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中国のAIベンチャーが米国を抜いた AI覇権国家の夢は実現するか?

国を挙げたAI推進

 中国の最高行政機関である国務院は2017年7月、AIの推進計画「新世代人工知能(AI)発展計画」を発表した。前年2016年5月に同院国家発展改革委員会が発表した3カ年計画「インターネットプラス AI 3年行動実施方案」を大幅にスケールアップさせたもので、AIを3段階で発展させ、中国を「2030年に世界トップのAIイノベーションセンター」にするのが目標だ。

 中国のAIは初期段階では急成長したネット企業がけん引してきた。代表的なのが、2013年にいち早くディープラーニング研究所を立ち上げたBaiduだ。これらBAT企業は、検索、EC、メッセンジャーなどのコア技術を基にプラットフォームビジネスを展開し、その中にAIを位置づけて取り組んできた。

 そこへ中国政府が注目した。きっかけは2016年3月、囲碁AI「AlphaGo」に人間の世界王者イ・セドル氏が完敗したニュースだったという。西側AIの進展は、中国にとって「スプートニクショック」(1957年、旧ソ連が人類初の人工衛星打ち上げしたことで、西側諸国に与えた衝撃)となった。そこから中国政府はAI政策を国の重要課題と位置づけ、急速に国家主導下へ転換した。

 最新の動向では、昨年12月に国務院工業情報化部(MIIT)が発表した「三年行動計画」(2018-2020年)がある。AI発展計画の第一段階の進め方を示した文書で、2020年までに「AIを中国の重要な成長分野」に育てることを掲げる。具体的には、自動車やロボットなどスマート製品分野、センサーやチップなどインフラ分野、ラインや物流など製造分野、これらの関連分野に、巨額の新規投資を行うとしている。

 さらに地方レベルでも、北京、上海、杭州、浙江、天津など主要都市がAI推進計画を策定している。その一つが北京市の「AIリサーチパーク」だ。1月3日の新華社電によると、AIを対象とする大型リサーチパークが北京市に計画されている。

 国内外のベンチャーを集め、国のAI研究の中心を目指すもので、138億元(約2300億円)をかけて北京市西部門頭溝区54.87ヘクタールの敷地に5年以内に開発。400の企業を誘致して、年間500億元(約8300億円)の生産額を生み出すとしている。