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647の政府システムがダウン 韓国データセンター火災の衝撃

 “デジタル先進国”を掲げる韓国で、政府のデータセンターが火災のため壊滅した。9月26日夜、大田(テジョン)市の国家情報資源管理院(NIRS)で火災が発生。647の政府システムが停止し、行政サービスが広範囲に麻痺した。クラウド運用の鉄則である災害復旧システムが機能せず、過去の教訓も生かせなかった結果だ。

22時間燃え続けたバッテリー火災

 NIRSは政府機関や自治体の情報システムを管理する機関だ。「韓国のシリコンバレー」と呼ばれる大田市の大徳研究開発特区内にあり、韓国政府を支える中枢となっている。

 火災は9月26日午後8時15分、データセンター5階のサーバー室で起こった。Reuters、The Korea Heraldなど複数の報道によると、無停電電源装置(UPS)のリチウムイオンバッテリーが爆発。熱暴走状態に陥り、極度の熱を放出した。火は翌27日午後6時頃まで22時間燃え続けた。消防士約170人と消防車63台が駆けつけたが、リチウムイオンバッテリーの消火には大量の水をかけるか水槽に沈めるしか方法がない。結局、UPSシステムの384個のバッテリー全部が焼失した。

 この影響で647の政府システムが停止した。96システムのサーバーは完全に焼失し、残る551システムも熱の懸念から一時停止した。内務安全部の報告によると、焼失したシステムには韓国法令情報センター、国民請願システム「e-People」や災害警報などTier 1システム4件と、国家災害安全ポータルや公務員向けクラウドストレージ「On-nara」などのTier 2システム10件が含まれていた。

 The Korea Timesによると、政府のオンラインサービスポータル「Government24」をはじめ、複数のサービスが9月29日もオフラインのままとなった。警察、消防、税関当局、郵便など影響は広範囲に及び、内務安全部のWebサイトもサービス停止状態になった(Reuters)。

 そしてタイミングが最悪だった。9月末は韓国最大の祝日の一つである「秋夕(チュソク)連休(今年は10月3日から9日)」を控えており、郵便や配達、金融サービスの需要が急増する時期だったのだ。

 The Korea Timesは金融サービスの混乱ぶりを次のように報じている。

 国民IDカード(住民登録証)がオンラインやATMで使用できなくなった。銀行窓口では職員が政府の自動応答システムに電話して手動で本人確認を行い、大幅な遅延が発生した。証券会社や暗号通貨取引所も同様の問題に直面し、リモート口座開設やパスワードリセットが停止された。インターネット専業銀行のKbank、Toss Bank、KakaoBankは特に大きな打撃を受けたという。

 金民錫(キム・ミンソク)首相は9月27日に記者会見を行い、「重要な政府システムが1カ所に集中しているという性質上、消火に困難があった」と述べて国民に謝罪した。東亜日報が伝えている。