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開発者がコーディングだけに集中できる環境を~日本IBMの次世代PaaS「BlueMix」

日本IBM 専務執行役員 ソフトウェア事業本部長 ヴィヴェック・マハジャン氏

 日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)は23日、同社が現在ベータ版として提供している次世代クラウドプラットフォーム、「BlueMix」に関する報道関係者向け説明会を実施した。日本IBM 専務執行役員 ソフトウェア事業本部長 ヴィヴェック・マハジャン氏は「モバイルやソーシャル、アナリティクスといった新しいアプローチを基盤とした“Systems of Engagement”と、ERPやCRM、RDBMSといった既存の蓄積されたデータを基盤とした“Systems of Record”、この異なる2つの分野で稼働するアプリケーションを組み合わせて、クラウド上で新たなビジネスインパクトをもたらすことがIBMのクラウド戦略。われわれはこれを変化し続けるビジネスに適応する“Dynamic Cloud”と呼んでおり、BlueMixはその実現のためのコンポーザブルな開発環境」と説明。SoftLayerを中心としたIBMのクラウドプラットフォームにおける“開発環境としてのBlueMix”を強調する。

 BlueMixは、今年2月に米国ラスベガスで行われた「IBM Pulse 2014」において発表された、IBMが開発を進める次世代PaaS環境のコードネーム。IBMのIaaS基盤であるSoftLayerの上に、Cloud Foundryなどのオープンスタンダード技術をベースにしてPaaSを構築し、ユーザーインターフェイスや外部ソフトウェア/ソーシャルサービスとの連携機能を追加している。現在はベータ版としてサイトが公開中で、期間限定で無料トライアルが利用できる。

BlueMixはClooud Foundryなどオープンソース技術をベースにしたPaaS基盤。モバイルやソーシャル、DevOpsに特化している点が特徴
IBMのクラウドは新旧のデータ基盤に対するアプローチを組み合わせるスタイルだが、PaaSではSystems of Engagementのアプリケーション開発が重要になってくる

 日本IBM ソフトウェア事業本部 クラウド・SaaSビジネス開発担当の高橋正子氏は、BlueMixの特徴を「顧客へのパーソナライズを深めるアプリケーションの開発を促進するプラットフォーム」と表現する。顧客へのパーソナライズとは、マハジャン氏が先に挙げた“Systems of Engagement”、つまりソーシャルやモバイル、データアナリティクスといったサービスと深くひも付いており、しかもリアルタイムでこれらのサービスにアクセスしたいというニーズは日に日に強くなってきている。

 こうしたSystems of Recordに対する市場のニーズに応じたアプリケーションを迅速に開発するには「幅広いサービスのラインアップをそろえ、開発者がミドルウェアなどを気にすることなくコーディングだけに集中できる、DevOpsな統合開発環境が必要」(高橋氏)であり、BlueMixはそのすべてをそろえているPaaSであると強調する。

日本IBM ソフトウェア事業本部 クラウド・SaaSビジネス開発担当の高橋正子氏
BlueMixの対象ユーザーはアプリケーション開発者。したがって、開発者にいかに快適な環境を提供できるかが問われることになる

 現時点でBlueMixが提供するサービスのラインアップは以下のとおり(カッコ内は、cr→IBM提供、ce→パートナー提供、co→コミュニティ提供をそれぞれ表す)。

・実行環境:「Liberty for Java(cr)」「Node.js(cr)」「Ruby on Rails(co)」「Ruby Sinatra(co)」
・DevOps:「JuzzHub DevOps(cr)」「Log Analysis(cr)」
・データマネジメントサービス――「IBM Rational Database(cr)」「IBM JSON Database(cr)」「MongoDB(co)」「MySQL(co)」「PostgreSQL(co)」「Mobile Data(cr)」「Mobile Sync(cr)」「BLU Data Warehouse(cr)」「MapReduce(cr)」
・モバイルサービス:「Push(cr)」「CloudCode(cr)」「Mobile App Mgmt(cr)」「Mobile Quality Assurance(cr)」「Twillo(ce)」「Geocoding(ce)」
・Webアプリケーション関連:「Data Cache(cr)」「Session Cache(cr)」「Elastic MQ(cr)」「Decision(cr)」「Cloud Integration(cr)」「SSO(cr)」「Redis(co)」「RabbitMQ(co)」

 説明会では、これらのサービスを互いに連携させ、簡単なアプリケーションをBlueMix上で構築するデモが行われた。Javaの実行環境にMongoDBをバインドし、簡単な通知アプリケーションを作るというもので、実際に数分もかからずにアプリケーション構築が可能であることを見せている。

BlueMixでのアプリケーション開発はテンプレートで簡単に開始することが可能
BlueMixのデモ画面。Javaの実行環境とMongoDBを連携させている。数回の入力とクリックでバインドがおわる
BlueMixのデモ画面。Liberty for Javaを使い、コーディングを実施しているところ

 BlueMixでサポートされているサービスのラインアップを見ると、モバイルおよびソーシャル関連に強くフォーカスしていることがわかる。IBM純正の開発環境だけでなく、人気の高いオープンソースを数多くそろえているところからも、Amazon Web Services(AWS)やHerokuといった競合プラットフォーム上で開発を行っているベンチャー/スタートアップにもアプローチしたい、というIBMの姿勢が見えてくる。今後はGitHubなどとの連携も予定されているという。

 クラウドで動くアプリケーションはクラウド上で開発する、いま生まれたばかりのデータをリアルタイムに分析し、その結果はクラウドに集約されたのち、モバイルへと表示される、データもアプリケーションもクラウドで生まれ、クラウドへと消えていく――。そんな開発のエコシステムが存在感をもちはじめたのはここ1、2年の出来事だ。

 だが、DevOpsやImmutable Infrastructure(不変のインフラ)というキーワードに代表されるように、開発者がインフラを気にかける必要性がなくなる時代は確実に訪れようとしている。エンタープライズ企業を顧客に多く抱えるIBMだが、スタートアップを中心としたこのオフプレミスとも言えるトレンドが、アプリケーション開発の大きなトレンドとなることは同社も確実視しているようだ。

 2013年のSoftLayer買収でIaaS事業に本気を見せたIBMだが、今回発表されたPaaSのBlueMixはベータ版というステータスも手伝って、ユーザーや競合から見ればまだ出遅れ感が否めない。だがマハジャン氏は「IBMクラウドの最大の強みは真のオープン性にある。どのITベンダもわれこそがオープンとうたっているが、その言葉が真実かどうか、それはあなた方が判断してほしい」と断言する。

 「IBMはすべてのソフトウェアをクラウドで動かすことを目指している。パブリックもプライベートも関係なく、決してブラックボックスになることはないクラウドだ。競合のクラウドとは明らかに異なる」と自信を隠さないマハジャン氏の言葉通り、BlueMixは開発者を引きつける真の意味での次世代PaaSになりえるのか。その成否はIBM自身がDevOpsでアジャイルなアプローチをBlueMixに対して実施できるかにかかっているのかもしれない。

五味 明子