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宇宙開発向けクラウドサービス本格化 領域広げるAWS

 Amazon Web Services(AWS)が新たに宇宙関連部門「Aerospace and Satellite(A&S)Solutions(航空宇宙・衛星ソリューション)」という専用セグメントを立ち上げた。宇宙ビジネスの勃興の中、「constellation」(衛星群)を運用できるサービスをクラウドで提供するものだ。クラウドベンダーも“最後のフロンティア”をめぐる戦いに突入してゆく。

航空宇宙・衛星産業のイノベーション加速に特化

 新事業部は、▽宇宙システムのアーキテクチャの再構築、▽宇宙企業の変革、▽地球上や軌道上の宇宙データを処理する新しいサービスの立ち上げ、▽安全、柔軟、拡張性、コスト効率に優れたクラウドソリューションの提供と、政府のミッションや世界中の宇宙開発を推進する企業のサポート――を事業として掲げ、「グローバルな航空宇宙・衛星産業のイノベーションの加速に特化」するという。

 責任者には、米宇宙軍の設立準備を担当した前宇宙軍計画局長で、退役したばかりのClint Crosier元空軍少将が就任する。

 AWS公共部門担当バイスプレジデントのTeresa Carlson氏は発表で、NASAの「アルテミス計画」に触れながら、「私たちは、アポロ計画以来、宇宙で最もエキサイティングな時期を迎えている」と述べた。アルテミス計画は2024年までに再び月に宇宙飛行士を送り、月面基地を建設しようという意欲的なプロジェクトだ。

 Amazonの宇宙関連事業は大きく動き出している。同社は昨年、3000基以上の低軌道衛星群でグローバルなブロードバンド接続網を構築する「Project Kuiper」を開始。本社に近いレッドモンドにオフィスとR&Dセンターを開設した。

 また、創業者兼CEOのJeff Bezos氏が個人的に所有する航空宇宙企業のBlueOriginは今月に入って、アルテミス計画の月着陸船を開発する3社に、Elon Musk氏のSpaceXらとともに選ばれた。

 クラウドでは、既に「AWS Ground Station」という、人工衛星を制御し、収集したデータを管理するサービスを開始している。「使っただけ支払う」という従量制のサービスで、衛星事業者の運用コストを大幅に引き下げることができるという。

 今回の発表では、航空宇宙・衛星ソリューション部門のパートナーとして、航空宇宙大手のLockheed Martinや、Maxarなどの名が発表されたが、とりわけ衛星ベンチャーのCapella Spaceは注目に値する。AWS Ground Stationを全面採用していることが公表されたのだ。

【お詫びと訂正 2020/07/16】
 記事初出時、AWS Ground Stationについて「サブスクリプションのサービス」と表記していましたが、「従量制のサービス」が適切な表記でした。お詫びして訂正いたします。