大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

Blu-rayのB2B市場展開は成功するか? パナソニックがアーカイブ用途に提案する狙い

 パナソニックが、Blu-ray(ブルーレイ)ディスクを大容量データのアーカイブ用途に提案する動きを本格化させている。これまで民生用途での利用にとどまっていたBlu-rayディスクだが、50年以上の寿命を持つ保存性の高さに加え、データロストが少なく、誤消去がないという安定性、低消費電力化や低コスト運用を実現できるといった特長を生かすことで、「データセンターにおけるアーカイブデータの保存用途に適している」と同社では語る。

 B2CからB2Bへの事業シフトはパナソニック全社での大きなテーマ。Blu-rayディスクに関しても、収益性の高いB2B領域へと「転地」を図ることで、事業拡大に乗り出す考えだ。その核となるのが、データアーカイバーによる展開。パナソニックのBlu-rayを活用したデータアーカイバー戦略を追ってみた。

民生用で培ったノウハウをB2B展開

光ディスク技術のデータストレージへの展開

 パナソニックは、光ディスクでは長年の実績を持つ。

 規格化については、光ディスクの第1世代となるCDではソニーとフィリップスに譲ったが、第2世代となるDVDでは規格化に参加した9社のなかの1社として名を連ね、さらに第3世代となるBlu-rayディスクでも同様に、規格化に携わる主要な1社として参画した。

 特にBlu-rayディスクでは、光ピックアップやシステムLSIを開発するハードウェア部門との連携によって、新たなフォーマットの開発をリード。業界に先駆けた製品開発を行ってきた経緯がある。

 「光ピックアップでは、劣化がない光学部品のガラス化や耐久性の高いモーターの採用、高寿命レーザーやディスクの反りに応答するチルト制御機能などを搭載することで高い信頼性を実現。光ディスク用LSIでは、再生信号の歪みを自動補正し、再生信号の変動を自動的に追従した。さらにはディスクの傷に強いサーボ制御技術や、高い記録品質を実現する高精度レーザー制御技術によって、信頼性の高いハードウェアを開発してきた強みがある」と語るのは、パナソニック AVCネットワークス社 ストレージ事業部 津山工場の茂木章弘工場長。

 津山工場はBlu-rayディスクの生産拠点で、現時点では、パナソニックブランドのすべてのBlu-rayディスクを同工場で生産している。

パナソニック AVCネットワークス社 ストレージ事業部 津山工場の茂木章弘工場長
アーカイバルディスクが生産されるパソナニックの津山工場

 続けて茂木工場長は、ディスクにおける差別化点にも言及。「ハードウェアの強みを持つ一方、ディスクを生産する津山工場では、生産工程の全自動化と、クラス100によるクリーン化設備の導入、多層ディスクを高速で生産する体制を整え、高品質のディスク生産を実現している。特に、Blu-rayでは、生産設備すべてを内製化し、中でも量産化が難しい多層化ディスクの生産技術は完全にブラックボックス化した。パナソニックは、2006年に2層のBlu-rayディスクを発売したが、海外メーカーが2層Blu-rayディスクを発売したのは2013年になってからのこと。モノづくりにおいては、他社に大きく先行している」と自信をみせる。

 実際、2層Blu-rayディスクにおいて、パナソニックは圧倒的なシェアを誇る。2層となる50GBディスクの国内市場規模は約2500万枚。そのうち、パナソニックの国内シェアは41%と圧倒的だ。1回記録のBD-R、繰り返し記録のBD-REともに高いシェアを誇る。

 パナソニックは、こうした民生用分野における高い信頼性と先進性を背景に、Blu-rayディスクを活用したデータアーカイバー事業を、データセンターなどのB2B市場に展開することになる。

(大河原 克行)