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AI技術の軍事利用が加速か Googleのペンタゴン協力で物議

 ハイテクと軍事は古くから密接な関係にある。だが、リベラルな気風の強いIT業界では軍への協力に抵抗も大きい。3月上旬、米軍のプロジェクトに、GoogleがAI技術で協力していたことが明らかになり、同社内で波紋を呼んでいるという。IT企業と軍の関係に変化が起きているようだ。

「Project Maven」

 「Googleがペンタゴン(国防総省)の開発したドローンをAI技術で支援している」。3月6日付のGizmodoがこう報じた。国防総省のプロジェクト「Project Maven」を自社のディープラーニング技術で支援しているというもので、Googleの社内メーリングリストで関連情報が共有されたのがきっかけとなって、従業員に怒りと議論が巻き起こっているという。

 「従業員の中には、軍のドローン運用技術に会社がリソースを提供することに激怒する者もいれば、マシンラーニングの開発と使い方の倫理的問題を提起する者たちがいる」とGizmodoは情報源の話として伝えている。個別の具体的な声は出していない。

 「Project Maven」(mavenは“目利き”の意)は、昨年4月に立ち上げられた国防総省のプロジェクトだ。「コンピュータービジョン」技術の活用を図るもので、機械学習とディープラーニングで、動いている、あるいは静止している画像の中から、対象物を見つけ出すことを目指す。

 安全保障問題専門シンクタンク「CNAS」(新アメリカ安全保障センター)の非常勤研究員Gregory Allen氏は昨年末の科学誌「Bulletin of the Atomic Scientists」(原子力科学者会報)への寄稿で、Project Mavenの成果がIS(イスラム国)との戦いに活用されたと述べている。軍がドローンなどを通じて収集する画像は数百万時間分にもなる。既に人間の分析官の能力を超えており、その処理にAIが活躍したという。

 国防総省広報は、Gizmodoなどの取材に対して、「他のプログラム同様、契約の詳細や、契約相手は公表しない」と述べ、同計画に参加している民間企業名や、Googleの役割を明らかにすることは拒否した。

 一方、Google広報は、未分類の画像データから対象物を認識する技術としてオープンソースのTensorFlow APIを利用したと認めるとともに、「この技術は人間がレビューするためのフラグを付けるだけで、非攻撃的な利用に限定される」と殺傷目的でないことを協調した。プロジェクトのWebサイトも「AIは戦闘の標的を選択してはいない」と説明している。