特別企画
新型コロナ対策は「長期化」へ~テレワーク無料支援策、政府の助成動向を探る【2020年5月版】
2020年5月20日 06:00
2020年1月、中国・武漢に端を発する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が国内で取りざたされるようになってから、約4カ月が経過した。感染者の国際的急増に伴い、その情勢は目まぐるしく動いている。あれほど国内で議論された「一斉休校」「オリンピック延期」が、もはや遠い過去に思えてくるほどだ。
本稿をしている5月上旬の段階でも、新型コロナ問題が衰える気配はない。当初5月6日までと見込まれていた緊急事態宣言は5月31日まで延長。東京都を中心に店舗への営業自粛要請も継続中だ。なにより決定的な治療法やワクチンも見つかっておらず、専門家からは「1年以上に渡る長期的な対応が不可避」との発言も漏れ聞こえてくる。
そこで今回は「コロナ問題の長期化」の観点から、主にITベンダーの最新動向をまとめた。また4月下旬から一気に動き出した政府・地方自治体の助成制度にも迫る。
ベンダーの無料対応は次のステップへ
国内でコロナ問題が特に深刻な様相を呈してきたのは2月ごろ。以降、大小のITベンダーが相次いでテレワーク対応の無料支援策を打ち出してきた。その多くは4~5月末をメドとする期間限定のものだったが、長期化を受けて期日を延長したり、あるいは新サービスを打ち出すケースが出てきている。具体的にみていこう。
Google Meet
https://meet.google.com/
https://japan.googleblog.com/2020/04/bringing-google-meet-to-more-people.html
コロナ対応が優先される社会情勢下において、テレワークの重要性は日ごとに高まっている。Googleは各種ビジネスツールのセット「G Suite」を原則有償で提供してきたが、ここに大なたを入れた。テレビ会議機能を「Google Meet」として独立させて無償化。誰でも利用できるようにした(9月30日までは時間制限なし)。また、G Suite有償利用者向けには、より高度なテレビ会議機能(最大250人まで同時参加など)の提供を9月30日まで追加料金なしで開放する制度を継続中。
Zoom COVID-19感染拡大におけるサポート
https://zoom.us/docs/jp-jp/covid19.html
テレビ会議ツールの代名詞的なポジションすら獲得しているのが「Zoom」だ。コロナ禍でのユーザー急増を受け、ずさんなセキュリティ仕様が問題視されていたが、ソフトウェア更新を連続的に実施、対処を進めている。無料ユーザーでも最大100人参加のテレビ会議を40分まで行えるが、さらに教育機関では一部制限が緩和される。
Cisco Webex
https://www.webex.com/ja/
https://help.webex.com/ja-jp/n80v1rcb/Cisco-Webex-Available-Free-in-These-Countries-and-Regions-COVID-19-Response
米Ciscoのテレビ会議サービス。Zoomと比べ、無料プランでもいち会議あたりの時間制限が緩い点が魅力だ。やはりコロナ対応の一環で、無料プランの有償版変換を受け付けている。
Facebook、離れていてもつながりを保つための新機能「Messengerルーム」を発表
https://about.fb.com/ja/news/2020/04/messenger-rooms/
Facebookが4月27日発表したばかりの新機能。数週間をかけ、米国以外の地域でも機能を解放していく予定という。パーソナルな用途を想定しているとみられるが、Facebook アカウントを持っていないユーザーも招待できるなど、業務目的での利用にも耐えそうだ。
LINEグループにおける新型コロナウイルス感染症に関する取り組みと業務における対応方針について
https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2020/3089
LINEでは、これまでもグループビデオ通話機能を提供していたが、3月16日より「画面シェア」機能を追加。ある参加者のPC画面をほかの参加者に見せる(共有する)ことが可能になった。また、健康相談の無償対応など、広範におよぶ各種施策をこちらのページでまとめているので参考にしてみよう。
マイクロソフト、COVID-19へ対応するために
https://news.microsoft.com/ja-jp/features/covid-19-response/
マイクロソフトによるCOVID-19対応をまとめたWebサイト。日本でも、テレワークに関する無料相談窓口を開設している。また、ビジネスチャットツール「Teams」が利用できる「Microsoft 365 Business Basic」プランを新規で年間契約すると、6カ月分が無料になるキャンペーンを6月30日まで実施中。
レノボ、「中小規模企業支援プログラム」を展開。ノートPC無料貸し出しは一旦締切
https://www.lenovo.com/jp/ja/lenovopro/smb-support/
PC大手のレノボが4月13日に発表したプログラム。項目がいくつかある中で、1社あたり最大5台を上限に、最長3カ月間、ノートPCを無料で貸し出す。ただし4月末の時点で「一旦締切」とされている。
アドビ、電子署名の「Adobe Sign」の無料体験が90日間に。Acrobatの共同編集機能は無料化
