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XtremIOの強みはスケールアウトとインライン&インメモリ、コピーデータ管理~EMCジャパン
(2016/2/16 06:00)
EMCジャパン株式会社(EMC)は15日、オールフラッシュストレージ製品「XtremIO」に関する記者説明会を開催し、競合他社製品に対する優位性を主張した。
利用企業として株式会社IDCフロンティアも登場し、「IDCFクラウド」のサービスにXtremIOを導入した状況と、そのための検証データなどを紹介した。
「コントローラをボトルネックにしない」スケールアウト構成
まずオールフラッシュストレージの市場として、アジアで72%の企業がオーフルラッシュストレージを使っている、あるいは1年以内に予定があるとするIDCの調査を、EMC XtremIO事業部 シニア システムズ エンジニアの市川基夫氏は紹介した。また、同じくIDCの調査から、オールフラッシュストレージ市場において、EMCがワールドワイドで39%、日本で28%と、それぞれ最大シェアを持つとした。
市川氏はXtremIOの特徴として、複数のXブリック(X-Brick)でクラスタを構成する「スケールアウト」、利用率が増えても性能が劣化しない「安定した性能」、すべてのI/Oに対してデータ削減を実行する「インライン(書き込む前に処理)&インメモリ」、アプリケーションごとのデータベースのコピーを管理する「コピーデータ管理」を挙げた。
まずスケールアウト構成だ。XtremIOは、25本のSSDと2つのコントローラで構成されるX-Brickを1単位として、最大8台をInfiniBandで相互接続してクラスタ構成を組める。
X-Brickごとに2つのコントローラがあり、両者がアクティブ-アクティブで同時に動くことがXtremIOの特徴だと市川氏は説明する。「従来の非スケールアウト型では、全体に対してコントローラが設けられている。しかも、2つのコントローラがアクティブ-パッシブになっており、フラッシュ本体を直接制御するのは1つのコントローラになっている」(市川氏)。
これがどう影響するか。従来のディスクでは、ディスクの読み書きがボトルネックになっており、それをコントローラがうまく制御して性能を上げていた。それに対して、フラッシュストレージの場合は読み書きが高速なため、コントローラのほうがボトルネックになると市川氏は説明する。さらに、重複排除や圧縮などによってコントローラの負荷が高くなる。XtremIOでは、X-Brickごとに2つ、全体で最大16個のコントローラにより高性能に処理でき、さらに小さく始めて大きく拡張できるということだ。さらに、メタデータがすべてコントローラのメモリに乗っていることによる性能向上にも市川氏は言及した
2つめの特徴は、インライン&インメモリーでのデータ削減だ。フラッシュに書き込む前にメモリ上で、ゼロだけのデータを省略するThin/Zeroや、同じデータを一本化する重複排除、データの圧縮をかける。「他社製品では、高I/O時にはインライン削減を一時オフにするものもある」(市川氏)。これにより、効果2倍以上が97%、4倍以上が50%以上あったという実績があるという。市川氏は、これによりI/O単価だけでなく容量単価でも従来型のSASドライブより安価になる場合もあると語った。
3つめの特徴としては、安定した性能が挙げられた。フラッシュストレージは構造的に、使用率が大きくなると性能が低下したり、それを防ぐためのガベージコレクション処理中は遅く(スパイク)なったりする。市川氏は、読み書き負荷をかけていったベンチマークデータを見せ、スパイクなどなしに安定して性能が維持されると語った。
さらに市川氏は、XtremIOを導入した企業からの「よかった」点の声として、I/O性能向上により台数を減らせることによる設置スペースの削減、消費電力の削減、ワークロードごとの設計が不要になったことによるプロビジョニング時間の削減、性能の向上と安定の4つを挙げた。これをもとに「フラッシュストレージというと速さのイメージがあるが、最初の3つは性能ではなくトータルコスト。オールフラッシュストレージは従来のディスクに比べて高い印象があるかもしれないが、イニシャルコストを含めてコスト削減につながる」と市川氏は主張した。
IDCFクラウドの新リージョンはすべてフラッシュ
クラウドのIaaSサービスにXtremIOを導入した例について、株式会社IDCフロンティア カスタマーサービス本部 プラットフォームサービス部 クラウドグループの金井崇氏が語った。
同社が2014年から提供しているIaaSサービス「IDCFクラウド」では、2015年11月に新しく西日本リージョンを追加した(データセンターは九州)。この西日本リージョンでは、従来のHDDをなくし、すべてフラッシュストレージとした。通常のストレージとしてXtremIOを使い、従来のHDDと同じ価格で提供している。
オールフラッシュ化した目的は「より高性能に、より安定的に」であり、そのためにXtremIOを採用したと金井氏は語る。背景として、2011年にフラッシュストレージとHDDの自動階層化を導入した経験がある。「これを導入したのも私ですが、お客さまから『ハードディスクに乗ると遅くなる。しかもそれを自分たちでコントロールできない』と言われ、顧客ニーズを満たせないと思いました」と金井氏。
サービスの性質上、同じような仮想マシンイメージが多数使われるため、インライン重複排除と、仮想サーバー作成時の複製の速度にはこだわった。複数社の製品を比較し、複製速度のしきい値とインライン重複排除の有無でふるいをかけ、その中で総合的なバランスを見てXtremIOを採用したという。「フラッシュを積んだストレージと、オールフラッシュストレージは違う。コントローラのソフトウェアが重要だ」(金井氏)。
また、重複排除が効かないデータを12時間読み書き続きする負荷試験を実施し、安定した性能を確認したという。
ストレージネットワークに従来と同じ40Gbpsの帯域を用意したところ、ネットワークが頭打ちになったというエピソードも語られた。「これは初めての経験だった」と金井氏。そこで4倍の160Gbpsを用意し、12,121MB/sの実測パフォーマンスを出したという。
金井氏はそのほか、データディスクやシステムディスク、MySQLでの試験データを示して性能向上を報告。「東日本リージョンでも、近日リリースする次期ゾーンからオールフラッシュストレージを採用する予定だ」と語った。