ランキングで振り返る、エンタープライズ/クラウド業界動向(5~8月)


 Enterprise Watch/クラウド Watchで今年一年間掲載した記事の中から、アクセス数をもとに月別の10大ニュースを選出して紹介する。個人ユーザーでも関心が持てる記事へのアクセスが高くなりがちではあるが、ランキングを通じて業界全体の動きを振り返ってみる。

 今回は、5月から8月までのランキングを紹介する。


【5月】国内ベンダーに復調の兆しか

 5月の1位はNEC、4位は富士通の決算発表で、両社とも大幅に営業利益が改善しており、明るい兆しが見て取れる。また、クラウドへの注力もあらためて発表されており、特に富士通は1000億円を投資するとの、大きな発表を行っている。

 8位には、Citrixが推進する仮想化サーバーの最新製品「XenServer 5.6」の発表を報じる記事が入った。無償版と従来の有償版の間に、エントリー向けの「Advanced Edition」が追加され、より使いやすくなっている。仮想化製品でもコストが重視されており、それを反映したものだろうか。

 また、6位には米Symantecによる米VeriSignのセキュリティ事業買収がランクイン。DNS事業を除く全事業の買収で、SSL認証やPKIなどインターネットセキュリティの根幹となる技術の買収ということもあり、業界に衝撃が走った。

順位記事名掲載日
1NECの2009年度連結決算、減収も利益は大幅改善で114億円の最終黒字5/13
2Windows 7ベースの最新組み込みOS「Windows Embedded Standard 7」5/7
3NTT Com、定額制のモバイルインターネット通信サービス-固定IPも利用可能5/28
4富士通、クラウド分野に1000億円の投資計画5/1
5日本HP、x86サーバーの新世代機「Generation 7」シリーズを発表5/20
6米Symantec、SSLやPKIなどVeriSignのセキュリティ事業を買収へ5/20
7レノボ、4万円台からのタワー型1Wayサーバー「ThinkServer TS200v」5/25
8米Citrix、「XenServer 5.6」発表~エントリー向け「Advanced Edition」追加5/14
9日立製「モジュール型データセンタ」に新技術、冷媒循環の動力を不要に5/7
10「人に喜びと満足、感動を与えていくことが役割」-富士通・山本社長5/13



【6月】Android、iPhoneを猛追

 6月の1位はクラウドブック「dynabook AZ」。Androidを搭載した機器は、スマートフォン以外にタブレットやこのクラウドブックなどが登場しており、活用シーンがどんどん拡大している。オープン性を武器にiPhoneへの猛追も始まり、今後も目が離せない分野といえるだろう。

 NVIDIAのGPGPUを利用した東工大のスパコン「TSUBAME 2.0」の着工を伝える記事が4位にランクインした。さきごろ発表されたTOP500ランキングで4位に入ったほか、Green 500ランキングでは2位を獲得するなど、その性能や省電力性に高い評価。2009年から始まった民主党による事業仕分けの話題も相まって、読者の関心を集めた。

 9位には、ネットワンがSeaMicro製品の取り扱い開始の記事がランクイン。膨大なAtomを超スケールアウトさせる“尖った”製品が耳目を集めた。1つ1つの負荷が小さいが膨大な処理をさばくフロントエンドの領域に配置することで、Atomの低コスト・低消費電力によるTCO削減が成るのだという。

順位記事名掲載日
1東芝、Android 2.1とTegraを搭載するクラウドブック「dynabook AZ」6/21
2自宅のPCをクラウドストレージに、フリービット「ServersMan@Desktop」6/10
3「Office 2010」一般向け製品が明日発売、「冴子先生」登場の店頭イベントも6/16
4元「Amazon EC2」開発統括者のベンチャー米Nimbula、クラウドOSを発表6/25
5東工大、最高性能2.4ペタフロップスを実現するグリーンスパコンを開発開始6/17
6クラウド型無料ウイルス対策ソフト「Panda Cloud Antivirus」が日本語対応6/4
7レノボ、Xeon 5600番台を2基搭載可能な省スペースワークステーション6/22
8スマートフォン内線化アプリ「uniConnect」にiPhone 4版が登場6/22
9512個のAtomを搭載したSeaMicro製サーバー、ネットワンが販売6/21
10マイクロソフト、6月の月例パッチは“緊急”3件を含む計10件6/4