https://www.adobe.com/jp/news-room/news/202004/20200409_adobe-work-smarter-with-free-dc-tool.html
NTT東日本とIPA、登録不要の「シン・テレワークシステム」を緊急開発、10月31日まで無償開放
https://business.ntt-east.co.jp/service/thintelework-system/
NTT東日本、テレワーク相談窓口を開設
シヤチハタ、電子印鑑サービス「パソコン決裁Cloud」を6月30日まで無料に
日立ソリューションズ、テレワーク導入・運用支援サービスを90日間無償提供
https://www.hitachi-solutions.co.jp/company/press/news/2020/0423.html
AWS、「Amazon WorkSpaces」「Amazon WorkDocs」を6月30日まで無償化。新規顧客向け
TableCheck、飲食店向け予約プラットフォームが「テイクアウト」に対応。期間限定で費用軽減措置
https://corp.tablecheck.com/press/covid-19-takeout-delivery-voucher/
アジャイルウェア、プロジェクト管理ツール「Lychee Redmine」で新プラン追加。10名以下のチーム利用が無料
Zoho、リモートワーク向けソリューション「Remotely」を7月1日まで無償提供
ソフトイーサ、「Desktop VPN」の無償提供を2カ月延長して6月末までに
ソニービズネットワークス、クラウド勤怠管理「AKASHI」の無償提供を7月末までに延長
ブイキューブ、“オンライン営業”のためのサービス「V-CUBE セールスプラス」を5月末まで無料提供
ビジネスチャット「LINC Biz」、5月末まではフリープランでの最大接続数を10拠点に拡張
ドコモ・システムズ、Web会議システム「sMeeting」の無償提供を延長。最大60日無料
エックスサーバー、リモートワーク向けクラウドストレージ導入支援プランの無償提供を9月まで延長。受付締め切りは6月30日
クラウドサイン、医療機関向けに電子契約サービスを9月30日まで無償提供
ワークスモバイルジャパン、47都道府県すべての医療機関を対象に9月末まで「LINE WORKS」無償提供
テレワーク普及促進団体の「Empowered JAPAN」、オンラインセミナーを連日開催。バックナンバー公開も
テレビ会議や遠隔授業の増加でどうなる? 固定回線
新型コロナウイルスによる将来への影響を予測するのは難しいが、少なくとも「インターネット回線」に対する考えが、個人・企業の間で変容していくのではないだろうか。外出自粛期間の再延長・再実施の事態ともなれば、親世代はテレワーク、子供たちも遠隔授業へのニーズがさらに高まる。自宅のテレビで動画配信サービスを楽しむ等、“巣ごもり”の在り方も変わっている。こうした中、個人のスマホ1台ですべての通信を賄うのは難しい。
自宅のWi-Fi環境を整えるとして、そこでキーになるのが光ファイバーによる固定回線だろう。もちろん本格普及のためには、会社側がテレワーク手当として回線費用の一部を負担する必要はあろうが、家庭生活を充実させるため、個人単位で導入を検討するのも良さそうだ。代表的なサービスをリストアップした。なお、回線導入にあたっては工事費・毎月のオプション料金などについてもご留意を。
NTT東日本 フレッツ
https://flets.com/
NTT東日本が展開するインターネット回線サービスの公式サイト。近年は、いわゆる「光コラボ」型販売モデルを展開。特に個人向けサービスについてはNTT自身は黒子にまわり、「ドコモ光」など提携する事業者が消費者との契約を担うケースが増えている。この4月から、従来サービスとの比較で約10倍の高速化を果たした「フレッツ光クロス」を一部地域でスタートさせた。
NTT西日本 フレッツ
https://flets-w.com/
NTT西日本でもやはり4月から通信速度最大10Gbpsの「フレッツ光クロス」がサービスを開始した。なおNTT東西どちらの「フレッツ光クロス」とも基本料金は6300円。このほかにルーターレンタル料やプロバイダー料金が必要。
au インターネット回線
https://www.au.com/internet/
auでは独自網による光ファイバー回線型接続サービスを展開中。首都圏を中心とした一部エリアで最大通信速度10Gbpsもしくは5Gbpsのプランを提供している。3年契約時の月額料金は5600円から。
SoftBank 光
https://www.softbank.jp/ybb/sbhikari/
ソフトバンクの光ファイバー回線サービスは、NTTの「光コラボ」がベース。ただしソフトバンク携帯電話とのセット契約者向けに割引特典を用意している。一戸建て住宅向けの定額プラン(2年契約)は月額5200円から。
nuro光
https://www.nuro.jp/hikari/
ソニー系のプロバイダーが運営。提供エリアは北海道・関東・東海・関西・九州などに限られる。通信速度2Gbpsの「NURO 光 G2 V プラン」(2年契約)は月額4743円。
eo光
https://eonet.jp/
関西電力グループのオプテージが、主に近畿(きんき)圏で運営する。これまでの最大通信速度1Gbpsはもちろん、同5Gbps・10Gbpsのプランが一部地域で提供をはじめている。
J:COM
https://www.jcom.co.jp/
北海道・東北・関東・関西・九州など広域展開するCATV会社。KDDIが株主となっている関係上、au携帯電話との同時契約で割引される特典がある。5Gbps・10Gbpsの高速回線も一戸建て住宅向けに提供中。
