特集
富士通、ローカル5G実証環境「FUJITSUコラボレーションラボ」を公開
映像伝送、バーチャルストアなどさまざまなソリューションのデモを実施
2022年8月17日 06:00
富士通株式会社は9日、ローカル5Gビジネスへの取り組みについて、富士通新川崎テクノロジースクエアのローカル5G実証環境「FUJITSUコラボレーションラボ」にて、報道関係者向けに説明とデモを行った。
パートナー企業との共創活動によるローカル5Gを使った産業ソリューションが、すでに商用化されているものも含めて紹介された。特に、映像技術や画像認識技術と5Gを組み合わせた例が多く取り上げられた。
リアルとデジタルを5Gでつなぐ産業向けサービスを提供
富士通の取り組み全体については、富士通株式会社 ネットワーク&セキュリティサービス事業本部 5G Vertical Service事業部 事業部長 森大樹氏が説明した。
森氏は、未来のビジョンとして時間や場所にとらわれない「ボーダレス・ワールド」を掲げ、それを実現するためには、xR・メタバースやデジタルツインによる「リアルとデジタルの融合」と、それをつなげるネットワークである「ヒューマンセントリック・ネットワーク」が必要であると語った。
後者のネットワークの1つが5Gであり、「人間であれば神経網や血管に相当する」と森氏。そして、この2つのテクノロジーを基盤にVertical Service(業種別サービス)を提供していくとした。
その中で森氏は、富士通の“現在地”を紹介。「人のエンパワーメント」として、「未来の働き方」「尊厳ある生きかた」「つながりあう体験」の3つを挙げた。
「未来の働き方」の例としては、オフィスより現場のデジタル化として、住友商事・東急電鉄との「線路点検・ドアの閉扉」、西松建設との「建設機械の遠隔操作」、富士通社内工場の「遠隔コミュニケーション」、先端技術研究の「映像による高精度位置測位」を森氏は紹介した。
このうち最後の「映像による高精度位置測位」は、映像と5Gのエッジコンピューティング経由で、屋内でも高精度の位置測位を実現するものだ。この技術については、デモの模様をまじえて後述する。
「尊厳ある生きかた」の例としては、関西学院大学との「院内学級での遠隔教育」や、福岡県田川市との「パラスポーツのリモートコーチング」を森氏は紹介した。
「つながりあう体験」の例としては、ミクシイとの「臨場感ある映像配信」や、KDDIとの「新しいコミュニケーション体験」を森氏は紹介した。
このうち後者のKDDIとの取り組みは、xR技術のメタバースでリアル世界を融合するものだ。この技術についても、デモの模様をまじえて後述する。
コラボレーションによる産業向けローカル5Gソリューションを紹介
FUJITSUコラボレーションラボでのパートナー企業との共創活動の事例は、富士通株式会社 ネットワーク&セキュリティサービス事業本部 5G Vertical Service事業部 シニアディレクター 上野知行氏が紹介した。
ここでは、上野氏の説明に、FUJITSUコラボレーションラボでの説明やデモの模様もまじえて紹介する。
富士通は2020年10月より、「ローカル5Gパートナーシッププログラム」の正式活動を開始した。これには「接続検証プログラム」と「ソリューション共創プログラム」の2種類があり、後者では現在30社のパートナーと共創中だ。
その場がFUJITSUコラボレーションラボで、2020年3月に商用ローカル5G無線局免許を取得した際に開設した。2021年12月には、従来のエリアを「ラボ1」として、新たに「ラボ2」を増設した。ここに5G/ローカル5G、映像AI、エッジ&クラウドの技術者などが常時在籍している。
ミリ波NSA、Sub6 SA、キャリア5G、エッジコンピューティングを完備
ラボ内では、ローカル5Gが3システム動いている。ミリ波によるNSA(Non Stand Alone)と、Sub6波によるSA(Stand Alone)、そしてローカル5Gの設備をパッケージ化したスターターキットだ。
