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リコー、高付加価値なデジタルサービス創出に向けAWSと連携強化

AI開発にAWSのサービスを活用、グループ共通業務基盤をAWSに構築

 株式会社リコーとアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWSジャパン)は25日、リコーによる顧客の業務効率化と生産性向上を支援する高付加価値なデジタルサービス創出を加速するため、連携を強化すると発表した。

 リコーは、AWSジャパンと4つの領域で連携を強化する。AIの分野では、リコーはAWSの最先端のAI技術や生成AIサービスを活用し、AI関連ソリューションの提供を加速させることに加え、AWSジャパンが構築支援するリコーグループ共通のプラットフォーム「RICOH Smart Integration(以下、RSI)」により、各種アプリケーションのグローバルでの展開、顧客接点データの収集・分析環境の整備により顧客への価値提供をさらに強化していく。

 また、リコーは社内ITの統合管理・ガバナンス強化のため、グループ全体の共通業務基盤の多くをAWS上への移行を進めている。さらに、複雑化するビジネスニーズに対応するハイレベルなデジタル人材を育成・強化するため、リコーはAWSが提供するAI・データ分析・デベロッパー向けのトレーニングを活用する予定としている。

 AI開発領域では、リコーはAWSジャパンが実施するAWS LLM開発支援プログラムと、AWSがグローバルで顧客の生成AI活用の支援を行うAWS生成AIイノベーションセンターを活用して、リコー独自のLLMの研究・開発に着手した。

 AWSの支援のもと、継続事前学習によるリコー独自のLLMの開発を行い、2023年3月には60億パラメータの日本語対応のLLMを発表。2024年8月には、高い日本語性能を持ち、英語・中国語にも対応可能な700億パラメータの独自LLMを発表した。同LLMの開発においてリコーは、コスト削減と高いパフォーマンスを実現するために、AWSがAIトレーニングと推論専用に提供するAIチップ「AWS Trainium」のAmazon EC2 Trn1インスタンスを、グローバルでも最大規模のボリュームで利用することで、AWSの従来比(従来の手法と開発と比較して)で約50%のコスト削減と、エネルギー効率を最大25%改善。これによりリコーは、顧客向けカスタムLLMを開発する際にも、より安価で短納期での提供を実現しているという。

 さらに、2025年6月には、経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する、国内における生成AIの開発力強化を目的としたプロジェクト「GENIAC」においても、同プロジェクトに計算資源を提供するAWSの支援のもと、マルチモーダル大規模言語モデルを開発した。

  今後本格化するであろうマルチAIエージェント時代に向けて、AWSのフルマネージドサービス「Amazon Sagemaker」や、生成AIサービス「Amazon Bedrock」を活用し、多様な顧客のニーズに対しても柔軟かつスピーディーに対応することが可能だと説明。また、リコーはデジタルクローン技術の開発も進めており、オフィスの受付・案内などの案内業務から、社員の教育や採用活動などで利用する顧客に対し、Amazon EC2 GPUインスタンスを用いてサービス展開を行っているという。

 リコーは、AWSの最新のAI技術や高い柔軟性と拡張性を備えたクラウドサービスと、リコー独自のAI開発技術、そして長年にわたり取り組んできたドキュメントやIT技術・サービス提供力とを融合し、顧客の業務革新と効率的で付加価値の高い働き方を支援し、企業価値の向上に貢献することを目指して取り組みを進めるとしている。

 また、リコーではグループ共通のプラットフォーム「RSI」をAWSで構築している。RSIは、デジタルサービスの開発・運用に必要な基本機能を備えた、グローバルでのビジネス創出を促進するクラウドの共通基盤で、商品開発の効率化とコスト削減を実現し、高い拡張性とイノベーション創出を可能にするさまざまな機能を有している。

 リコーは、RSIの基盤強化のため、AWSのマネージドサービスとサーバーレスサービスを採用してアーキテクチャを設計し、運用負荷の軽減を図った。具体的には、AWS IoT Coreを利用してIoT基盤を構築、コンテナ基盤にはAWS Fargateを、そしてAmazon S3をデータレイクとしたデータ基盤など、AWSのさまざまなサービスを活用している。RSIの活用により、新サービスの「RICOH kintone plus」をわずか2カ月で開発、リリースするなど、柔軟性・拡張性の高いAWSのクラウドサービスにより、高品質・高付加価値なサービスを迅速にグローバルの顧客に提供しているという。

 今後、さらにサービス間のデータ連携や、カスタマーサクセス活動を促進するためのデータ利活用を推進するリコーは、AWSの支援のもと、RSIを活用して生成AI技術のグローバル展開や、顧客接点データの分析環境整備、サービスデリバリーの仕組みを強化していくとしている。

 また、2020年から2022年にかけてリコーが実施した基幹システムの大規模なクラウド移行プロジェクトでは、8割以上のシステムをAWSに移行。さらに、自社内で顧客向けアプリケーションを提供する基盤についても、オンプレミス環境からクラウドへの移行とセキュリティレベルの高度化を同時に進め、より安全で快適なサービス提供を推進している。

 リコーの国内販売会社であるリコージャパン株式会社は、データドリブン経営を進めており、そのデータ活用基盤としてAmazon RedshiftとAmazon QuickSightを採用。2022年から本格的に活用を開始し、Amazon QuickSightでデータ活用を行うユーザーはすでに同社全社員の3分の2となる1万2000人に上る。これは、Amazon QuickSightの国内最大規模のユースケースであり、同社ではデータ活用の高度化に向けて、BIとAIを組み合わせたビッグデータ分析を通じ、販売活動への貢献に取り組んでいるという。

 リコーは、デジタル人材の育成において、ビジネスアーキテクト、ソフトウェアエンジニア、データサイエンティスト、サイバーセキュリティの4つを重点領域と定めており、第21次中期経営戦略では、ESG目標として2025年度末までに合計4000人の重点人材育成を設定していたが、デジタル人材育成施策を全社的に推進してきた結果、2024年度に目標を達成した。

 この育成施策の一部として、AWSはソリューションアーキテクト、ソリューション設計エンジニア、AWSアーキテクチャの設計を理解する必要があるデベロッパー向けのクラストレーニングであるArchitecting on AWS、その上級編となるAdvanced Architecting on AWSを提供。2022年度にはリコーグループ全体で約200人、2023年度には約130人が受講した。また、2024年度には、より専門的なトレーニングも含めて14種類のトレーニングをのべ約80人が受講している。2025年度には、AWSが提供するAI・データ分析・デベロッパー向けのトレーニングを含むデジタル人材育成支援を活用し、より高度な知識やスキルを持ち、プロフェッショナルとして活躍できるハイレベルなデジタル人材の育成に注力していくとしている。