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製造業IoTで注目 現実をコピーした「デジタルツイン」

 IoT、クラウド、ブロックチェーンなど、製造業の世界では先端のデジタルテクノロジーを導入する動きが活発化。その中で「デジタルツイン」が浮上している。物理的な対象物と同じデータ「デジタルの双子(ツイン)」を作成して、早期に設計上のミスを発見したり、出荷後に予測メンテナンスをできるというものだ。CADのように、今後の製造業における必須技術になるとの予測もある。

SAPの製造業向けIoTソリューション

 ERP大手の独SAPは、ハノーバーで4月下旬に開催された産業技術の展示会「Hannover Messe 2018」で、製造業向けクラウドの新ブランド「SAP Digital Manufacturing Cloud」を発表した。システムの管理・監視・予測から、サプライチェーン内の連携などの機能を取りそろえた産業IoT向けのソリューションで、ドイツが推進する「インダストリー4.0」をクラウドで展開できるようにする。

 製造業のデジタル化は、静かに、急速に進んでおり、同時に同市場の争奪戦が活発になっている。SAPは、もう一つ、Hannover Messeで「デジタルツイン」ソリューションの「SAP S/4HANA Cloud for Intelligent Product Design」を発表している。設計・開発面からデジタル化、クラウド化を支援し、サプライヤー、パートナーなどと、製品の設計と開発を高速化する。

 SAPの製品・イノベーション担当幹部Bernd Leukert氏は「デジタルツイン情報を社内・社外の参加者と共有することによって、新製品から店舗までの生きた洞察を得られる」と説明する。

 Intelligent Product Designは、SAPの技術群「SAP Leonardo」と組み合わせることで、協業のレベルを拡大し、製造とオペレーションのプロセス全体でデジタルツインのメリットを享受できるという。

 Hannover Messeでは、「デジタルツイン」が、「予測メンテナンス」「AI」「スマート供給」などに加えて脚光を浴び、Siemens、Kaeser Kompressorenなどの製造大手がそれぞれの取り組みを披露した。

 例えばKaeserでは、自社圧縮空気システム(コンプレッサー)製品のデジタルツインで構成されるネットワークを構築し、リアルタイムでモニタリングすることで、技術者がシステムの不具合を発生前の段階で防いでいるという。

 ほかに、米国のベンチャー企業SWIM.AIは4月はじめ、初の製品「SAIM EDX」を発表した。エッジコンピューティングを利用し、エッジで生成されたデータでデジタルツインを作成し、機械学習を利用して分析、予測、推論を行う。同社は「自己トレーニング型の深層ニューラルネットを使って、その場で学習して将来のパフォーマンスを予測できる」と説明している。