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宇宙開発向けクラウドサービス本格化 領域広げるAWS

宇宙開発は民間主役に

 宇宙開発はかつて“国家の威信”をかけた公共プロジェクトだったが、大きく様変わりしている。2010年代後半から宇宙はビジネスの場として意識されるようになり、ベンチャーキャピタルが資金を注入した。SpaceXのような宇宙ベンチャーも次々に登場し、月面探査どころか、火星に行く計画までを真剣に立案している。

 象徴的なのが、フロリダのケープカナベラル空軍基地だ。アポロ計画のほとんどのロケットを打ち上げた「39A」発射台は2013年に契約を落札したSpaceXが20年間のリース契約を結んでいる。また、惑星探査「パイオニア計画」などで活躍した「36」発射台はBlueOriginが、「ボイジャー」を打ち上げた「41」発射台は、Lockheed MartinとBoeingの合弁打ち上げ会社United Launch Alliance(ULA)がそれぞれリースしている。

 国の資金で構築された施設も売却やリースで企業に開放され、宇宙を目指す起業家のものとなった。宇宙開発の主役は、すっかり民間に移っている。

 英国の金融・経済誌Euromoneyは、NASA長官のJim Bridenstine氏が2018年に「ハードウェアを購入し、所有し、運用するのではなく、サービスを購入するのだ」「私たちが月に行くとき、地球と月の間の好調な市場で、多くの顧客の1つになりたいと考えている」と語ったことを紹介する。

 NASAは、打ち上げや運用から解放され、宇宙探査・研究という任務に集中したいからだ、という。

 一方、宇宙ビジネスは過熱、過密化している。そして、新型コロナの影響などで資金に行き詰まる例も出ている。Wall Street Journalは、衛星ベンチャーの最大9割が今後数年で消えるとのアナリストの見解を紹介している。コスト削減の要求は極めて強い。

 AWSは、そこでNASAやCapella Space向けに構築、実証してきたソリューションを、他の事業者向けに販売する。いつもの戦略である。

 Amazonのしたたかさは、宇宙時代にあっても変わりがないようだ。