Infostand海外ITトピックス

中国の参加が契機になるか 安全なAI目指す「ブレッチリー宣言」

 AIの安全性について討議する世界初のサミットが英国で開催され、国際的な枠組みとなる「ブレッチリー宣言」をまとめた。G7主導の取り組みだが、これに中国が参加した。AIの研究・開発で米中両国が激しく競うなか、この分野で協力できる可能性も出てきた。

各国でAI規制の認識を共有

 ブレッチリー宣言は「AIから生じる多くのリスクは本質的に国際的なものであるため、国際協力を通じて対処するのが最善である」として、「AIのもたらすリスクを特定」し、その「軽減のための国際的な政策構築」を行うための枠組みを決めたものだ。

 11月1日から各国の閣僚級代表やAI企業のトップらが参加して英国で開催された「AI安全サミット」(AI Safety Summit)で、米中を含む28カ国とEUが合意した。各国が初めてAI規制について認識を共有したことは、AIのグローバルな安全に向けた大きな一歩となる。

 サミットは5月にG7で合意したAI活用の推進に沿ったもので、米国を中心とするグループが主導している。このため米国とAI覇権をめぐって争っている中国を引き込むことは難しいと考えられていた。

 しかし、ホストの英Sunak政権は中国に働きかけて参加を実現した。9月に行われた5年ぶりの英外相訪中などで道筋がついたという。中国の招待には英国内でも反対論があったが、除外するのは得策でないと判断した。

 一方中国側でも、研究者の強い後押しがあったようだ。Financial Timesは、サミットに参加した中国のチューリング賞受賞コンピューター科学者、Andrew Yao(姚期智)氏が、米欧の科学者らとともにAIの国際的な規制を求めていることを紹介している。

 サミットの冒頭で、参加した中国科学技術省のWu Zhaohui(呉朝暉)次官は「中国政府は。AIの安全性に関するあらゆる関係者との対話とコミュニケーションを強化する用意がある」と述べた。

 米政治紙のPOLITICOは、中国の参加は英国にとって「外交的に見事な大きな戦略」と評価している。