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1300億ドルの超大型買収提案 BroadcomとQualcommの事情

買収戦略を展開するBroadcom

 Broadcomは、2016年に半導体メーカーのAvago Technologiesが370億ドルで買収して現在の体制になった。Avagoは買収を機にBroadcom Limitedに改称している。率いるのは、2006年から代表を務めているHock Tan氏で、今回の買収を仕掛けたのもTan氏だ。

 Tan氏はマレーシア出身で、マサチューセッツ工科大学で機械工学を学んだあと、ハーバード大学でMBAを取得した。財務畑を歩み、ベンチャーキャピタルファンドから、PepsiCoやGeneral Motorsのマネージャーを経て、Avagoの社長兼CEOとなった。数々の半導体企業の買収で知られる。

 Avago時代は、LSI(66億ドル)、PLX Technology(3億900万ドル)、Emulex(6億600万ドル)などを次々に買収して成長。Broadcomになってからは昨年11月、Brocade Communications Systemsを59億ドルで買収すると発表した。

 Wall Street Journalによると、Tan氏は、Qualcommとの間で1年以上前から提携の可能性を探る話し合いを続けてきたという。結局、合意には至らず、非友好的買収になったわけだが、準備にぬかりはないようだ。

 買収が報じられる前日11月2日、Tan氏はホワイトハウスで、Donald Trump大統領とともに、Broadcomの本社登記をシンガポールから米国に移転すると発表。さらに「毎年、研究開発に30億ドル、製造に60億ドルを投資。国内雇用を生む」と宣言した。大統領はTwitterで歓迎した。

 本社移転は、Trump大統領を喜ばせるだけでなく、Qualcomm買収にも重要な布石となる。米国外の企業が米国企業を買収する際には、国家安全保障上の懸念があるかを判断する対米外国投資委員会(CFIUS)の審査がある。本社がシンガポールのままでは、Qualcommの買収は認められにくい。実際、Brocadeの買収の際はCFIUSの調査対象となり、1年かかって、ようやく完了見込みまでこぎつけた。