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AI時代が導く「仕様駆動開発」 開発者に求められるスキルも変化

 AIによるコード生成が広がる中、「仕様駆動開発(Spec-Driven Development)」という開発手法が注目されている。開発初期に詳細な仕様書を作成し、これを一番の基準に開発を進めるものだ。AIコーディングの弱点を補い、スケーラブルなシステム開発を可能にすることから、Amazon Web Services(AWS)、GitHubといった大手が相次いで対応ツールをリリースしている。同時に、開発者に求められるスキルが変わりゆくことをうかがわせている。

「コードは開発者の価値の10%から20%に過ぎない」

 「あなたがもたらす価値の中で、コードが占める割合は10%から20%程度だ。残りの80%から90%は『構造化されたコミュニケーション』にある」

 OpenAIのエンジニア、Sean Grove氏は6月の開発者会議「AI Engineer World's Fair 2025」でこう語り、会場の参加者に大胆な発想の転換を迫った。Grove氏は、OpenAIでアラインメント(AIを人間の意図に従わせる技術)の研究を担当している。

 「The New Code」と題した講演は、ソフトウェアの価値の焦点が、AIコーディングの台頭とともに「コード」そのものから「仕様」に移りつつあると指摘している。その核心にあるのが「仕様駆動開発」だ。開発の初期段階で要件や設計を明確な仕様書(スペック)に落とし込み、これを「プロジェクトの唯一の信頼できる情報源」として構築を進める手法である。

 AIコーディングでは、AIエージェントが意図と異なるコードを生成して開発の一貫性を損なうという問題がたびたび指摘されるようになった。これはAIがアプリの目的や過去の決定を途中で追跡できなくなるためだと考えられている。

 仕様駆動開発は、こうしたAIの弱点をカバーしながら、スケーラブルで継続的に使えるシステムの開発を可能にするという。

 では、仕様駆動開発を実現するツールとは、どのようなものだろう。