ニュース
KDDI、NVIDIA GB200 NVL72などから構成される最先端AIデータセンター「大阪堺データセンター」の開所式を開催
2026年1月23日 12:00
日本の通信事業者KDDIは、1月22日、同社が大阪府堺市に開設した新しいデータセンター「大阪堺データセンター」の報道関係者向け見学会を開催した。KDDIは、グローバルにデータセンター事業を展開しており、通信サービス向けのコネクティビティデータセンター、CSPなどの事業者向けのハイパースケールデータセンターなど複数種類のデータセンターを運営している。
今回KDDIが開設した大阪堺データセンターは、かつての「シャープ堺工場」の跡地に作られたデータセンター。4階建ての建屋に総床面積約5万7000平方メートルという巨大なデータセンターとなっている。最大の特徴は、シャープ工場時代の建屋や施設などを生かしながら、水冷のNVIDIA GB200 NVL72で構成されたモダンなデータセンターである点だ。
古墳から戦国時代の通商都市まで歴史ある堺市にイノベーションをもたらす大阪堺データセンターに地元も期待
今回KDDIが開設した「大阪堺データセンター」は、シャープが2008年に開所した「シャープ堺工場」の一部だった土地建物となる。シャープはこの土地・建屋を100億円でKDDIに売却する合意を、2023年12月に発表し、2025年4月4日に契約が成立したことを明らかにしていた。その合意発表から約13カ月が経過した1月22日に、KDDIはその土地・建物を利用した大阪堺データセンターの開所式を開催し、大阪堺データセンターの稼働開始を発表した。
開所式にはKDDI株式会社 代表取締役社長 CEO 松田浩路氏のほか、地元堺市から副市長 本屋和宏氏、シャープ株式会社 執行役員CDO 中野吉朗氏、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 代表 三上智子氏、エヌビディア合同会社 日本代表 大崎真孝氏、Hewlett Packard Enterprise(HPE) 上級副社長 兼 CPO Trish Damkroger氏、株式会社日立製作所(日立) 執行役常務 CEO 細矢良智氏などが来賓として招待されており、このうち来賓を代表して、堺市の本屋和宏副市長がスピーチを行った。
KDDI 松田氏は「データ基盤の国内安定供給を目指した経済産業省の取り組みに従って、日本の産業競争力を高めていこうという取り組みを行っている。KDDIはデータセンター事業として国内外に拠点を持っており、これまで培ってきた通信基盤に加えて、AI基盤を持って両輪で日本のデジタル社会を支えていき、取り組みを加速していく。今回は堺市とご縁があり、大変うれしく存じている」と述べ、KDDIが日本の産業界をバックアップする目的でこの大阪堺データセンターを開設したのだと強調した。
堺市 副市長 本屋和宏氏は「堺市は古代は古墳が作られた場所として、そして中世には国際貿易都市として栄えてきた。そうした歴史の町から未来を創る町へと進化していくため、『未来を創るイノベーティブ都市』の実現に向けた取り組みを進めている。生成AIや大規模言語モデルなどを実現するGPUを備えた国内最大級のAIデータセンターには、市としても大きく期待している。今はわが国や堺市の産業構造にとっても大きな転換点であり、同時にAIは産業構造そのものを変えていく。大阪堺データセンターがそうした中で、地域経済の活性化や堺のブランド力向上に寄与していただくことに大きな期待をしている」と述べ、地元としても最先端のAIデータセンターが構築されることに大きな期待を寄せていると説明した。
多くの大企業が集中している大阪から15キロメートルしか離れていないという絶好の立地
その後、KDDIの松田氏によって、大阪堺データセンターに関するプレゼンテーションが行われた。松田氏はこの大阪堺データセンターが、かつてはシャープ堺工場の一部であり、2024年8月までは月産4万枚の規模で第10世代液晶カラーフィルターを製造する工場だったと紹介。そこから1年ちょっとで、建屋や生かせる設備はそのままデータセンターに転換したことを説明した。
松田氏は「すべて水冷が可能になっている設備を構築した」と強調。データセンターの設備が、最新の水冷(サーバー世界の用語でいうと、DLC:Direct Liquid Cooling、チップのヒートシンクまで液体が熱を伝導する冷却方式)に対応しており、最新のGPUであるBlackwellを採用したラック「GB200 NVL72」を、国内では「先頭集団の一人」(松田氏)として、かなり早い部類でGB200 NVL72を導入した最先端のAIデータセンターだと強調した。
また、多くの大企業などが集中している経済都市の大阪から15キロメートルしか離れていないという好立地で、低遅延でサービスを提供できる。
