大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

Blu-rayのB2B市場展開は成功するか? パナソニックがアーカイブ用途に提案する狙い (アーカイブへのBlu-ray利用が徐々に進展)

アーカイブへのBlu-ray利用が徐々に進展

 Blu-rayディスクを利用したデータアーカイバーは、すでにいくつかの企業が導入しはじめている。

 例えば、Facebookでは、次世代コールドストレージに光ディスクライブラリを導入。HDDによる管理に比べて、コストで50%削減、エネルギー消費では80%を削減したという。

 日本では、核融合研究所が実験データの保存用に、パナソニックのデータアーカイバーを導入。中国のレコード会社でも、アナログ媒体で管理していた膨大な音楽資産を、劣化させずに保存、活用するために同システムを導入しているという。

 「内部統制やコンプライアンスなどにより、企業や機関が抱える情報資産も年々増加する傾向にあり、膨大なデジタルデータの保存や管理には多額の運用コストが費やされている。こうした課題を解決することができるのがBlu-rayディスクによるデータアーカイバーになる」と田井氏は語る。

 一方、パナソニックにとっても、Blu-rayディスクの新たな市場開拓が急務となっている。

 Blu-rayディスクの市場は、日本やアジアなどが中心となり、今後民生用の利用は徐々に縮小すると見られている。

 Blu-rayディスク事業の成長に向けては、新たな市場開拓が必要ともいえるわけだ。その柱となるのがデータセンター向けなどのデータアーカイバーとなる。

 パナソニックでは、AVCネットワーク社で担当していた薄型テレビやBDレコーダーなどのB2Cビジネスを、アプライアンス社へと移管。現在、AVCネットワークス社ではB2Bに特化したビジネスを行っている。

 Blu-rayディスクを活用したデータアーカイバーも、B2Bを展開するAVCネットワークス社が取り扱っており、ストレージシステム事業推進室が担当している。

 パナソニック社内では、「転地」という言葉を使い、同じ技術や製品を用いながらも、これまでとは異なる分野への展開を図り、新市場の開拓、収益性の改善などへの取り組みを行っている。その点でも、データアーカイバーは、Blu-rayディスクの「転地」であり、注目される取り組みのひとつだ。

 津山工場では、B2B需要の増大にあわせて、アーカイバルディスクの生産体制を強化。それにあわせて民生用ディスクの生産は海外に移転させる考えだ。また、B2C向け製品では行っていなかった全量最終検査を、アーカイバルディスクでは実施するという。

 「Blu-rayディスクによる新たなストレージアーキテクチャで、ストレージシステムにイノベーションを起こしたい」と田井氏は語る。

 パナソニックには、Blu-rayディスクのB2B展開をいち早く開始した。HDDやテープにはなかった特徴を持つBlu-rayディスクは、データアーカイブ市場において、これから注目を集めることは間違いなさそうだ。

大河原 克行