【7月】iPhone/iPad向けのソリューション続々と

 1位には、デルのOEM事業について説明した記事が入っている。意外なところだが、Googleやさまざまなクラウドベンダーにも採用されている同社ならではの取り組みが、読者の興味を引いたのだろうか。

 今年はiPhone/iPadを利用したソリューションが間違いなくトレンドの1つ。iPhone/iPadからのモートアクセスを行えるソリューションをはじめ、次々と製品・サービスが発表された。2位、6位に入った7月に限らず、毎月、必ず上位に顔を出している。

 営業支援ツールとして、顧客への説明資料をすべて端末に入れて持ち歩き、見積もりもその場で作成してしまうなど、用途もさまざまな方向に広がっている。魅力あるデバイスであるだけに、ビジネスでそれを活用したい、と思うのは自然な流れ。これからも、どんどん増えてくるだろう。

順位記事名掲載日
1「Googleにもサーバーを提供中」、デルをOEMパートナーに選ぶメリットは?7/16
2Win/Mac/Linuxに対応~iPadをリモートアクセス端末にする無料アプリ7/16
3日本オラクル、迅速な障害対応を支援する高性能Java VMの最新版7/2
4NEC、2010年度第1四半期の連結決算は431億円の赤字~キャリアNW事業の不振やクラウド投資なども影響7/29
5東大・国立天文台グループ、世界一の電力効率をもつスパコン開発7/9
6iPadの大画面で社外からグループウェアを活用、「CACHATTO」新版7/23
7オープンソースの仮想化管理ツール「Karesansui」新版、サーバー監視やストレージプール機能に対応7/26
8「富士通ならではの垂直統合を強みにクラウドを推進」~山本正已社長が経営方針を説明7/12
9日本の平均接続速度は7.9Mbpsで世界3位、アカマイ調査7/22
10米IBMがFirefoxを全社員のデフォルトブラウザーに採用7/2



【8月】セキュリティ/ストレージ業界再編へ

 1位は、Adobe Readerに実装されたサンドボックスに関する記事。実はTrueTypeフォントの処理に関する“Highly critical”の脆弱性が見つかっており、12位に関連記事がランクインしている。そうしたタイミングでもあったため、同社のセキュリティの取り組みに注目が集まったとみられる。

 3位には、米Intelによる米McAfeeの買収を報じた記事が入った。この月は大型買収に関係したニュースが数多く上位に入っており、米3PARをめぐる米Dellと米HPの綱引きを報じた記事も10位にランクイン。セキュリティとストレージ業界の再編が加速している。

 6位にランクされた富士通の沼津ソフトウェア開発クラウドセンターの記事は、普段入れない場所を目にできるものだけに、注目を集めていた。また実際に、クラウドを活用することでのメリットを出している施設でもあり、クラウドの活用事例としても興味を引いたのではないか。

順位記事名掲載日
1アドビ、Adobe Readerに秋実装予定の「サンドボックス」機能を説明8/4
2MSが8月の月例パッチ14件を公開、MP3やSilverlightなどの脆弱性を修正8/11
3米Intelが米McAfeeを買収、買収総額は76億8000万ドル8/20
4バッファロー、ウイルスチェック機能付きNAS新製品8/5
5日本オラクル、クラウド環境でのJava仮想化を実現するミドルウェア製品8/10
6富士通、仮想化・標準化・自動化によるクラウド化を実現した「沼津ソフトウェア開発クラウドセンター」を公開8/27
7「クラウド」認知率は半数以下もサービスは7割以上が利用8/10
8ぷらっとホーム、DHCPやDNSの用途に絞った小型アプライアンス4モデル8/19
9富士通、LTO Ultrium 5対応のテープライブラリ3製品8/10
103PAR争奪戦が加熱、DellとHPが3PARへの買収提示額を引き上げ8/27
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(編集部)
2010/12/24 06:00