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1300億ドルの超大型買収提案 BroadcomとQualcommの事情

Qualcommの苦境

 Qualcomm側の状況はもっと複雑だ。同社は携帯電話分野で支配的なポジションにあることから、各国の独禁法当局の調査を受けてきた。その結果、2015年に中国で60億8800万人民元(約9億7500万ドル)、2016年に韓国で1兆300億ウォン(約8億8400万ドル)、今年10月には台湾で234億台湾ドル(約7億7000万ドル)の罰金の支払いなどを命じられている。

 NXPの買収でも欧州連合(EU)の調査がなお続いており、判断待ちの状態。目標としていた年内の結論は難しく、2018年にずれ込む見通しだ。

 このBroadcomとQualcommの合併(しかもNXPも含む)となれば、より厳しい調査の対象となることは間違いない。

 そしてAppleとの関係。両社は今年はじめから激しい訴訟合戦を繰り広げている。AppleはQualcommの特許ライセンスのビジネスモデルが反競争的であるとして、中国や米国で提訴。これにQualcomm側が反訴して係争中だが、Apple側はその間、ロイヤルティの支払いを停止している。その影響などでQualcommの第4四半期(7~9月期)決算は純利益が1億6800万ドルと前年同期の1割程度まで落ち込んだ。

 Broadcomは、Qualcommの逆境を好機とみて買収を仕掛けたのだが、Wall Street Journalはこれを「危険な賭け」と言う。非常に多くの問題を解決しなければならないのだ。例えば、Appleとの和解を求めるなら、「ロイヤルティ率を大幅に下げるか、ライセンス事業を完全に廃止する必要がある」という。ライセンス収入は巨額の買収を完遂するための重要な収入源だ。