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AIの覇権を握るのは? 台頭する中国と警戒する米国

資金をカットする米国、投入する中国

 最近の中国のAIの存在感の高まりから、米中両国の動向にメディアが注目し始めている。Forbesは、ベンチャー投資家、Kai-Fu Lee氏による中国と米国のAI競争についての見解を伝えている。Lee氏は台湾で生まれ、カーネギーメロン大学など米国で教育を受け、Google中国のプレジデントを務めた。

 Lee氏はGoogle本社から中国に戻り、Baidu、Alibaba、Tencentの中国3大インターネット企業(頭文字をとって“B-A-T”と言われている)などの中国のインターネット企業が力をつけていることを実感。いまやAIでは米国と中国で“複占(duopoly)”になっているの持論を披露している。これらの企業は中国内市場を独占し、さらには東南アジアなどに拡大を図りつつあるという。

 Lee氏は「太平洋を挟んで(米中の)企業はAIアプリケーションの開発競争を繰り広げているが、そこで中国のスケールは決定的な強みになる」と考えているという。Microsoftが1998年以降、約5万人の中国の科学者をトレーニングしてきたことなどを挙げ、中国には世界のAI科学者の43%が集まっているというデータを指摘する。

 人材の集中は研究条件の良さの反映でもある。New York Timesは、ドイツの高等教育機関で自律ロボットの研究を終えた学生が、中国に渡って上海科技大学でラボを立ち上げることを選んだ話を紹介している。この学生によると、中国が提示した金額は欧州や米国の6倍だったという。学生は「アシスタント、技術者、そして博士課程学生で構成されるAIのラボを立ち上げることができる」「こんな条件でラボを始められるとは、他ではありえない」と語っているという。

 またNew York Timesは、中国政府がAIに大きな投資をしていると指摘。米トランプ政権が予算削減をしようとしている様と対比させる。今年5月、トランプ政権はAI研究を進めている米国立科学財団を含む複数の政府機関への予算を削減する案を提出している。

 中国政府の予算規模については数字が得られなかったようだが、多数の省や市レベルで資金を投じたロボット開発の取り組みが進んでいることは確かという。例として、湖南省湘潭市が20億ドルの投資、江蘇省蘇州市は80万ドル相当の奨励金、広東省深セン市が100万ドルの支援を約束したことを挙げている。