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宇宙開発向けクラウドサービス本格化 領域広げるAWS

SAR衛星サービスのITインフラ全体を運用

 Capella Spaceは2016年に設立されたSAR(合成開口レーダー)衛星を使った地表画像サービスの草分けだ。

 SARはマイクロ波のレーダーで、雲を透過するほか、夜間側でも使えるので、天候や昼夜を問わず地表面を観測できる。長らく軍事用として機密扱いだったが、同年に米国の規制緩和で商利用が認められたこと、テクノロジーの進歩による衛星の小型化などで、民間企業が参入した。

 同社は2018年末に第1号を打ち上げ、衛星群の構築を進めている。0.5m以上の高解像度画像を“オンデマンド”で提供。安全保障関連から災害状況の把握、インフラのモニタリング、農産物の生育状況調査など幅広い用途が見込まれる。計36基を運用して地球上のあらゆる場所を1時間間隔で観測できるようにする計画だ。

 AWSとCapellaは今回、両社の提携の内容を明らかにした。Capellaは「ITインフラ全体をAWS上で運用し、衛星の制御を含む運用の自動化とスケーラビリティを実現」「世界中のリージョンに配置されたAWSの地上局アンテナを経由して、衛星と通信し、地上局のインフラを自社で管理する煩雑さをなくし、コストを削減した」と説明している。

 人工衛星の制御やデータのダウンロードをAWS上で直接行い、衛星で24時間365日収集される1日あたり平均2~5テラバイトの画像データを管理、データ処理し、さらに分析ツールも用意してインフラを支えているという。

 この種のサービスには大きな需要が見込まれている。NSRが6月に発表したレポート「Global Satellite Manufacturing and Launch Markets」(10版)は、今後10年間の衛星製造・打ち上げの市場規模を4780億ドルと予想している。

 重量500kg以下の小型衛星が対象で、政府機関、軍関連のほか、軌道上サービス、有人ミッション、HTS(大容量)通信衛星など商業化が活発で、衛星の受注数は1万を超えているという。

 Project Kuiperはもちろん、Elon Musk氏の「Starlink」や、ソフトバンクが支援していた(そして手を引いた)英国のOneWeb、Facebookの「Athena」衛星などが、しのぎを削る世界だ。

 宇宙クラウドの前には未踏の巨大市場が広がっている。