アルテリア・ネットワークス マンション向けインターネットサービス
https://www.arteria-net.com/mansion/
マンション向けに全戸一括型のインターネット接続サービスを提供する。旧来のマンションの多くは、構内配線に電話回線を用いるVDSL方式が多かったが、インターネット利用増の声を受けて、光ファイバーやLAN回線を用いる例も増えているようだ。刷新には理事会での協議等も必要なようだが、このあたりもテレワーク増加で情勢が変わっていくかもしれない。
テレワークの通信費はどうなる?気になる労務制度や費用負担(Concur)
https://www.concur.co.jp/newsroom/article/telework-roumu-hiyou
ビジネスソフト大手・SAPのグループ企業が手がける経費管理クラウド「Concur」。お役立ち記事の一片として、テレワークに関する労務管理や費用分担について指南している。こちらによれば、テレワーク用情報通信機器は会社負担での支給が多い一方、通信回線費は個人用・仕事用の切り分けが難しいことから、手当等で対応する例が見られるとのこと。
コロナ対策で利用できる助成制度
この4月以降、大きな動きを見せているのが政府・地方自治体による助成制度だ。厚生労働省によるテレワーク助成をはじめ、営業自粛に伴う協力金、さらには新規でテイクアウトをはじめたい飲食店向けの補助制度などもお目見えしている。
働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisikitelework.html
厚生労働省による制度。こちらはコロナ対策関連のテレワーク助成だが、通常版のテレワーク助成も別途存在する。コロナ対策版については、4月28日付けで対象が拡大。受け入れている派遣労働者のテレワーク導入も助成されるようになった。上限は1社あたり最大100万円で、補助率は2分の1まで。申請締め切りは5月29日。
東京都 事業継続緊急対策(テレワーク)助成金
https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/joseikin/kinkyutaisaku.html
都内に本社および事業所を置く中小企業が対象。テレワークに必要な機材の購入費、業務委託料などが補助される。助成額は最大250万円、助成率は10分の10。申請受付期限は6月1日まで延長された。
IT導入補助金2020
https://www.it-hojo.jp/
中小企業基盤整備機構による制度。コロナ対応とは直接関係ないものの、ITツール導入費用の最大2分の1、450万円までが補助される。公募分のうち「通常枠(A・B類型)」については5月11日から交付申請を受け付ける。締め切りは12月下旬を予定。
東京都 テイクアウト・宅配等を始める方への支援
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/04/22/12.html
外出自粛要請などの影響で、新たにテイクアウト・宅配・移動販売などをはじめたいという都内飲食店向けに、車両費や販促費を最大100万円、助成率5分の4まで補助する。第1回受付期限は5月18日で終了しているが、その後も順次受付し、最終的に11月25日まで実施予定という。
ひろしま産業振興機構 テイクアウト・デリバリー参入促進事業開始のお知らせ
https://www.hiwave.or.jp/news/21668/
こちらは広島県内の中小飲食店・宿泊業者向け。4月1日以降、新たにテイクアウト事業をはじめた場合、販促費、車両リース料、梱包資材、店内内装工事などに限って経費を補助する。助成限度は30万円で、助成率は10分の10。受付は7月31日まで。
持続化給付金
https://www.meti.go.jp/covid-19/jizokuka-kyufukin.html
ニュースでも連日話題となった、中小企業および個人事業主向けの給付金制度。コロナウイルス感染症の影響により、単月の売上が前年同月比で50%以上減少した場合、その減少分を12倍(1年分)して給付する。上限は法人が200万円、個人事業主が100万円。なお申請期限は2021年1月15日まで。
東京都感染拡大防止協力金
https://www.tokyo-kyugyo.com/
営業自粛要請を受けた飲食店などに対し、東京都が独自に給付することを発表した協力員制度。1件あたり50万円(2事業所以上で休業する場合は100万円)を払う。申請受付は6月15日までと、やや期間が短い点に注意しよう。一方、自粛要請期間が当初の5月6日から31日まで延長されたことをうけ、協力金の扱いについてあらためて告知をするとしている。
大阪府 「休業要請支援金(府・市町村共同支援金)」について
http://www.pref.osaka.lg.jp/keieishien/kyugyoshienkin/
自粛要請を受け入れた店舗への補償は、原則として都道府県単位で行われている。こちらは大阪府のケース。府内に事業所があり、売上が前年比50%以下の減少、かつ4月21日から5月6日までの全期間で休業したことなどを条件に50~100万円を支払う。申請期限は5月31日。
マネーフォワード 新型コロナウイルス支援情報まとめ
https://covid19.moneyforward.com/
クラウド会計ソフトで知られるマネーフォワードが運営。地域・対象によってそれぞれバラバラになりがちな助成情報を集約し、わかりやすく掲載している。3月31日の立ち上げ時点では企業向けだったが、4月17日からは個人向け情報も追加された。