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日本HPが2026年事業戦略を発表、ハイブリッドAIとAI PCの拡充で「Future of Work」を深化
2026年1月23日 06:15
株式会社日本HPは22日、2026年の事業戦略について説明。岡戸伸樹社長は、「HPは、『はたらく人に、こだわる自由を』実現するために、2026年もFuture of Work戦略を実行する」と語り、Future of Work戦略を構成する要素として、「クラウドとローカルAIを組み合わせたハイブリッドAIの推進」、「より快適で安心安全なハイブリッドワークの深化」、「ものづくりの課題を解決する、ものづくりDXの強化」の3点に取り組む考えを示した。
ひとつめの「クラウドとローカルAIを組み合わせたハイブリッドAIの推進」では、「クラウドAIとローカルAIのいいところを組み合わせたものが、ハイブリッドAIとなる。HPでは、ハイブリッドAIが将来のAIのあるべき姿だと考えており、2026年はハイブリッドAIを実現できるフェーズに入ることになる。HPは、ハイブリッドAIの推進において、プロデューサーの役割を担っていく」と宣言した。
具体的な取り組みのひとつとして新たに発表したのが、「HP ハイブリッドAI推進コミッティ」の設立である。パートナー企業とともに、AIに関する最新技術の提供や構築支援、PoCプログラムの提供などを行う。
マイクロソフトの「Microsoft Foundry on Windows」を活用するほか、gpt-oss、Llama、Mistralといったローカル環境で動作する商用利用が可能なオープンモデルのSLM(小規模言語モデル)およびLLM(大規模言語モデル)も利用する。会員企業は、各社の強みを組み合わせて、日本企業を対象にした無償や有償のプログラムを2026年4月から提供する。
Microsoft Foundry on Windowsで開発したサンプルライセンスおよびコードの無償提供のほか、AIテクノロジー企業各社の最先端技術情報の提供と実践的研修プログラムの提供、主要オープンモデルに合わせたハードウェア仕様のアドバイザリーサービスの提供、コミッティ賛同企業のAIソリューションPoCとサポートプログラムの提供、日本HPのデバイスとパッケージによるAIソリューションの実装や活用支援サービスを提供する。
そのほか、有償プログラムとして、専門家によるAI導入・活用戦略コンサルティングサービス、オンデバイスAI/ハイブリッドAIソリューション受託開発・実装支援サービスを提供する。
なお、同コミッティ運営の幹事企業として、WEELとGxPの2社が参画。さらに、Aww、Upstage AI、アドバンスト・メディア、アルファコード、調和技研、neoAI、楽天グループ、AIテクノロジー、日本マイクロソフト、エヌビディア、日本エイ・エム・ディ、インテル、クアルコムジャパン、AICX協会、Workstyle Evolutionが参加している。
スタートアップ企業であるUpstage AIとの新たな戦略的アライアンスにより、ワークステーションとの統合パッケージ「SolarBox」を2026年春から発売することも明らかにした。「HPのワークステーションにオンプレミス環境を構築。安心安全なAI活用環境の実現と、AIによる文書管理や意思決定を支援する。日本の企業のFuture of Workを実現するキラーアプリケーションになる」と位置づけた。
2つめの「より快適で安心安全なハイブリッドワークの深化」では、HP eSIM Connectに、「国際ローミング」、「副回線キャリア」、「MDMセキュリティ」の機能を加えた「HP eSIM Connect PLUS」の提供を新たに開始。より利便性を高め、いつでも、どこでもつながる環境を支援するという。ここでは、eSIM Connectの契約法人数が3000社を超えたことも明らかにした。
さらに、HP Wolf Securityを、すべてのデバイスおよびワークフローに組み込むことで、外部の脅威から守るセキュリティソリューションを強化するほか、故障の可能性を事前に検知して知らせるプロアクティブな予防型サポートの強化も図る。
