大河原克行のキーマンウォッチ

上坂貴志社長に聞く、キンドリルジャパンが戦略や方針に「DX」の文字を使わない理由

 日本IBMから独立したキンドリルジャパンが、早くも積極的な動きを見せている。米Kyndrylは、IBMのマネージドインフラストラクチャーサービス事業を分社化し、2021年9月に事業を開始。2021年11月には、ニューヨーク証券取引所に上場し、現在、60カ国以上で事業を展開している。社員数は約9万人。売上高は2兆円規模に達する世界最大の独立系ITインフラサービスプロバイダーだ。

 キンドリルジャパンは、2021年9月1日にKyndrylの100%子会社として事業を開始。社員数は約4200人。すでに、日本独自の協業を相次ぎ発表し、日本における新たな地盤づくりを進めている。

Kyndrylとキンドリルジャパンの概要

 そして、戦略や方針に「DX」の文字を使わないこだわりも気になるところだ。キンドリルジャパンの上坂貴志社長に、同社の取り組みについて聞いた。

キンドリルジャパン合同会社 代表取締役 社長執行役員の上坂貴志氏

お客さまへの説明に時間を割いた

――2021年9月の設立以降、どんなことに力を注いできましたか。

 キンドリルジャパンの設立にあわせて、日本IBMと契約をしていただいていたお客さまに説明を行い、日本IBMとしてお約束をしていたことは、キンドルジャパンがしっかりと引き継ぐこと、それに加えて、分社したことにより、お客さまに提供できる新たな価値を説明することに時間を割きました。

 日本IBMの山口明夫社長が同席する場面もありましたし、キンドリルとしての方向性をしっかりと聞きたいというお客さまには、私たちだけでお邪魔するということもありました。

――顧客の反応はどうでしたか。

 なかには「分社して大丈夫なのか」といった率直な意見もいただきました。ただ、日本IBMのグローバルテクノロジーサービス(GTS)事業が独立した企業ですから、お客さまの担当者もリーダーも責任者も変更がないことを説明し、もし懸念していることがあれば、それに対しては、ひとつひとつ丁寧に対応していくことをお話ししました。

 キンドリルが進む方向はシンプルです。しかしシンプルであるがゆえに、強さや深さが求められ、そこにお客さまの期待があると考えています。多くのお客さまが悩んでいるのは、システムをいかに安定させるのか、コスト構造を含めてシステムをどう刷新するのかなどです。そこにキンドリルがしっかりと貢献できないと、日本のお客さまの変革が止まってしまうという危機感を持っています。

 CxOの方々とお話をして、キンドリルが目指しているところを説明すると、「そういうことだったのか」と理解を示していただけるお客さまが多かったことに手応えを感じています。

キンドリルのCustomer Success&Service Excellence

――それは、どんな点ですか。

 理解をしていただける背景にあるのは、企業が直面しているいくつかの課題です。ひとつめは、多くの企業はベンダーロックインの状況にならないために、さまざまなベンダーの製品やソリューションを活用してシステムを構築していますが、これを統合し、運用を任せられる企業がないという実態でした。特定のベンダーに偏らず、お客さまの目線やプライオリティで、統合・運用を任せられる企業がなかったのです。キンドリルがIBMの資本を入れず、独立した形で事業を行うことを選択した理由はそこにあります。

 2つめは、企業のエンジニアの構成を見ると、基幹システムを構築した人たちが高齢化し、その直後の世代はバブルの影響もあって採用が控えられ、さらに今の世代は、基幹システムに触れる機会が少ないという状態が生まれているという点です。エンジニアの年齢分布には「ふたこぶラクダ」のような状況が生まれており、シニアの知識や技術をどう継承するか、若い世代に対してインフラに関する知識やスキルの育成をどう行っていくかという点に課題を持っています。キンドリルジャパンの強みは、システムインフラに精通した社員が数多く在籍していることであり、こうした課題を解決するお手伝いをするには最適な企業だといえます。

 そして3つめには、こうしたシステムの複雑化や社内の人材育成の課題に加えて、中期経営計画の成長にあわせたシステムをいかに構築していくか、コストの効率化をどう図るか、クラウドマイグレーションをどう考えるかといったさまざまな課題に対して、お客さまが悩んでいるという実態があるという点です。

