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AIの覇権を握るのは? 台頭する中国と警戒する米国

データ収集は政府のトップダウンで

 中国ではどのようなAIの研究が行われているのだろう。New York TimesはNg氏が所属していたBaiduの音声認識研究を紹介する。2016年10月、人間との比較に使われる単語の誤認識率でMicrosoftが人間と同レベルに達したとき、Ng氏は「われわれは中国語の認識では昨年(2015年)のうちに人間レベルに達している」とツイートした。中国政府はAIの研究で、そのBaiduと協力するラボを開設することを明らかにしている。

 New York Timesはまた、中国政府が、労働者のストライキやテロ攻撃を予測するシステムなどを開発していると伝えている。科学プロジェクトに資金援助する国家自然科学基金委員会は、監視カメラに容易に統合できる簡素化した顔認識ソフトウェアなどの研究に出資しているという。そして、政府のプロジェクトに詳しい人物が「中国政府は国をあげて、協調し推進する計画」と述べたとも記している。

 中国の強みは、こうした人材や、それを獲得できるマネーだけではない。欧米ではプライバシーなどの規制が障害となって、やりにくい研究も可能だ、とForbesは指摘する。Lee氏は「中国のトップダウン」が自動運転車の事故といった膨大で多様なデータの収集を瞬時に可能にすることで、いまは中国の「2年先を行っている」米国との差を縮めていけると、述べている。

 また、Lee氏は「中国側は英語圏で起こっていることを把握しているが、その逆はない」と、米国側が中国内の情勢に不案内であることも挙げた。