仮想化道場
Broadwellコアベースの省電力プロセッサ「Xeon D」
(2015/3/10 06:00)
Xeon Dは、サーバー向けプロセッサとしては、初めてBroadwellコアを利用した製品だ。Xeon E3/E5/E7などと比べると低消費電力でありながら、Broadwellコアを採用することで、高い性能や機能を持つプロセッサになっている。
Xeon Dは、昨年9月に行われたIntelの開発者カンファレンス「IDF」において、開発が明らかにされており、この時、すでにサンプルが出荷されていると発表されたため、2015年の早いうちリリースされると予測されていた。
Xeon Dは、単に低消費電力化されたサーバープロセッサではなく、周辺I/Oを統合した1チップのSoCとして提供されている。プロセッサ以外のPCH(Platform Controller Hub)チップやEthernetなどが1プロセッサ内部に納められているため、マイクロサーバーや高密度サーバーなどに向けたプロセッサといえる。
今回は、Xeon Dに関して、Intelの資料を基に解説していく。
14nmプロセスのXeon Dプロセッサ
Xeon Dは、サーバー向けプロセッサとしては、初の14nmプロセスで設計されている。ファンレスのノートPCやタブレット向けに設計されたCore Mや、モバイル用の第5世代Core iプロセッサで採用された、Broadwellコアをベースにして設計されている。
Core Mや第5世代Core iプロセッサは、プロセッサモジュールにBroadwellコア(CPU+GPU)と周辺インターフェイスのPCHチップを搭載した、MCM(Multi Chip Module)の形態だった。Xeon Dでも、CPUチップとPCHチップを同じ基盤に入れたMCMになっている。チップ写真ではわかりにくいが、ヒートスプレッダを外すと、チップが2つ入っている。
またCore Mやモバイル向けの第5世代Core iプロセッサはGPUを内蔵しているため、CPUコアは2つだけだった。しかし、Xeon DではGPU部分を削除し、その分、CPUコアを最大8つに増やしている(下位モデルとしてCPUコアが4つのモデルも用意されている)。
ラストレベルキャッシュ(LLC)は、Core Mやモバイル向け第5世代Core iプロセッサがトータルで4MBだったのに対し、Xeon Dでは1コアあたり1.5MB(8コアモデルではトータルで12MB)になっている。また、CPUコアやLLCの接続に関しては、Xeon E5/E3で採用されている二重のリングバスを採用している。
メモリはDDR4とDDR3Lの両方が利用でき、DDR4は1600/1867/2133まで、DDR3Lは1333/1600までをサポートしている(第5世代Core iプロセッサはLPDDR3 1866/DDR3L 1600まで)。
メモリチャネルは2本あり、各チャンネルに2つのRDIMM、UDIMM、DODIMMを搭載することができる(最大4枚のDIMMを搭載可能)。サポートされている最大メモリ容量は、メモリの種類によって異なっている。RDIMMの場合は最大128GB(32GB DIMM×4)、UDIMM/SODIMMの場合は最大64GB(16GB DIMM×4)となる。なおXeon Dは、サーバー向けプロセッサとして設計されているため、メモリもECC付きのメモリが推奨されているが、non-ECCのメモリも利用できる。
周辺インターフェイスとしては、PCI Express(PCIe) Gen3 x24がCPUコアから直接サポートされ、PCIe Gen2 x8はPCH経由でサポートされる。PCIe Gen3を利用して、NVMeフラッシュストレージを最大6台(NVMeはPCIe Gen3 x4を使用するため、x24全部を利用して最大6台)搭載することもできる。
もう一つ特筆すべきは、10Gigabit Ethernet(GbE)を2ポート内蔵していることだ。仮想環境などでもよく利用されているIntelの10GbEチップ(MAC部)がそのままXeon Dに搭載されている。サーバーを設計する側としては、EthernetのPHY(物理インターフェイス)チップを外付けするだけで、高速ネットワークを持つマイクロサーバーを構成できるわけだ。
このEthernetチップ部は、仮想化でネットワークのパフォーマンスをアップするSR-IOV(ネットワークを仮想マシンから直接アクセスする)、VMDq(仮想ネットワークの負荷を低減する)をサポートするだけでなく、VMwareのVXLAN、Microsoft Hyper-VのNVGREといった仮想ネットワークもサポートされている。
PCH部には、PCIe Gen2 x8以外に、SATA3が6ポート、USB 3.0が4ポート、USB 2.0が4ポート、SPI(シリアル ペリフェラル インターフェイス)が搭載される。10GbEが別に搭載されているため、PCIe Gen2などにネットワークを接続する必要はないため、サーバーボードの設計もシンプルになる(外付けチップが少なくなるため、サーバーボード全体の消費電力も低減されるし、コストも抑えられる)。
このほか、Xeon Dには仮想化におけるネットワークのパフォーマンスをアップするQuickData Technologyをサポートしている。これにより、メモリから直接NICがデータにアクセスするため、CPU側の負荷が少なくなる。この機能は、Intelが搭載しているI/O AT(Acceleration Technology)の一部だ。