また、「日本のナレッジワーカーは、テクノロジーはツールではなく、生産性が高く、健全な職場での関係を構築するための重要な触媒であると考えている」とし、同社が日本企業を対象にした調査によると、83%のナレッジワーカーが現在使っている業務ツールに満足していないこと、53%がより良いテクノロジーがあれば、もっと生産性が高い仕事ができると考えているという結果があることに加えて、30%の人が自分の能力を最大限発揮することが、仕事のやりがいにつながると回答していることも示した。「これは日本が世界で最も高い比率になっている」とした。
3つめの「ものづくりの課題を解決する、ものづくりDXの強化」では、2026年春に、建設/建築業界向け新ソリューション「HP Build Workspace」をローンチすることを発表。「AIにより、図面を精度高くベクター化する新機能のHP AIベクタライゼーションを使い、青焼きの図面をCADデータに変換し、作図工数を大幅に減少させることができた。また、新たなプラットフォームを活用することで、設計から施工までの情報を一元的に管理できるようになる」という。AIベクタライゼーションは、クラウドで利用できるが、近い将来にはワークステーションでのオンプレミス運用が可能になり、ハイブリッドAIとして稼働できるようにするとのこと。
出版DXの取り組みとしては、講談社の老舗文芸誌である「群像」が、日本の文芸誌初のデジタル印刷転換を図った事例を紹介。小ロット、短納期、高品質化に成功するとともに、誌面のフルカラー化によって、読者への訴求力を大幅に向上させたという。
さらに、日本HP社内におけるFuture of Workについて、社会貢献活動の観点から説明。「HPには、社会貢献活動は、すべての社員が行う責務であるというDNAがある。日本HPにおける2025年の社員のボランティア活動参加率は75.2%となり、HPグローバルにおいて、ダントツNo.1の参加率になった」という。
次世代AI PCのラインアップを拡大
PCなどを担当するパーソナルシステムズ事業の方針については、日本HP 執行役員 パーソナルシステムズ事業本部長の松浦徹氏が説明。「2026年は、次世代AI PCのラインアップを大幅に拡大する。これまでになかったユニークな製品を投入し、インテル、AMD、クアルコムといった複数のシリコンベンダーと協業し、幅広いニーズを満たし、多くのお客さまの期待に応えたい」とした。
HP EliteBook X G2は、モバイルワーカーやハイブリッドワーカー向けの軽量モデルと位置づけており、最軽量構成では1kg以下を実現しているほか、29時間のバッテリー駆動の構成も可能であることも示した。また、トップマウントキーボードで簡単にキーボードを交換できるメンテナンス性の高さのほか、ACアダプターを67gと小型軽量化し、持ち運びの負担を減らすことができる点も強調した。
HP EliteBoard G1a Next Gen AI PCは、キーボードのなかにPCの機能を搭載し、オフィス内を持ち歩ける新たなデスクトップ体験をもたらす製品だ。AI PCの性能を約676gのキーボード内に詰め込み、ケーブル1本で電源、映像、データを統合し、ディスプレイをつなぐだけで利用できる。MIL-STD-810Hテストの12項目をクリアした堅牢性も兼ね備えている。
HP OmniBook Ultra 14 AI PCは、クアルコムモデルで最大38時間の長時間駆動を実現するとともに、最大85TOPSによる高速AI利用を可能にするノートPCであり、10.7mmの超薄型設計ながら、MIL-STD-810で設定されている20項目のテストをクリアしているという。最大3K OLED120Hzの可変リフレッシュレートにも対応しており、仕事からエンターテインメントまでの利用が可能だ。
ゲーミングPCでは、HyperXがゲーミングのマスターブランドとなり、PCやディスプレイ、周辺機器、ソフトウェアまで一貫した体験を提供できるようになることにも触れた。
「日本HPは、2026年も、多くのPCを投入するが、パートナー連携を通じたハイブリッドAIエコシステムプロデュースカンパニーを目指し、ハイブリッドAIを促進することになる。どこでも、安心して、快適に利用できるFuture of Workを実現する」と語った。
注目されるのは、昨今の部材不足や、部品価格の高騰を背景にしたPCの供給状況や値上げについてだが、日本HPの岡戸社長は、「グローバルでの強靭なサプライチェーンによって、レジリエンスを強化し、お客さまに対しては、継続して、製品が供給できるようにしている。値上げについては個別の製品についての回答はできない。企業努力により、コストパフォーマンスを持った製品を提供していく。部材不足や価格高騰は、今後の製品戦略に影響を及ぼすものではない」とした。