これに加えて、ドコモのキャリア5Gのアンテナも設置されている。
ラックには、5G SAのソフトウェア基地局や5G NSAのシステムに加えて、5G基地局の直近でアプリケーションを動かすエッジサーバーが動いている。
接続検証プログラムで確認済みの接続デバイスとして、モバイルルータや、ノートPC、AIカメラ、スマートフォン、USBドングルが挙げられており、ラボにも置かれている。このほかに検証中のものもあるという。
QRコードも読める4K高精細映像の伝送
活動事例の1つめは、まず富士通による映像伝送技術×ローカル5Gだ。初期からの取り組みで、高精細な4K映像を現場からローカル5Gで超低遅延で伝送するというもの。
デモでは、十数メートル離れたところに置かれた段ボール箱を4Kカメラで撮影し、高精細映像を5Gモバイルルータで送り、QRコードも処理可能な精細さで見えるところが示された。
4K高精細映像から人を検出して密を検知
2つめの活動事例は、この4K高精細映像にAIを組み合わせた、Acuity社との映像AI技術×ローカル5Gだ。
デモでは、広角カメラの映像をリアルタイムで分析し、人物を検出して、密になっているかどうかを色を示した。
分析結果をAzure IoT EdgeとCOLMINAでリアルタイム可視化
3つめの活動事例は、こうしたデータをクラウドに送って可視化する、日本マイクロソフトとのエッジ&クラウド×ローカル5Gだ。これはすでに商用サービス化しているという。
デモでは、上で紹介した画像分析のデータをAzure IoT Edgeに送り、富士通のCOLMINAのダッシュボードで分析や可視化するところを見せた。
SIMでプログラムを動かして不正な端末への付けかえを防止
4つめの活動事例は、企業で用意したローカル5G SIMが不正な端末に付け替えられないようにする、トレンドマイクロとのセキュリティ×ローカル5G。
これは、特別なSIMカードの中でJavaアプレットが動作するようになっている。これにより、端末のIDであるIMEIと、SIMのIDであるIMSIを照合し、不正な組み合わせであればアラートや遮断などを行う。
映像測位によりミリ単位の位置を把握、フォークリフトの自動制御にも応用
5つめの活用事例は、映像技術によりミリ単位の位置測定を実現するAcuity社のAIセンシング×富士通の映像測位技術×ローカル5Gだ。
デモは2種類行われた。1つめは、机上に置かれたARマーカーを頭上の高精細カメラで写して、ミリ単位の位置を表示するもの。もう1つのデモはその応用例で、AGV(無人搬送車、ここではフォークリフト)の上にARマーカーを付けて頭上のカメラから認識し、映像測位技術により制御するものだ。通常のAGFでは床に張った磁気テープに沿って動くだけだが、この技術により任意の場所に動けるという。
デモでは、AGVが机のところまで進んで、積んだ箱をほぼ同じ幅の机の上に置くところをデモした。さらに、同じカメラで人間の位置も認識し、人が近づくと止まるところも見せた。
リアル店舗での動きが同期するバーチャルストア、スマートフォンやVRでのリモート入店も
6つめの活用事例は、KDDIとの、リアルとバーチャルを融合したB2B2Xサービスだ。
デモでは、5Gを活用したメタバース空間でのバーチャルストアが紹介された。
実店舗にいる人が、映像分析の技術により、実店舗に一対一対応するバーチャルな店舗にも、そのままアバターがリアルタイムで表示される。また、リモートからアクセスする人は、バーチャルな店舗にアバターのみで入門できる。
リモートからアクセスする人も、スマートフォンアプリから店内を散策したり、商品の情報を表示したり、購入したりできる。また、リアル店舗にいる人とリモートにいる人がスマートフォンアプリで会話できるため、例えばリモートではわからない香りなどを聞いたりできるという。
スマートフォンアプリのほか、VRゴーグルにも対応しており、商品を手にとって見ることなども可能だ。