さらに、大阪堺データセンターの構築にあたり、いわゆるデータを処理する部分には、NVIDIA、HPE(Hewlett Packard Enterprise)、日立、Google Cloudが協力したと説明。同時に、データセンターの施設部分では、東芝(電源、UPSなど)、NECネッツエスアイ(セキュリティー、認証)、日本設計(施設の設計部分)、富士電機E&C(冷却関連)などのパートナー企業の協力を仰いだとして、それらの企業の協力もあり、約1年強という短い期間で工場からデータセンターへの転換を行えたと述べた。
また、この大阪堺データセンターには、4大CSP(クラウドサービス事業者)の1つであるGoogle CloudのGDC(Google Distributed Cloud)のハードウェアが置かれることも重要なポイントだ。Googleが提供するAIモデル「Gemini」を日本国内で処理することが可能になる。
加えて、大阪堺データセンター上で実行するアプリケーションについて、KDDIの子会社でもあるMEIが手掛ける、電子カルテと医療特化LLMなどを組み合わせた「医療用垂直統合サービス」の提供を目指すことなどを紹介。こうした最先端のAIデータセンターを活用することで、これまでになかった新しいアプリケーションを日本企業が提供できるようになるとアピールした。
ターボ冷凍機や冷却塔、変圧器などはシャープ工場時代の流用で、その経済的価値は100億円相当だとKDDI松田社長
前述したように、今回KDDIが開設した大阪堺データセンターは、2024年の8月までシャープの第10世代カラーフィルターを製造する工場だった建屋をデータセンターに転換したものとなる。
建屋はシャープ工場時代のものがそのまま使われており、地上4階建てで、延床面積が約5万7000平方メートルとなっている。製造施設などを撤去したスペースをデータセンターのサーバールームとして活用しており、シャープの工場時代に使っていたターボ冷凍機、そのターボ冷凍機を冷却するための冷却塔、変圧器、受電盤などに関してはそのまま転用されている。
KDDIの松田氏はこうした点について、「通常であれば数年かけて設置するような装置をそのまま使えたため、通常3~4年かかるデータセンターの開設までの期間を約1年に短縮でき、100億円ぐらいの経済効果があった」と述べた。なお、KDDIがシャープに支払った建物・土地の代金は100億円と明らかにされているが、その額と同じぐらいの経済効果があったことになり、KDDIにとっては非常にお得な買い物だったということになる。
サーバーの冷却はすべてDLCになっており、1階に設置されたターボ冷凍機から供給される冷水が直接ヒートシンクまで届けられる。ターボ冷凍機は、タービンで圧縮した冷媒ガスを、屋上に設置された冷却塔(巨大なラジエーターのこと)で冷却した冷却水で液化し、液化した冷媒が気化する際の気化熱を利用して冷水を生成する形になる。
ターボ冷凍機で熱交換されて温水になった水は、再び屋上の冷却塔に戻され、熱を水蒸気として大気に放出することで、熱交換を行う仕組みになっている。つまり、DLCの水路(ターボ冷却器からCDUまで)とターボ冷却器を冷却する水路という2つの水路が別々に運営される形になっている。
DLCの方は基本的に循環水だが、冷却塔とターボ冷凍機の間を循環する水は水蒸気として大気中に放出されるため、水の供給が必要で、こちらは堺市から工場用に供給される工業用水が供給される形だ。
電力に関しては、受電盤から変圧器までは7万Vの電力が供給されており、それが変圧器において6000Vに変圧される。さらに、サーバールームの隣に新設された電気室の中で415Vに変圧され、ラックやほかの機器に供給されラックや機器の中でさらに変圧される形になる。
KDDIによれば、データセンター全体では50万kWの電力を外部から引くことが可能だが、30万kWの変圧器が2つ(うち1つはバックアップ)になっているため、現状は30万kWの受電容量という形になるという。将来的にもっと電力が必要になれば、さらに変圧器を設置するなどして50万kWまで増やせるわけだ。
なお、今回の大阪堺データセンターでは機器ごとにBBUは置かれず、電気室にUPS(無停電電源装置)が置かれている。電源喪失(停電)が発生した場合には、15分以内に全サーバーがシャットダウンできるだけのバッテリー容量を持っているということだった。
HPEのNVIDIA GB200 NVL72がサーバールームに並び、基本的にはIaaSとして提供される
大阪堺データセンターのサーバールームは、主に建屋の3階と4階に置かれているほか、1階にも置けるスペースがあるということで、将来的にはそうしたスペースを活用する予定だという。ただし、現状では3階の一部を利用しているだけで、今後需要を見ながらサーバーを増やしていくことが可能という高い拡張性が特徴だ。
そのサーバールームには、各ラックに冷却水を供給する役割を果たすCDU(Coolant Distribution Unit、ターボ冷凍機からの冷水がここまで供給されてくる)、NVIDIA GB200 NVL72のラックが整然と並べられている。
