ランキングで振り返る、エンタープライズ/クラウド業界動向(5~8月)
Enterprise Watch/クラウド Watchで今年一年間掲載した記事の中から、アクセス数をもとに月別の10大ニュースを選出して紹介する。個人ユーザーでも関心が持てる記事へのアクセスが高くなりがちではあるが、ランキングを通じて業界全体の動きを振り返ってみる。
今回は、5月から8月までのランキングを紹介する。
■【5月】国内ベンダーに復調の兆しか
5月の1位はNEC、4位は富士通の決算発表で、両社とも大幅に営業利益が改善しており、明るい兆しが見て取れる。また、クラウドへの注力もあらためて発表されており、特に富士通は1000億円を投資するとの、大きな発表を行っている。
8位には、Citrixが推進する仮想化サーバーの最新製品「XenServer 5.6」の発表を報じる記事が入った。無償版と従来の有償版の間に、エントリー向けの「Advanced Edition」が追加され、より使いやすくなっている。仮想化製品でもコストが重視されており、それを反映したものだろうか。
また、6位には米Symantecによる米VeriSignのセキュリティ事業買収がランクイン。DNS事業を除く全事業の買収で、SSL認証やPKIなどインターネットセキュリティの根幹となる技術の買収ということもあり、業界に衝撃が走った。
■【6月】Android、iPhoneを猛追
6月の1位はクラウドブック「dynabook AZ」。Androidを搭載した機器は、スマートフォン以外にタブレットやこのクラウドブックなどが登場しており、活用シーンがどんどん拡大している。オープン性を武器にiPhoneへの猛追も始まり、今後も目が離せない分野といえるだろう。
NVIDIAのGPGPUを利用した東工大のスパコン「TSUBAME 2.0」の着工を伝える記事が4位にランクインした。さきごろ発表されたTOP500ランキングで4位に入ったほか、Green 500ランキングでは2位を獲得するなど、その性能や省電力性に高い評価。2009年から始まった民主党による事業仕分けの話題も相まって、読者の関心を集めた。
9位には、ネットワンがSeaMicro製品の取り扱い開始の記事がランクイン。膨大なAtomを超スケールアウトさせる“尖った”製品が耳目を集めた。1つ1つの負荷が小さいが膨大な処理をさばくフロントエンドの領域に配置することで、Atomの低コスト・低消費電力によるTCO削減が成るのだという。
■【7月】iPhone/iPad向けのソリューション続々と
1位には、デルのOEM事業について説明した記事が入っている。意外なところだが、Googleやさまざまなクラウドベンダーにも採用されている同社ならではの取り組みが、読者の興味を引いたのだろうか。
今年はiPhone/iPadを利用したソリューションが間違いなくトレンドの1つ。iPhone/iPadからのモートアクセスを行えるソリューションをはじめ、次々と製品・サービスが発表された。2位、6位に入った7月に限らず、毎月、必ず上位に顔を出している。
営業支援ツールとして、顧客への説明資料をすべて端末に入れて持ち歩き、見積もりもその場で作成してしまうなど、用途もさまざまな方向に広がっている。魅力あるデバイスであるだけに、ビジネスでそれを活用したい、と思うのは自然な流れ。これからも、どんどん増えてくるだろう。
■【8月】セキュリティ/ストレージ業界再編へ
1位は、Adobe Readerに実装されたサンドボックスに関する記事。実はTrueTypeフォントの処理に関する“Highly critical”の脆弱性が見つかっており、12位に関連記事がランクインしている。そうしたタイミングでもあったため、同社のセキュリティの取り組みに注目が集まったとみられる。
3位には、米Intelによる米McAfeeの買収を報じた記事が入った。この月は大型買収に関係したニュースが数多く上位に入っており、米3PARをめぐる米Dellと米HPの綱引きを報じた記事も10位にランクイン。セキュリティとストレージ業界の再編が加速している。
6位にランクされた富士通の沼津ソフトウェア開発クラウドセンターの記事は、普段入れない場所を目にできるものだけに、注目を集めていた。また実際に、クラウドを活用することでのメリットを出している施設でもあり、クラウドの活用事例としても興味を引いたのではないか。