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理研、IBMの量子コンピューター「IBM Quantum System Two」を稼働開始

 米IBMと理化学研究所(以下、理研)は24日、理研計算科学研究センター(R-CCS)内に設置した量子コンピューター「IBM Quantum System Two」が稼働開始したと発表した。米国外およびIBM Quantumデータセンター以外で初めての展開となり、このシステムが稼働開始になったことは、スーパーコンピューター「富岳」と同一建屋に設置された最初の量子コンピューターとしても画期的なことだとしている。

 今回のIBM Quantum System Twoの設置は、経済産業省所管の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が委託する「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の「量子・スパコンの統合利用技術の開発」プロジェクトの一環として実施された。

 理研に設置されたIBM Quantum System Twoは、156量子ビットのIBM Quantum Heronプロセッサーを搭載する。100量子ビットの階層化回路における2量子ビットのエラー率で測定したIBM Quantum Heronの品質は、3x10-3(一番良い2量子ビットのエラーは1x10-3)で、これは前世代の127量子ビットのIBM Quantum Eagleプロセッサーの10倍となる。IBM Quantum Heronの速度は25万CLOPS(1秒当たりの回路層操作数)で、これはIBM Quantum Eagleよりも過去1年間で10倍以上向上したことを反映している。

 こうした品質および速度の指標から、156量子ビット規模において、IBM Quantum Heronは世界で最も高性能な量子プロセッサーだと説明。IBM Quantum Heronは、古典コンピューターによる総当たりシミュレーションをはるかに超える量子回路を動作させることが可能で、「富岳」との接続により、理研の研究チームは量子を中心としたスーパーコンピューティングアプローチを用いて、基礎化学問題などの高度なアルゴリズムの研究を推進できるようになるとしている。

 IBM Quantum System Twoは、日本有数のハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)センターである、理研計算科学研究センター(R-CCS)内の、「富岳」が設置されている同じ建物内に設置される。これらのコンピューターは、基礎的な命令レベルで高速ネットワークを介して接続され、「量子を中心としたスーパーコンピューティング」の実証場を形成する。

 この基礎レベルでの統合により、理研とIBMの研究者は、並列化されたワークロード、低遅延な古典・量子通信プロトコル、高度なコンパイルパスとライブラリーを開発できるようになると説明。量子システムと古典システムは、最終的に異なる計算の強みを提供するため、これにより、各パラダイムがそれぞれに最適なアルゴリズムの各パートを、シームレスに実行できるようになるとしている。