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1300億ドルの超大型買収提案 BroadcomとQualcommの事情

 通信向け半導体大手のBroadcomが同業のQualcommに買収を提案した。提示額は1300億ドルにのぼり、成立すれば半導体業界史上最高額の買収となる。のみならず、モバイル、IoTを支えるチップの世界的なサプライヤーとして大きな影響力を持つ見込みだ。だが、この買収には多くの障害と、批判的な声がある。

5Gに大きな影響力

 大型買収の話は両社で合意したものではなく、一方的なオファーの段階だ。11月3日の金曜日に一斉に報じられ、週明けの6日に正式発表された。それによると、BroadcomはQualcomm株1株当たり70ドル(現金60ドルと株式10ドル相当)の計1050億ドルを支払い、さらに250億ドルの債務を肩代わりをする。総額は1300億ドルにのぼり、日本円で15兆円に迫る。

 Qualcomm側は即日、「取締役会のレビューを完了するまでは、コメントしない」と発表した。

 IT業界の買収では、2015年のDellのEMC買収(670億ドル)を大きく超え、史上最高の提示額だ。両社が合併すれば、Intel、Samsung Electronicsに続く世界3位の半導体メーカーが生まれる。

 買収の狙いは何か――。Broadcomは発表の中で、「Qualcommの携帯電話事業は、Broadcomのポートフォリオと補完的であり、組み合わせによって強力なグローバル企業が生まれる」と説明している。抽象的な言い方だが、2020年にサービスが開始される次世代ネットワーク5Gの展開をにらんだものと専門家たちはみる。

 5Gは携帯電話のみならず、IoTやクラウド/エッジコンピューティングの要となる。Wall Street Journalは「両社の組み合わせで、消費者向けデバイスから家電、通信事業者、データセンターの間で通信を管理して、AIを働かせるチップの巨大メーカーが生まれる」と評している。Qualcommは最近、ARMベースの「Centriq 2400」でサーバ用チップにも進出している。

 またReutersは自動運転車産業への展開を指摘する。Qualcommは2016年末、オランダの車載半導体メーカーNXP Semiconductorsを470億ドルで買収すると発表し、この分野に展開中だ。

 Cowen and Coのアナリスト、Karl Ackerman氏は「(成功すれば)スマートフォン市場のハイエンドコンポーネントの大部分を基本的に獲得し、5G標準に非常に大きな影響力を持つようになる。これは自動運転車やコネクテッドファクトリーでも最高のポジションである」とReutersにコメントしている。