このGB200 NVL72は、Grace CPU(Arm CPU)が36基、B200(Blackwell GPUの中位版、BlackwellにはB300、B200、B100がある)が1つのラックに72基収められている。写真で緑に光っているのがGB200(Grace CPUが1つとB200 GPUが2つ)が2枚入っている1Uのブレードで、1UのブレードにGrace CPUが2つ、B200が4つ入っている計算になる。その1Uのブレードが18枚あることで、36基のGrace、72基のB200というCPU/GPUが1つのラックに格納されていることになる。
このNVIDIA GB200 NVL72は、HPEが提供している「NVIDIA GB200 NVL72 by HPE」で、HPEが公開しているスペックによれば、ラック当たりのメモリ容量はHBM3eで13.5TB、メモリ帯域幅は576TB/秒となる。CPUおよびGPUは、第5世代のNVLinkとNVSwitchを利用して超低遅延・広帯域幅で接続されている。
なお、NVIDIA GB200 NVL72 by HPEではスペック上はInfiniBandにも対応しているが、KDDIによれば、今回のスケールアウトにはEthernetが利用されており、ROCE v2を利用してRDMAが実現されている。なお、HPEのスペックではラック当たり132kWの消費電力とされているが、KDDIのスペックでは130kWだと説明された。
ただし、今回KDDIはこのGB200 NVL72がいくつ導入されているのか、GPUは合計でいくつ導入されているのか、さらにはデータセンター全体の処理能力(FLOPS)などに関しては明らかにしなかった。
現状では電力の10%を使っているだけと明らかにされたので、現状はさほど多くの台数が入っていないのだろうと推定される。それでもデータセンターである以上はきちんと現状と将来の最大数などのスペックは情報公開すべきだと思われるため、ぜひこの点は今後公開をお願いしたいところだ。
なお、今回は基本的にはHaaS(Hardware as a Service)あるいはIaaS(Infrastructure as a Service)としての提供になり、ソフトウェアは利用者側が用意する形になる。現状では学習での利用がほとんどで、むしろ利用者にはそうした形での提供が望まれているという。
ただし、NVIDIA AI Enterpriseが無償で利用できるため、NVIDIA NIMやNeMoマイクロサービスなどの開発ツールを利用して推論アプリケーションを構築することが可能なので、今後推論のユーザーが増えていけば、そうしたソフトウェア開発キットの活用を勧めることになるとKDDIは説明した。
H200ベースのGoogle Distributed Cloudが導入されており、Gemini on GDCが提供される
今回開設式が行われた大阪堺データセンターには、Google CloudのGoogle Distributed Cloudが導入されている。Google Distributed Cloudでは、Google Cloudのハードウェア(サーバー機器、Google Cloudが用意する)とソフトウェアが1つのパッケージとして、他社のデータセンター(この場合はKDDIのデータセンター)に置かれることになる。
一般的にGeminiなどを利用しようとすると、マネージドサービスとして動かすことになるため、どのリージョンのデータセンターで動かすかなどはGoogle Cloud側で最適なものを選ぶことになる。
例えば、Geminiで利用しようとするデータがせっかく自国リージョンのクラウドストレージに置いてあっても、そうした他国リージョンにあるGPUで演算されると、データのソブリン要件(データを自国の法律の管轄が及ぶエリアだけで活用すること)を満たせなくなってしまう。
そこで、KDDIのデータセンターの中に置かれているGoogle Distributed Cloud上でGeminiを利用すると、データはもちろんKDDIデータセンター内にあるGoogle Distributed Cloudの中に置かれ、GPUもKDDIデータセンター内にあるGoogle Distributed Cloudを利用して学習や推論が行われるため、ソブリン要件を満たすことが可能になるのだ。
Google Cloudは、昨年4月のGoogle Cloud Next 25において、Gemini on Google Distributed Cloudを発表。そのタイミングで、KDDIのデータセンターにGoogle Distributed Cloudが置かれ、その上でGemini on Google Distributed Cloudを走らせると発表しており、今回具体的にそのサービス開始も明らかにされている。
なお、KDDIによれば、Google Distributed Cloudの方のハードウェアはH200だということで、こちらはGB200ではないという。また、提供されるGeminiはGemini 2.5 Flashになるという。それらはGoogle Cloudがハードウェアもソフトウェアも用意する形になっており、KDDIが選んだのではなく、あくまでGoogle Cloud側がそうした構成を今は提供していると理解できるだろう。




































