller Hub)チップやEthernetなどが1プロセッサ内部に納められているため、マイクロサーバーや高密度サーバーなどに向けたプロセッサといえる。

 今回は、Xeon Dに関して、Intelの資料を基に解説していく。

Xeon Dは、Webサーバーなどのフロントエンドサーバー、ストレージ、ネットワーク スイッチなどの分野をターゲットにしている
Micro Serverやスケールアウトサーバーだけでなく、SDNで利用するネットワークスイッチ、SDSを実現するストレージデバイスなど、組み込み機器にも利用される

14nmプロセスのXeon Dプロセッサ

 Xeon Dは、サーバー向けプロセッサとしては、初の14nmプロセスで設計されている。ファンレスのノートPCやタブレット向けに設計されたCore Mや、モバイル用の第5世代Core iプロセッサで採用された、Broadwellコアをベースにして設計されている。

 Core Mや第5世代Core iプロセッサは、プロセッサモジュールにBroadwellコア(CPU+GPU)と周辺インターフェイスのPCHチップを搭載した、MCM(Multi Chip Module)の形態だった。Xeon Dでも、CPUチップとPCHチップを同じ基盤に入れたMCMになっている。チップ写真ではわかりにくいが、ヒートスプレッダを外すと、チップが2つ入っている。

 またCore Mやモバイル向けの第5世代Core iプロセッサはGPUを内蔵しているため、CPUコアは2つだけだった。しかし、Xeon DではGPU部分を削除し、その分、CPUコアを最大8つに増やしている(下位モデルとしてCPUコアが4つのモデルも用意されている)。

サーバー向けのAtom C2750と比較すると3.4倍の性能を持っている
14nmプロセスで製造され、CPUコア、ネットワーク、I/Oなどが統合されたSoCプロセッサ。Xeonが持つ仮想化、RAS機能などをサポートしている
Xeon Dの構成図。チップ内部にCPUコアだけでなく、周辺チップ、ネットワークなどを統合化することで、外部チップをほとんど必要としない
今回発表されたXeon Dは、8コアをサポートしたXeon D-1540と4コアのXeon D-1520。Atom C2000シリーズに比べるとCPUコアの性能アップだけでなく、Ethernetの高速化、メモリの高速化と容量アップを果たしている
Xeon Dは第5世代のモバイル用Core iプロセッサと同じように、14nmプロセスで製造され、CPUコアとしてはBroadwellコアが使われている。

 ラストレベルキャッシュ(LLC)は、Core Mやモバイル向け第5世代Core iプロセッサがトータルで4MBだったのに対し、Xeon Dでは1コアあたり1.5MB(8コアモデルではトータルで12MB)になっている。また、CPUコアやLLCの接続に関しては、Xeon E5/E3で採用されている二重のリングバスを採用している。

 メモリはDDR4とDDR3Lの両方が利用でき、DDR4は1600/1867/2133まで、DDR3Lは1333/1600までをサポートしている(第5世代Core iプロセッサはLPDDR3 1866/DDR3L 1600まで)。

 メモリチャネルは2本あり、各チャンネルに2つのRDIMM、UDIMM、DODIMMを搭載することができる(最大4枚のDIMMを搭載可能)。サポートされている最大メモリ容量は、メモリの種類によって異なっている。RDIMMの場合は最大128GB(32GB DIMM×4)、UDIMM/SODIMMの場合は最大64GB(16GB DIMM×4)となる。なおXeon Dは、サーバー向けプロセッサとして設計されているため、メモリもECC付きのメモリが推奨されているが、non-ECCのメモリも利用できる。

Xeon Dのメモリコントローラは、DDR4だけでなく、DDR3Lもサポートしている

 周辺インターフェイスとしては、PCI Express(PCIe) Gen3 x24がCPUコアから直接サポートされ、PCIe Gen2 x8はPCH経由でサポートされる。PCIe Gen3を利用して、NVMeフラッシュストレージを最大6台(NVMeはPCIe Gen3 x4を使用するため、x24全部を利用して最大6台)搭載することもできる。

Xeon Dのブロック図。PCHチップ、10GbEをプロセッサに統合している。PCIe Gen3 x24がサポートされている
Xeon Dでは、PCIe Gen3 x24をサポートしているため、NVMeフラッシュを最大6台接続できる。SATA3が6ポート、USB 3.0/2.0がそれぞれ4ポートと必要なI/Oはすべて統合されている

 もう一つ特筆すべきは、10Gigabit Ethernet(GbE)を2ポート内蔵していることだ。仮想環境などでもよく利用されているIntelの10GbEチップ(MAC部)がそのままXeon Dに搭載されている。サーバーを設計する側としては、EthernetのPHY(物理インターフェイス)チップを外付けするだけで、高速ネットワークを持つマイクロサーバーを構成できるわけだ。

 このEthernetチップ部は、仮想化でネットワークのパフォーマンスをアップするSR-IOV(ネットワークを仮想マシンから直接アクセスする)、VMDq(仮想ネットワークの負荷を低減する)をサポートするだけでなく、VMwareのVXLAN、Microsoft Hyper-VのNVGREといった仮想ネットワークもサポートされている。

10GbEとして定評のあるIntelのネットワークチップが、Xeon Dに2ポート搭載されている

 PCH部には、PCIe Gen2 x8以外に、SATA3が6ポート、USB 3.0が4ポート、USB 2.0が4ポート、SPI(シリアル ペリフェラル インターフェイス)が搭載される。10GbEが別に搭載されているため、PCIe Gen2などにネットワークを接続する必要はないため、サーバーボードの設計もシンプルになる(外付けチップが少なくなるため、サーバーボード全体の消費電力も低減されるし、コストも抑えられる)。

 このほか、Xeon Dには仮想化におけるネットワークのパフォーマンスをアップするQuickData Technologyをサポートしている。これにより、メモリから直接NICがデータにアクセスするため、CPU側の負荷が少なくなる。この機能は、Intelが搭載しているI/O AT(Acceleration Technology)の一部だ。

(山本 雅史)