 DXを支援しますという企業は多いのですが、これからのDXの推進には、ミッションクリティカルの知識をどれだけ持っているのかが重要な要素になります。キンドリルは、長年の歴史のなかで、メインフレームを中心としたミッションクリティカルシステムの構築、運用に関するノウハウを持ち、今後も、ここに継続的に取り組んでいくことを示しています。これをうたっている企業は、実は少ないのです。クラウドシフトが起きるなかでも、ミッションクリティカルのノウハウは、ますます重要になります。キンドリルが、基幹業務をお預かりするという姿勢や責任感、そのための備えを持ち、一緒になってクラウドシフトに臨めることは、お客さまにとって大きな価値と安心感を提供することにつながります。

 このように、CIOが「困っている」という領域に対して、キンドリルがお役に立てること、そして、今後の社会の姿を見据えて、キンドリルを設立したことは、多くのお客さまに理解をしていただけたと思っています。

グローバルレベルのIT業界のスピードを経験したことを生かしたい

――キンドリルジャパンがスタートして、社員にはどんなことを話しましたか。

 2020年10月に分社化を発表した時点では、社員もどんな分社になるのかも理解できず、不安が大きかったと思います。細かい話でいえば、お客さまとつながっている携帯電話の番号がそのまま使えるのかどうか、ということすらもわからず、現場の社員にとっては多くの心配事がありました。

 そこで新会社設立に向けた準備室を設置し、エンジニアや営業、バックオフィスなどの各部門から人選して、現場を知っている人たちが専任で、社員からのあらゆる質問に答えられるようにしました。これは日本独自の取り組みでした。この機能は現時点でも残していて、何かあった場合の窓口となり、社員をケアしています。また会社設立に至るまで、全体会議や年齢層別、ラインマネージャーごとといったようにさまざまな形で説明の場を設けました。

 まず、社員に対して話したのは、お客さまの声を社内にフィードバックしてほしいという点です。また、今は不透明な世の中ですから、すべてがクリアになってから動くのではなく、スピード感を持って動くことを徹底しました。スピード感という意味では、この分社化のなかで、私たち自身がグローバルレベルのIT業界のスピードを経験したことを生かしたいと思っています。Kyndrylの発表から設立、上場までの期間はわずか1年間。これだけのことを1年でやるグローバルカンパニーのスピード感を、キンドリルジャパンの社員にも求めていきたいと考えています。

 私がやりたいと思っていること、社員が感じていること、不安に思っていることは、包み隠さずに共有していくことが大切だと思っています。これまでに経験がない規模の分社化であり、それをわずか1年間でやり遂げ、そのなかでは数多くの判断が求められました。キンドリルだけでなく日本IBMにとっても多くの気づきがあり、それをこれからのビジネスに生かしていくことができると思っています。キンドリルがプロセスを改善して成果をあげれば、もともと同じ仕組みを持っていた日本IBMにとっても、それはヒントになるといえますからね(笑)

日本IBMから継承するものと、独自に取り組んでいくこと

――日本IBM時代のGTSとキンドリルジャパンでは、社内の雰囲気や目指す文化という点では、なにか違いがあるのでしょうか。

 多くの人たちがGTS出身者ですから、これまでやっていたことを大きく変えたり、まったく新しいことをやったり、ということはありません。ただ、キンドリルジャパンとなったことで、GTSから引き継いでいくものと、引き継ぎつつもカスタマイズしていくもの、新たに始めることという3つを考えなくてはいけません。そこは、茶道や武道の「守破離」の考え方に近いともいえます。

 IBM社員がIBMerと呼ばれるのに対して、キンドリルの社員はKyndrylsと呼ばれます。社内では、すでにKyndryls Dayと呼ぶイベントを開催し、Kyndrylsはどう成長していくべきかといったことを議論しました。IBMのいいところを生かしながら、パートナーとの新たな関係構築など、キンドリルでなくてはできないことを増やしていきたいと考えています。

 また、入社1・2年目の社員が手をあげてくれて、「ダイアログ」を実施しました。Slackを使って、キンドリルを良くするためにどんなことを考えているかといった声を社員から発信してもらい、出現頻度が高い単語を複数選び出すことができるワードクラウドを用いることで、社員の関心事はどこにあるのかといったことをまとめました。ここでは、若い社員たちの間に、新しい会社を自ら作っていこうという意識が強いことを感じることができました。また社員には、どんな会社にしたいのかを「宣言」してもらい、それに対して社長賞などを用意して、表彰するといったことも行いました。こうした活動は、これまでのGTSにはなかったもので、まさにスタートアップ企業のような取り組みだったといえるかもしれませんね。

