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「CentOS Linux」終了へ 開発者の動揺と救済の動き

 「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」互換のLinuxディストリビューション「CentOS Linux」が今年いっぱいで開発終了になる――。CentOSは、無償で利用できる“RHELクローン”の中でも特に人気がある。その予想外の終了は、開発者コミュニティに大きな衝撃を与えた。CentOSを支援するRed HatはRHELの無償枠を拡大し、互換ディストリビューションのプロジェクトも生まれた。だが、混乱は続いている。

怒る開発者たち

 CentOS Projectが2020年12月8日、「CentOS Linux」の開発とサポートを2021年末に終了すると発表した。今後は新しい「CentOS Stream」に開発作業を集中させるという。

 CentOS Streamは、Red Hatが2019年9月、CentOS 8の公開と同時に発表した「エコシステムの開発者向けアップストリーム(コミュニティがソースコードから開発する)のプラットフォーム」だ。このため、RHELのソースコードを再構築したものとは異なり、CentOSを“安定版”として利用している多くのサービスに影響。ユーザーはシステムの見直しを迫られる。

 CentOSのディストリビューションの慣例では、RHEL 8ベースのCentOS 8は2029年までサポートされるはずだった。多くの開発者はこれを前提として中期プランを考えていたため、終了によって大幅な変更を余儀なくされる。なお前バージョンのCentOS7は、そのまま2024年6月30日までサポートされる予定だ。

 唐突な発表に業界は大騒ぎとなった。CentOSのブログのコメント欄には「怒りしか感じない。CentOS 8への移行を始めたところなのに。Streamは選択肢にならない。安定性が欲しい」「RHELには移行しない」といった言葉が並んだ。

 また発表にある「CentOS Streamがニーズを満たさないことが懸念されるなら、Red Hatに連絡して選択肢を確認することを推奨する」という文言が気になった人は多いようだ。

 プログラマーが集まるHacker Newsには「予期できなかったというよりも失望した。RHELに対価を払えということだろう」「Red Hatには間接的に悪影響が出るだろう。開発者/DevOps担当者/システム管理者はCentOSでの作業からスキルを得ており、CentOSはRHELと移植性があるという位置付けだった。だがそうではなくなる」などのコメントが書き込まれている。

 Red Hatの親会社IBMが裏で決めたのではないかと疑う声まで出た(なお、IBMはRed Hat買収にあたって独立性を維持すると約束している)。

 ユーザーの反発を受け、CentOS ProjectのガバナンスボードのKarsten Wade氏はCentOSプロジェクトのブログで説明。「CentOSをRHELのダウンストリーム(オープンソースのコードからビルドする)からRHELのアップストリームにすることで、RHELとその開発版のFedoraとのギャップを埋める」と記した。この方針はRed HatがCentOSプロジェクトを取得した際に、CentOSの取締役と合意していたという。

 一方でRed Hatは1月20日、開発者プログラムを拡大して、個人開発者が最大16システムまで、無料で本番環境のRHELを使えるようにすることなどを発表している。一種の救済策だ。