特別企画
バラクーダのバックアップアプライアンスが強いワケは?
(2014/3/7 06:00)
米Barracuda Networksが、中小規模市場(ミッドマーケット)に特化したアプライアンス製品を主力に、ビジネスを伸ばしている。
実際に、同社が長年主力としてきたセキュリティ製品では、ファイアウォールやコンテンツセキュリティアプライアンスおよび仮想アプライアンスの出荷数が、IDCの調査で14四半期連続のトップシェアを獲得しているほか、WAFアプライアンスでもトップシェアを獲得。また、ここ最近注力しているというバックアップ専用アプライアンスでも、2013年第2四半期の出荷台数シェアでナンバーワンとなった。
こうした同社のビジネスの好調さは、どこに原因があるのか。今回は、バラクーダ日本法人の林田直樹社長に話を聞くとともに、実際にバックアップアプライアンスを触ってみたので、その印象もあわせてお届けする。
セキュリティベンダーが提供するバックアップアプライアンス
そもそもミッドマーケット向けのバックアップ製品は、ソフトウェア製品で提供されるケースが多く、アプライアンスとして提供されているものはそれほど多くない。しかし、専任のIT担当要員を設けていることも少ないミッドマーケットの企業で、必要なソフトウェアとサーバーを購入して、サーバーへインストールし、初期設定を済ませて使い始めるまでには、それなりの労力と時間が必要になる。当然、ITの専任でない担当者は、その間、本来の自分の仕事ができず、結果として大きな負担がかかることになる。
これがアプライアンスであれば、届いてから数ステップでの利用が可能なのだ。同社では、クラウドを利用した統合管理環境を提供しているので、アプライアンスを管理するためのサーバーを、ユーザー自身が設置する必要もない。
バラクーダでは当初、こうしたアプライアンスでのメリットを、ファイアウォール、WAF、スパム対策などのセキュリティ製品で提供してきた。セキュリティ製品の場合、アプライアンス製品での提供は当たり前になりつつあるが、なぜ、バックアップ製品に注目し、アプライアンスとして提供するようになったのか。
筆者はかつて、米国本社のCEOであるウィリアム・ジェンキンス氏にこの質問をぶつけてみたが、その際には「バックアップとデータ保護という領域は、セキュリティソリューションとの親和性が高いからだ」という答えが返ってきた。
またジェンキンスCEOは、「セキュリティ企業がバックアップ製品を扱うのは、顧客に安心感を与えているのではないか」と分析しているが、実際に日本でも、そういた安心感が好影響を与えているのか、同社が強みを持つミッドマーケットを中心にビジネスが伸びており、対前年で70%増という好調な売り上げを継続しているという。
もちろんそれだけではなく、GUIをすべて日本語化しているほか、製品マニュアルも日本できちんと製作するなど、日本の顧客を意識したローカライズ作業を行っているのも、日本市場に力を入れている証拠で、それが好影響を与えていることはもちろんだろう。
また、ジェンキンスCEOがバックアップと親和性が高いとした、ビジネスとして先行しているセキュリティアプライアンスの顧客も、バックアップアプライアンスへの関心を示す場合が多いとのことで、そうしたユーザーが使いやすいよう、バラクーダでは各製品のGUIを統一している。ミッドマーケットでは、必ずしもITに長けた人が担当者であるとは限らないため、既存ユーザーであれば操作にとまどわなくていい、という点は大きなメリットだろう。
一方、機能面では、さほど特筆すべきことはないが、バラクーダの林田社長によれば、これは「最大公約数的な機能を、使いやすく、安価に提供する」という同社の考え方によるものだという。多くのユーザーが使うであろう機能に絞り込むことで、操作を複雑化させず、かつコストを上げずに提供する。これが徹底されていることで、同社が得意としているミッドマーケットの顧客に対して、大きなメリットを提供できるのだ。
とはいえ、注目される機能がまったくないわけではない。仮想化環境での利用が当たり前になっている現在では、インスタントリカバリ機能「Barracuda LiveBoot for VMware」は、大きな意味を持つ機能といえる。本番ストレージが障害を起こした場合でも、バックアップストレージからダイレクトに仮想マシンを起動できるため、業務を再開するまでの時間を大幅に短縮できるのだ。
また、「日本独自の取り組みとして、米国など、日本以外では有償で提供しているクラウドストレージを、最大1TBまで無償提供しているのも、ユーザーからは好評だ」(林田社長)という。データセンターについても国内にあるため、データを海外に出すことなく、バックアップデータの可用性をさらに高めることができる。
アプライアンスを試してみよう
では実際に、製品を見てみよう。アプライアンス自体はよくある1Uサイズのサーバー筐体で、特に珍しいものではない。
特筆すべきは、やはりソフトウェア、そしてクラウドの部分だ。前述したように、管理ツールはクラウド化されており、Webブラウザから利用する。このため、設置して登録作業を済ませれば、特にサーバー構築等は必要なく、管理ツールを使うことができる。
実際に、アプライアンスを設置してから使い始めるまでにはほとんど時間はかからなかったし、バックアップに関する設定も手間はかからなかった。これだけ手軽にできるのなら、ミッドマーケットの企業でも容易に導入が可能と思える。
今回は、PCのバックアップを簡単に試しただけなので、すべての機能を使ったわけではないが、設定項目は直感的で、かつ複雑な部分は多くないため、手軽にPCをバックアップしたいという用途から、仮想サーバーのバックアップを行いたいという企業まで、幅広く使っていけそうだという印象を感じた。
また機会があれば、仮想化サーバー関係について特に突っ込んで試してみたい。