エンドポイントセキュリティの重要性を強調
セキュリティ戦略については、日本HP セキュリティエバンジェリストの木下和紀エドワルド氏が説明。「Windows 11で標準となっているTPM搭載PCをHPが発売したのは2003年であり、エンドポイントセキュリティの重要性を先駆けて考えてきた」と語り、「いま、エンドポイントがあらためて重視されている。ローカルAIやハイブリッドワークの普及により、ローカルでの機密情報の扱いが増え、組織の壁に守られていないシーンでの活用が増えている。エンドポイントでの多層防御が必要不可欠となっている」と指摘した。
日本HPでは、サプライチェーン保護のPlatform Certificate、ハードウェアへのウイルス寄生防止や暗号強化を行うSure Start、Tamper Lock、量子暗号対応BIOSを提供。また、レジリエンスソフトウェアによる脅威隔離として、Sure RecoveryやSure Click、Sure Accessを提供。エンドポイントセキュリティ統合管理として、Wolf Connect、Workforce Experience Platform、Sure Adminを提供していることを示した。
カスタマーサポートの構造変革:AIの利用やプロアクティブな対応などを実現
さらに、国内におけるカスタマーサポートの強化についても説明した。
日本HP 執行役員 カスタマーサポート統括本部長の室屋智子氏は、「カスタマーサポートにおいては、労働人口の減少、サポートニーズの多様化、物価高騰などによるコスト上昇の影響があり、構造的な変革が求められている。従来の考え方では、今後、サポートを存続させることが難しくなるのが実態だ。抜本的な見直しが必要になる」と切り出し、「これまでは、顧客からのアクセスを待ち、人が対応して解決してきたが、これからはAIエージェントの活用や、自己解決や予測型のプロアクティブな対応も組み合わせる。サポートを通じて顧客の体験を最大化し、事業成長のキードライバーにしていく」と述べた。
すでに米国では、AIエージェントによる音声サポートを導入。2026年度には日本のカスタマーサポートでもこの仕組みを導入する予定であり、テストを開始するところだという。さらに、日本独自のサポート体制として、LINE公式アカウントによるサポート対応、サポート情報をまとめたHP LIVEサポートナビを用意。サポートコンテンツやチャットサポートへの簡単接続により、必要なサポートを即座に得られるようにするとした。
「一部の企業では、サポートの電話番号が見つけにくい場所にあったり、自分でトラブルシューティングを行った後でないとチャットにつながらなかったりという仕組みが見受けられ、つながらないようにしているとの指摘もある。日本HPでは、電話番号を見つけやすいところに表示し、つながる方法をオープンにし、お客さまにつながる方法を選んでもらえるようにしている」と語った。
今後は、製品購入後の顧客体験を向上させるために、Digital Passportを提供。HP製品を長期にわたって利用してもらうために、顧客への最新情報や、お役立ち情報をタイムリーに提供するという。現在は英語での対応であり、日本語での対応を検討しているところだ。
一方、2025年度(2024年11月~2025年10月)のグローバルの業績が、売上高で前年比3.2%増の約553億ドル、利益は同16.9%減の約31億7400万ドルの増収減益になったことに触れ、日本HPの岡戸社長は、「厳しい経済環境下において、まずまずの成果であった」と総括。「国内においては、約6年ぶりに東京ゲームショウに出展したほか、Future of Workのイベントを開催し、10年前に日本HPが現体制に分社化して以来、最大の集客となった。また、楽天AIとの協業など、実りが多い1年だった」と振り返った。
また、「HPは、第二次世界大戦が開戦した1939年に設立し、それから87年を経過した。設立時も不確実な時代であったが、今年も不確実性が高い1年になる。生き残れたのは柔軟性とレジリエンスのDNAがあるからだ。今年は午年(うまどし)である。2つのDNAを持つ競走馬として、『駆け抜けて、駆け抜けて、駆け抜けて、駆け抜けて、駆け抜けて』いく。メディアには、その姿を記事にしてもらい、明るい1年にしていきたい。」とも述べている。
