 ただ、日本IBMから継承していこうと思っていることは、たくさんあります。ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みはその最たるものですし、働き方改革においても継承していくことも多いですね。お客さまとタレントにフォーカスする姿勢は、これからも継続していくことになります。むしろ、「Think Customer First」というIBMの姿勢は、私たちこそが継承しなくてはならないものだと思っています。

 その一方で、キンドリルとして、新たなことに挑戦しなくてはなりません。日本IBMでは、製品からサービスまですべてをそろえることができるため、GTSの社員が受ける教育プログラムは、IBMの製品、サービスを学ぶことにフォーカスしていました。

 しかし、お客さまの現場では、デファクトスタンダードと言われる製品、サービスを含めて、さまざまなものが活用されています。キンドリルになるということは、IBM Cloudだけでなく、AWS、Azure、Google Cloudについても精通し、市場トレンドも的確にとらえながら提案していかなくてはなりません。すでに、社員が周りをよく見るようになってきていますし、さらによいソリューションを提案するにはどうすればいいのかを社員が自問自答するようになっています。

キンドリルの価値
キンドリル グローバル・エコパートナー

――キンドリルのビジネスにおいて、日本IBMを起点したビジネスは、年々減少していくことになりますか。

 IBMを避けるわけではありませんし(笑)、ベストパートナーとしての関係がありますから、より良いものが提供される限りは、IBMの製品、サービスを提供していきます。ただクラウドという観点から見ると、AWS、Azureを前提として検討するお客さまが多いのは確かですし、オープンな提案をすることがキンドリルの特徴です。

 また、お客さまのニーズは変化していきますから、そこにも柔軟に対応していく必要があります。例えば、今後は、基幹システムであっても、インフラの領域は共有されるような動きが出てくることも想定されます。情報システム部門に足りない部分を補い、お客さまに近いところでインフラを支えながら、環境変化をとらえた提案も進めていきたいと考えています。そこにキンドリルの役割があると思っています。

あえて「DX」を打ち出さない理由は?

――Kyndryl本社のリーダーシップチームは、日本の市場や顧客をよく知るメンバーで構成されていますね。

 これは、私にとって心強い部分です。CEOのマーティン・シュローターは、2000~2004年まで日本IBMおよびIBM APで財務部門を担当していましたし、グループプレジデントのエリー・キーナンは2017年から2019年まで日本IBMで社長を務めました。また、日本IBM専務執行役員を務めたケリー・パーセルも、キンドリルジャパンの会長と兼務する形で、オーストラリア/ニュージーランド法人の社長に就任しています。

 さまざまなことを議論する際に、日本の状況を説明しやすいですし、それを具体的なお客さまや業界を例にして、深い話し合いができることは大きなメリットです。その分、私が日本のことをしっかりと伝えなくてはいけません。いい緊張感を持って臨んでいます。

キンドリルのリーダー

――キンドリルジャパンでは、4つの戦略を打ち出しています。戦略0の「カスタマサクセス&サービスエクセレンス」、戦略1の「サービスイノベーション」、戦略2の「ビジネスモデルイノベーション」、戦略3の「エコシステムイノベーション」ですが、これはグローバル戦略にのっとったものですか。

 これは、チーフ・ストラテジー・オフィサーの工藤晶が中心になり、日本独自に策定しました。今までやっていきたことに加えて、キンドリルに対するお客さまの期待値を考えて打ち出したものです。それぞれの戦略は相互に関連しますし、これらをいかに磨き上げるのかが、今後の発展のベースになると考えています。

 その際にベースとなっているのは「品質」であり、これは、キンドリルジャパンがビジネスを行う上で絶対的条件となっています。「できるかどうかわからないがやってみる」というようなことは絶対にしません。ミッションクリティカルを経験してきたキンドリルは、そのノウハウを活用し、どんな局面においても、安心していただける形でインフラを提供することになります。

 一方、注目をしていただきたいのは、ここには「DX」という言葉を使っていない点です。またキンドリルジャパンでは、「クラウド」、「メインフレーム」、「デジタルワークプレース」、「アプリケーション&データAI」、「セキュリティ&レジリエンシー」、「ネットワーク&エッジ」の6つの技術領域にフォーカスしていくことも打ち出していますが、ここにも「DX」は含めていません。

