特集
シスコ、企業のハイブリッドワークを支える製品群を紹介 Wi-Fi 6E/ローカル5G対応のネットワーク機器など
2022年3月30日 06:00
シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)は29日、企業のハイブリッドワークを支える同社の製品群に関する記者説明会を解説した。
Wi-Fi 6E対応とローカル5G対応のネットワーク製品を中心に、それを支えるネットワークスイッチや管理製品など、最新のトータルソリューションが紹介された。
シスコシステムズ合同会社 代表執行役員社長の中川いち朗氏は、「ウィズコロナ/ポストコロナの時代にはハイブリッドワークが定着する」として、ネットワークインフラを含めて包括的に環境を準備する必要があると語った。
そして、そのために必要になる3つの要件として、「安全安心なアクセス」「柔軟なコラボレーション」「すべてを可視化」の3つを挙げ、「それを実現できるのが、Ciscoによる変化に即応できるプラットフォームだ」と主張した。
Wi-Fi 6E対応アクセスポイントやスイッチの新製品
Wi-Fi 6E対応などのCiscoのネットワーク製品については、シスコシステムズ合同会社 執行役員 エンタープライズネットワーキング事業担当の眞﨑浩一氏が解説した。
まず眞﨑氏はCiscoの調査結果から、ハイブリッドワークの時代にオフィスネットワークに起きていることとして、ビデオ会議アプリのパフォーマンス問題の調査回数が3,652%増加したこと(2019年から2021年)や、出社が減っても拠点トラフィックはむしろ29%増加したこと(2019年から2021年)を紹介した。
出社が減っているのに拠点トラフィックが増加している理由として、オフィスでもビデオ会議が中心になっていることを眞﨑氏は挙げた。
それにより、アクセスポイントではセッション数増大による遅延やエラーが増える。それを受けるネットワークスイッチも渋滞によりボトルネックになる。ルータも、張りっぱなしのセッション数が増大することにより通信エラーが起きる。
この問題に対して、Wi-Fi 6E対応を中心に、無線アクセスポイントから、スイッチ、管理プラットフォームまで、Ciscoが最近発表したソリューションを紹介した。
まずはWi-Fi 6E対応アクセスポイントのCisco Catalyst 9136およびCisco Meraki MR57だ。両製品とも販売開始済み。
特徴はいくつかあるが、「まず爆速になる」と眞﨑氏。レイテンシの低減や、6GHzも含む3バンド化、それによるチャンネルの混雑緩和などがある。「日本では、6GHz帯の認可が年内に終わると予定される。そのため国内では、製品は先に販売して、ソフトウェアアップデートで対応できるようにする」(眞﨑氏)。
さらにCiscoでは、CleanAir Pro技術により、機械学習を使って電波の干渉を低減する。
そのアクセスを支えるスイッチがCisco Catalyst 9000Xシリーズだ。いずれも2022年3月発売開始。
ディストリビューションスイッチのCatalyst 9300Xは、Wi-Fi 6Eの消費電力に耐える90WのPoE給電(IEEE802.3bt)を備え、100Gbbpsのアップリンクに対応する。
より大きなオフィスや工場など向けのモジュラー型ディストリビューションスイッチのCatalyst 9400Xは、最大384のマルチギガイーサネットを収容する。
コアスイッチのCatalyst 9500X/9600Xは、これまでウェブスケールやサービスプロバイダー向けの製品でのみ導入されていたCisco Silicon One(Q200)ASICを搭載する。400Gbpsのアップリンクに対応する。
これらの新製品にあわせて、プラットフォーム製品もWi-Fi 6Eなどを支える。まず認証のCisco ISE(Identity Service Engine)では、有線とWi-Fiに加え、ローカル5Gの認証も一貫したポリシーで行えるようになる。さらに、Cisco MerakiやCisco DNA Center、Cisco DNA Spacesといったクラウドサービスも進化する。
例えばDNA Spacesは、3Dマップで電波の強弱を可視化する。Wi-Fi 6E 6GHz帯にも対応。今年後半にはすべて日本語化される予定だという。
眞﨑氏は環境対応についても説明した。アクセスポイントに環境センサーを搭載し、DNA Spacesでそれをマッピングして可視化できる。またスイッチバックボーンにおいては、Silicon One搭載やPoEの進化により、20%以上の節電が可能になると眞﨑氏は語った。
ローカル5Gのマネージドサービス「Cisco Private 5G」
こうしたソリューションに加えたローカル5Gソリューションについては、シスコシステムズ合同会社 執行役員 サービスプロバイダー アーキテクチャ事業担当の高橋敦氏が解説した。
Ciscoでは、ローカル5Gのマネージドサービス「Cisco Private 5G」を2月に発表した。高橋氏は、5G、Wi-Fi、有線でシームレスな体験を提供するとして、特にCisco Private 5Gでは「ローカル5Gの煩雑さや複雑さ、高コストという問題を解決」すると説明した。
Cisco Private 5Gは、クラウドベースのAs a Serviceモデルとなっている。Open RAN無線機から、パケットコア、アイデンティティやポリシー、一貫した管理まで、フルスタックを提供する。
高橋氏はCisco Private 5Gの特長として「企業ネットワークとの統合」「As a Service モデルの提供」「実績のあるテクノロジー」を挙げ、「この3点を高いレベルで同時に実現できるのはCiscoだけ」と主張した。
企業ネットワークとの統合としては、眞﨑氏も挙げたポートフォリオで、Wi-Fiアクセスポイントと同じ場所にCisco Private 5Gを位置づける。「Wi-Fiと5Gは、競合ではなく補完するものと考える」と高橋氏。また、Cisco ISEでポリシーとID管理もWi-Fiや有線と一括で行える。「将来的には、DNA CenterやMeraki Cloud、DNA Spacesとの統合も予定している」(高橋氏)。
As a Serviceモデルで提供する理由としては、スモールスタートが可能になる「シンプルな展開」、自動的にすべて最新になりダッシュボードにアクセスするだけで直感的に利用可能になる「直感的な運用」、Cisco Validated Designによる高可能性などの「高い信頼性」の3つを高橋氏は挙げた。
実績のあるテクノロジーとしては、エンタープライズでの実績に加え、通信キャリアでの実績を高橋氏は挙げた。さらに、Jasper Technologies社の買収によって加わったIoT管理プラットフォームについても触れた。
そのほか、統合ダッシュボードも紹介し、一元的に直感的に管理できることを高橋氏は説明した。SIM単位の情報や、デバイスごとの異常チェック、拠点ごとの情報などにより、「複雑・煩雑といわれるローカル5Gの管理情報を一元的で直感的にする」と氏は語った。