大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ
HCIはひとつのステップにすぎない――、Nutanixが目指すエンタープライズクラウド戦略
2017年6月30日 11:55
ハイパーコンバージドインフラ(HCI)に関心が集まるなか、この分野で実績を持つNutanixは、「われわれが目指しているのは、HCIそのものではない」と言い切る。
米Nutanix APAC担当シニアSEディレクターのジェフリー・スミス氏は、「目指しているのはエンタープライズのクラウドプラットフォーム。インフラを見えなくする(インビジブル)くらいシンプルにすることで、利用者はインフラを気にせずに、アプリに投資をしサービスを創出するなど、ビジネスに注力してもらいたいと考えている。そのひとつのステップとしてHCIを出している」とする。
Nutanixのスミス氏と、ニュータニックス・ジャパン シニアシステムエンジニアリングマネージャーの露峰光氏に、Nutanixの基本戦略についてあらためて聞いた。
クラウドですべてが解決するわけではない
――現在のIT市場をどうとらえていますか。
露峰氏:
米IDCの調査によると、企業のIT予算は、20年ほど前の1995年には新たなITへの投資比率が約7割であったものが、2016年では大幅に減少しています。絶対値でいえば20年前とほとんど変わっていないといえますが、それに対して増大しているのが維持、運用にかかわる費用です。ITへの総支出が20年間で3倍に拡大する中、維持、運用にかかわる支出は約8倍にも増えています。
今後も、IT予算が増加することはないでしょう。そのなかで、長年の課題となっているのが、ITの運用管理コストをいかに減らすかということです。
その回答のひとつがクラウドです。クラウドであれば、すぐにITインフラを活用できますし、ITインフラの拡張が容易であるという特徴もあります。また、常に新たな機能が追加され、先端技術を活用できるというメリットもあります。
しかし、クラウドですべてを解決できるというわけではありません。例えば、データのコントロールやコンプライアンスの問題などのほか、すべてのワークロードが、クラウドに移行することでコストを低減できるわけではない、ということも知っておく必要があります。
例えば、モバイルアプリをリリースし、初期にどれだけ集中するのかといった予想がつかない場合にはクラウドは適しています。しかし、1年・2年を経過すると、ある程度予想がつくようになります。それであれば、社内で運用した方がいいという判断もできるようになるわけです。
ユーザーは、(クラウドとオンプレミスの)どちらかを選ぶのではなく、ワークロードによって使い分けるということが大切になります。そうしたときに、クラウドの良い点は生かし、オンプレミスにもパブリッククラウドと同じ機能を持たせることができたらどうでしょうか。それが、Nutanixが目指す「エンタープライズクラウドプラットフォーム」というわけです。
エンタープライズクラウドプラットフォームとは、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureが持つパブリッククラウドならではの利便性を、オンプレミスで提供するものであり、それをハードウェアの箱で提供するのではなくソフトウェアで実装し、ハイブリッド環境で提供するというのがNutanixの役割なのです。