キンドリルジャパンの戦略

――それはなぜですか。

 これは「DX」をやらないといっているわけではなく、キンドリルのビジネス領域が、社会基盤となるインフラであることが理由です。言い方を変えると、インフラそのものがDXであり、DXはインフラが含まれていないと成り立たないという考え方があるからです。

 例えば、金融分野におけるモバイルインフラの利用は、最初は残高照会だけでした。この用途であればインフラに求められる堅牢性は低くてもかまいません。しかし、今ではモバイル決済が行えないとモバイルサービスは成立しませんし、それが停止すると、ビジネスそのものに大きな影響を与えます。インフラへの投資を抑えるというのは、PoCのレベルならばいいですが、新たなビジネスやサービスを展開する上では、障害発生時の対応や、利用が急拡大した際の帯域の確保などを含めて、想定外のことにも対応できる堅牢性と柔軟性が高いモバイルインフラを用意しなくてはなりません。

 こうした例からもわかるように、DXを推進するには、それにふさわしいインフラの装備が必要です。社会基盤として利用される環境をしっかりと維持することが、私たちには求められています。これは、DXだけでなく、すべてのシステムにおいて共通の要件であり、DXにだけ視点を置くことがキンドリルの役割ではありません。

 コロナ禍において、日本のデジタル化の遅れが顕在化しましたが、その多くがインフラに起因したものです。インフラの拡張性やバックアップ、サイバー攻撃への対応、個人情報の保護など、日本ではやらなくてはならないことが数多くあります。日本の社会そのものがステージをあげていくには、インフラが重要であり、そのインフラの上で産業ごとのプラットフォームや、産業の枠を超えたプラットフォームが構築され、DXが推進されることになります。

 DXを支える、縁の下の力持ちが社会基盤となるインフラです。キンドリルの役割は、お客さまがDXによって、やりたいことを実現できるインフラを提供し、安心して運用できる環境を提供することです。キンドリルが、プロミス(約束)を「社会成長の生命線」になるとしたのは、インフラをしっかりと支える姿勢を示したものであり、戦略0から戦略3に関しても、そうした考え方をもとに策定しています。

キンドリルジャパンが描くITインフラの未来

――キンドリルジャパンが描くITインフラの未来とはどんなものですか。

 もともと、ITインフラはIT資源の提供からはじまり、そこに積み上がるように、ITアウトソーシング、デジタルアウトソーシング、産業別プラットフォーム、産業を超えたサービスプラットフォーム、社会基盤を支えるデジタル基盤といった形で増えています。

キンドリルジャパンが描くITインフラの近未来

 キンドリルでは、これに対応する形で4つの戦略に取り組むことになります。戦略0の「カスタマサクセス&サービスエクセレンス」では、徹底した品質管理と自動化による品質向上などを通じて、安定運用と有事の備えを万全にし、お客さまの期待に応えることを目指します。

 その上で、戦略1とした「サービスイノベーション」により、アーキテクチャ設計やインフラ構築・運用、モダナイゼーションといったことに取り組みます。ここまでは、これまでのインフラの考え方の範囲ということができます。

 ただ、戦略2の「ビジネスモデルイノベーション」では、インダストリープラットフォームの構築や、業界を超えたサービスプラットフォームの構築が重要になってきます。1社ごとにシステムを構築するのではなく、業界内でつながったり、あるいは業界を超えたつながりが求められたりするようになります。ここでは、自分たちでプラットフォームを作るのではなく、つなぐことができるプラットフォームの存在が重要になってくるというわけです。例えば、金融機関が共通のデジタルプラットフォームを活用し、それぞれがつながるといった動きが挙げられます。

 そして、戦略3の「エコシステムイノベーション」では、マルチクラウドをはじめとして、オープンで、柔軟な座組みが求められます。AWSだからこれができる、Azureだからこれができるというのではなく、まずは、何をやりたいのかをキンドリルに言ってもらえば、それを実現するためにキンドリルのエコシステムを活用し、最適なものを組み上げるという仕組みです。また、全体を統合し、横断的に組み上げたインフラを見た際に、無駄なところはないのか、改善する部分はどこなのかといったことも、キンドリルが指摘し、整備することが可能です。これを実現するために、キンドリルは、アライアンスによる新たなビジネスモデル構築に積極的に取り組んでいます。

