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日立、品質保証業務へのAIエージェント適用で顧客対応力・対応品質の強化を確認
2025年6月26日 15:31
株式会社日立製作所(以下、日立)は26日、電力や鉄道、上下水道など、社会インフラを支える情報制御システムを提供している大みか事業所において、品質保証業務にAIエージェントを適用し、熟練者の経験や知見などの暗黙知を形式知化して組み込むことで、機器故障などトラブルへの顧客問い合わせ対応を、高度化・効率化できることを確認したと発表した。
日立では、機器故障やトラブルの発生により問い合わせがあった場合、品質保証部門では、発生事象と過去の類似事例やマニュアルなど複数の情報をひも付け、総合的な判断から対策を導き出していると説明。しかし、膨大な情報の中から参考とすべき適切な情報を抽出し、対策に必要な情報とひも付けるには、熟練者の経験や記憶に基づく勘が必要で、若手担当者が迅速に対応することは難しいという課題があったという。
そこで、膨大な過去事例などが蓄積されたデータベースから情報を検索可能な、品質保証業務支援ツールにAIエージェントを適用し、熟練者がどのようなキーワードや順番で情報を探索しているのかというパターンや、業務プロセスなどの暗黙知の形式知化を推進し、2024年10月から2025年3月まで実証実験を行いながら、現場で活用できるレベルへと精度を上げてきた。
実証実験では、Generative AIセンターのデータサイエンティストを中心としたGenAIプロフェッショナルが、ヒアリングを通して熟練者の暗黙知を生成AIのプロンプトに落とし込み、改善・評価、チューニングを行うことで、従来の品質保証業務支援ツールに生成AIを組み込んだ。その結果、鉄道システム分野の品質保証業務を対象とした実証実験において、トラブル事例検索の精度向上(検索時間を約9割削減)、特徴量抽出・分析による品質レベルの向上(分析時間を8割以上削減)、初報レポートのドラフト生成によるトラブル対応の高度化(レポート作成時間を8割以上削減)という3つの効果を確認した。
また、ヒアリングだけでなく、熟練者と日立のGenAIプロフェッショナルが一体となって連携し、実際の業務を想定した質問と模範解答のペアを100件以上作成した。これにより、品質保証業務を網羅した共通の評価基準が作成され、熟練者の視点からのフィードバックを繰り返し得られるようになったことで、暗黙知を獲得し、より効果的な成果の早期獲得につながったという。
日立では今後、実証での成果を受け、2026年度を目標に、鉄道システム分野だけでなく、電力や上下水道など大みか事業所全体の品質保証業務へと適用を拡大していく予定。これらにより、日立は、社会インフラを支えるOT領域の知見・経験と、生成AI、AIエージェントをはじめとした最先端のITの知見を掛け合わせたLumadaで、技能伝承や生産性向上などの社会課題に取り組んでいくとしている。