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中国の参加が契機になるか 安全なAI目指す「ブレッチリー宣言」

中国のAI制度から学ぶことはできるか?

 中国のAI規制制度は、具体的な整備が始まる段階の米国などと比べ、既に実運用に入っている。

 同時に海外からは批判も多い。特に暫定規則の中にある「社会主義の核心的価値観を堅持」(4条の1)は、『社会主義的価値観』に沿わないAIコンテンツを検閲で排除するものとして、国外メディアに強い抵抗感がある。

 それでもMIT Technology Reviewは、中国のプロバイダー向け標準文書は「非常に詳細で明確な基準を設定」していることから、学ぶべき点があるとしている。

 例えば、AIプロバイダーが「データのブラックリスト」を作成する際、「1つのソースから4000の『データの断片』を無作為抽出して、5%以上が『違法で否定的な情報』ならば、今後のトレーニングのためにブラックリストに載せる」と、非常に具体的な手法を定めている。

 MIT Technology ReviewのZeyi Yang中国担当記者は「中国のAI安全基準は世界のAI産業に計り知れない影響を与えると私は信じている」と述べている。

 AI業界を2分する米中両国の対立は続いている。ブレッチリー宣言の前後も、米国が半導体禁輸の強化を打ち出せば、中国は「グローバルAIガバナンスイニシアティブ」(全球人工智能治理倡議)を発表。主導権争いを繰り広げている。

 だが、AIをめぐるリスク回避では、世界の協力が必要だ。AIのもたらす影響は、それほどに差し迫っている。