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Dataiku、AIエージェントの新機能を提供開始――AI導入の課題克服とビジネス変革を支援

 Dataiku Japan株式会社は14日、AIエージェントの構築やコントロールが可能となる新機能を提供開始すると発表した。同社の「The Universal AI Platform」にて提供する。

 これに伴い、同社は記者説明会を開催し、AI導入の課題やAIエージェントの可能性、それに対する同社の取り組みについて、Dataiku Japan 取締役社長 カントリーマネージャーの佐藤豊氏が語った。

Dataiku Japan 取締役社長 カントリーマネージャー 佐藤豊氏

 佐藤氏によると、Dataikuは2018年より「Everyday AI」というビジョンを掲げ、「AIを特別視せず、日常業務に溶け込むことを目指している」という。このビジョンの下、「AIの鍵は技術だけでなく、組織の変化が重要だ。そのためにもAIエージェントを日常化させるべく取り組みを進めている」と佐藤氏はいう。

 その取り組みを支えるのが、The Universal AI Platformだ。佐藤氏は、AI導入には「技術」「ツール」「組織」「人材」「ガバナンス」の5つの壁があるというが、「The Universal AI Platformがこれらの壁を乗り越えるソリューションになる」と主張する。

The Universal AI PlatformのAI開発機能

 The Universal AI Platformでは、AI開発と運用オーケストレーションが可能だ。AI開発においては、生成AIとエージェント、機械学習、アナリティクスとインサイト、そしてAIのためのデータ準備といった要素を提供する。

 生成AIとエージェントでは、PoC段階を超えてエンタープライズグレードでの活用を拡大するため、安全なLLMゲートウェイから開発、評価のガバナンスまで必要な機能を提供する。機械学習においては、ガイド付きのAutoML機能から最先端の手法までを網羅し、説明可能性を維持しながら機械学習モデルの迅速な構築と評価が可能だ。

 アナリティクスとインサイトの領域では、BIとアナリティクスを進化させ、すべての顧客が信頼できるデータに基づいて意思決定を行える環境を提供する。さらに、AIのためのデータ準備として、データの接続やクレンジング、分析、モデリング、デプロイメントまでが、単一の環境で実行できるようになっている。

 佐藤氏は、「このようにDataikuでは、開発効率と品質、そして説明可能性を両立させることができ、単一の製品でAI開発に必要なすべてが完結する。日本の顧客からは、製品の設計図をひとつのプラットフォームで実現できるとして評価されている」とした。

 The Universal AI Platformのもうひとつの要素である運用オーケストレーション領域には、大規模なAIを安心・安全に管理するための機能がそろっており、AIガバナンスやAIエンジニアリングOps、AIエコシステムを考慮している。

 AIガバナンスでは、あらゆるデータ作業においてAIガバナンス基準を一元的に適用し、AIポートフォリオの可視性を維持することでリスクを低減する。AIエンジニアリングOpsでは、データパイプラインの自動化や、モデルおよびエージェントの本番環境管理、プロジェクトの運用統合が可能だ。AIエコシステムとしては、企業の既存インフラや新しいツールの導入に対して柔軟性を保ちながら統合を促進し、ベンダーロックインを回避する。

 これらの運用オーケストレーション機能は、「組織のAI成熟度に合わせて段階的に対応できるよう設計されており、現在の状況から着実に発展させていくことが可能だ」と佐藤氏は説明する。

The Universal AI Platformの運用オーケストレーション機能

 The Universal AI Platformは、中立性が大きな特徴だという。「技術面では、クラウド、データプラットフォーム、AIサービスの多様性を取り込みつつ、技術的な制約を排除する。また、ユーザーに対しても中立で、ビジネスユーザー向けのノーコードインターフェイスからデータサイエンティスト向けの高度な開発環境まで、幅広いユーザー層に対応する」(佐藤氏)としている。

 その上で佐藤氏は、AIエージェントについて「企業の課題を解決し、ビジネスの変革を推進する可能性を秘めている」と語る。「Dataikuは、AIエージェントの効率的かつ安全な導入を支援するため、Universal AI Platformをさらに拡張し、ビジネスの価値創出を目指す」(佐藤氏)

 佐藤氏によると、AIエージェントがもたらす可能性は、プロセスの自動化によるコスト削減、従業員支援による効率化、企業インテリジェンスによる最適化、新サービスや新たなビジネスモデルによる収益増加だ。

AIエージェントの可能性

 ただ、AIエージェントの導入には課題もあると佐藤氏はいう。ビジネス部門とデータチームの連携不足によってエージェントの機能が限定されることや、データの不正確さ、データソースとの永続的な接続の欠如、さらには本番環境でのテスト不足により、エージェントが効果的に運用されないといったことなどだ。

 こうした課題に対し、「Dataikuはエンタープライズオーケストレーションを強化し、継続的に最適化する。完全に管理された開発環境を提供し、誰が作成したエージェントでも適切にガバナンスされるようにする」と佐藤氏はいう。

 その一環として、Dataikuは「AI Agent with Dataiku」を提供、AIエージェントの複雑さを抑え、効果的に活用する仕組みを整えている。このツールには、ノーコードとフルコードの開発を統合する「Visual & Code Agent」、多様なモデルへのアクセス管理を提供する「LLM Mesh」、エージェントを一元管理する「Agent Connect」、エージェントの動作を可視化する「Trace Explorer」、品質やコストを管理する「Quality & Cost Guard」といったコンポーネントが含まれている。

 これらの機能を通じ、「再利用可能なアセットの管理や、部門間での知識共有を促進し、企業全体で効率的にAIエージェントを活用できる環境を構築する」と佐藤氏は説明する。また、エージェントの価値を最大化するには制御機能が重要だとして、「ガバナンスにより、エージェントの継続的な最適化や、ナレッジワーカーを含むさまざまな人が開発したAIアセットが全社展開できる」としている。

AI導入の次なる進化:AI Agents with Dataiku

 佐藤氏は、Dataikuの差別化要因として、中立性を保持しつつエンタープライズオーケストレーションを可能にする点、継続的な最適化を実現する点、そして中央でガバナンスを取る点を挙げる。その上で、「Dataikuは、企業内のデータを効果的にAIエージェントとして活用し、業務プロセスに組み込むことを目指す」としている。

Dataikuの差別化要因

 日本市場に向けては、「AIの成熟度を段階的に向上させることが重要だ」と佐藤氏。そのためには、データの統合と可視化から始まり、予測分析とML実装、生成AIの統合活用を経て、AIエージェントの実用化に進む必要があるという。「最終的には、AIエージェントをブラックボックス化させることなく、フェーズごとの段階的導入を通じ、データから確実な価値を引き出し、ビジネスモデルを構築することが求められる。このアプローチにより、ただの人員やRPAの代替としてではなく、データから価値を創造する本格的なAI活用が実現する」と佐藤氏は語った。

日本企業向けロードマップ