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AIの覇権を握るのは? 台頭する中国と警戒する米国

 AIや機械学習は、産業から世界を変えていくと期待されている。これをリードしてきたのは、IBM、Google、Amazon、Facebookなどの米国のハイテク企業だった。しかし、このところ中国の存在感が急速に増している、国家ベースでAIを推進する同国に、米国では一部で警戒感も生まれている。両国はAIでも覇権争いを繰り広げてゆくことになりそうだ。

専門家は中国AIの発展を予想

 「AIロボット(が人間の社会を乗っ取ること)を心配するのは、火星の人口増加を心配するようなものだ」「(AIは)一部は人間よりも優れているところがあるが、全ての問題を同時に解決できない」。6月初め、Wall Street Journalが香港で開催したAIに関するイベント「D.Live Asia」では、2人の専門家がAIと社会のかかわりについて、それぞれ意見を開陳した。

 この専門家は、Andrew Ng氏とTong Zhang氏だ。Ng氏はスタンフォード大で教鞭をとった後、GoogleでAI研究に携わり、Baidu(百度)に移って2017年春までチーフサイエンティストを務めた。Zhang氏は、Microsoftで音声認識を研究した後、SNSのTencent(騰訊)のAI Labで執行ディレクターを務めている。ともに中国系の世界的な研究者として知られている。

 そしてイベントの最後の質問。司会者が「AI技術の開発と実装という点では、米国とカナダが最も先行しているように見えるが、その強みと弱みは何か?」と尋ねた。

 これに対し、2人はそれぞれ、「米国は基本技術の発明に長けており、最新のAIも多くが米国からだ。だが中国には市場で展開するという点で強いエコシステムがある。恐ろしく迅速に動くことができる」(Ng氏)、「中国よりも米国の方がイノベーションが多いが、中国企業、中国の大学は量と質の両方で米国よりも革新的な研究をしようとしている」(Zhang氏)と答えた。この分野での中国の台頭を強く予想するものだ。