――すでに日本独自のアライアンスを相次いで発表していますね。

 キンドリルがスタートして以降、エクイニクス・ジャパンや日本カストディ銀行、TISなどとの連携を発表していますし、グローバルでも、Microsoft、SAP、VMware、Google Cloud、Pure Storageなどとのアライアンスを発表しました。これは2022年も増えていくことになります。

 日本では、コンサルティングファームとの連携も増えそうです。コンサルティングファームでは、コンサルティングやアプリケーション開発までは担当できても、運用、保守のところまで手が回らないという声があります。そこにキンドリルが貢献できると考えています。

 運用、保守という領域は、お客さまの状況を熟知していることが大切であり、経験がないと、なにか発生したときにタイムリーに動けないということが多々あります。運用、保守のフェーズになると、作った人にはわからないことが、インフラを理解しているキンドリルだから理解できるということもあるわけです。

 また、お客さまからは選択肢が多すぎるという悩みも聞きます。エクイニクス・ジャパンとのパートナーシップは、シンプルなデファクトスタンダードを作るという点で意見が一致して実現したものです。こうした観点からの話し合いも進んでいます。

 今も、さまざまな企業と話し合いを進めていますが、エクイニクス・ジャパンとのパートナーシップが、日本法人のトップ同士の話し合いにより、わずか数カ月間で決定したように、スピード感を持って連携を進めていきたいと思っています。

――現時点では、具体的な経営数値目標は打ち出していませんね。

 数字があるから何かをやるというのではなく、お客さまの成長に応じて、キンドリルは何をするのかといったことを重視したいと考えています。社会基盤を担う会社が、目標値ばかりを重視するというのは、経営の観点からずれていると感じています。

 もちろん経営者として、売上成長や収益性向上は重要な指標です。ただ、大切なのは、お客さまのニーズに応えられているのかどうかという点であり、お客さまが求めているスキルが足りなかったり、異なったりするということであれば、社員のリスキルに取り組み、お客さまに必要な提案ができるようにしたいと考えています。

 目指しているのは、お客さまに声をかけていただくこと、それに対してしっかりと提案を行い、価値を提供することです。お客さまに近いところでビジネスをしている会社ですから、「まずはキンドリルに聞いてみよう」となることが、私たちの目標です。

これまで以上にお客さまに選ばれる存在になっていくことが大切

――2022年は、キンドリルジャパンにとって、どんな1年になりますか。

 最初の1年ですから、まずは信頼を含めた評価が問われる1年だといえます。日本IBMと結んでいた契約をキンドリルジャパンに任せていただいたお客さまに対して、その約束をやり切ること、安心してもらえることが大切であり、その点での「真価」が問われることになります。

 また、日本IBM時代に必要だったスキルから、キンドリルに求められるオープンな基盤を支える技術力を身につけることが大切です。そのために教育投資を倍増します。パートナーとのアライアンスも増やし、同時に、お客さまと一緒になってどうお役に立ているのかを具体的な形で提案していきたいと考えています。お客さまが期待する安心、安全、安定のシステム運用と、卓越した技術力、案件ごとに最適なソリューションを提供できるエコシステム、そして熟練の人材に磨きをかけていきます。

 キンドリルジャパンは、さまざまな企業や組織、社会のミッションクリティカルなシステムの担い手として、さらには、お客さまがDXを推進する上で最も大切なインフラパートナーとして、「芯」にいる存在になるための「芯化」を目指します。

 2022年は、本当の意味でキンドリル元年であり、「真価」と「芯化」の2つの「Shinka」を追求していきます。

 キンドリルの社員一人ひとりが、お客さまから、「うちの社員だと思っているからね」、「なくてはならない存在だからね」と言われるようになることが目標です。お客さまの会社のなかで、キンドリルの○○さんではなく、普通に○○さんと呼ばれるような存在になり、システム部門の社員と同じように、お客さまのことを考えて、一緒にシステム構築、運用を考えられる存在になっていきたいですね。

 分社化にあわせて、お客さまと契約を結びなおしたときに、「○○さんがそのまま担当してくれるのならば、キンドリルと契約するのは当然だ」と言っていただいたケースがありました。冥利(みょうり)に尽きます。キンドリルは、日本IBMの世界から、これまで以上に広い世界に飛び込んでいくことになります。そこにおいても、これまで以上に、お客さまに選ばれる存在になっていくことが大切だと思っています。そこを目指していきます。

まずは信頼を含めた評価が問われる1年になると話す、キンドリルジャパンの上坂社長