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製造業IoTで注目 現実をコピーした「デジタルツイン」

デジタルツインの幅広い用途

 そもそもデジタルツインとは何か――。この概念は、2002年にミシガン大学のMichael Grieves教授が提唱したもので、「複雑なシステムにおいて、予測不可能で、望まない緊急事態に対応すること」を目的とする。

 「(デジタルツインは)物理的なシステムのデジタル情報の構成物を、自身の上のエンティティとして作成できる。デジタル情報は物理システムそのものに組み込まれた情報の“双子”であり、物理システムのライフサイクルを通じてリンクされる」とGrieves教授は説明する。

 MachineDesignによると、Hannover MesseでIBM Intenet of ThingsのCTO、Sky Matthews氏は、デジタルツインへの3つの追い風要因を挙げた。すなわち(1)データの収集速度の改善、(2)データの解像度(品質)の改善、(3)機械学習の台頭だ。そのメリットは、「出荷前の設計・開発作業の効率化」「出荷後の予測メンテナンス」や「性能の強化」などに加え、「新しいビジネスモデル」もあるという。

 Matthews氏は用途例として、HVAC(暖房、換気、空調)システムの制御を紹介している。600の部屋、250のスマートメーター、169のHVACがある建物で、気温、照明、人などを感知するセンサーからのデータを利用して、建物の電力消費を制御。メンテナンス性の改善などの大きな成果があったという。

 また欧州の製造業界ニュースサイトPackaging Europeは、デジタルツインをCADの進化の観点からとらえながら、工場の最適化や簡素化、シミュレーションによる製造ラインの柔軟な変更といった利用例を挙げている。

 実際、BoschはHannover Messeで、工場の天井や壁、製造ラインを柔軟に変更できる将来の工場をデモしていた。Packaging Europeは「現在、あらゆる製品がCAD作成でスタートするように、デジタルツイン技術の応用が偏在する時代が来るだろう」と予想する。