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富士通とNVIDIAがAI分野で戦略的協業を拡大 AIエージェント基盤や次世代AI-HPCコンピューティング基盤の共同開発を目指す
2025年10月3日 13:00
富士通株式会社は、米NVIDIAとAI分野における戦略的協業の拡大に合意したと、10月3日に発表した。
ヘルスケア、製造、ロボティクスなどの領域に特化した産業向けのAIエージェントプラットフォームに加え、「NVIDIA NVLink-Fusion」を介して「FUJITSU-MONAKA」CPUシリーズとNVIDIA GPUをシームレスに統合するAIコンピューティング基盤を、共同で開発・提供する。
今回の協業拡大によって推進する取り組みとして発表されているのは、「AIプラットフォーム」「次世代コンピューティング基盤」「カスタマーエンゲージメント」の3点だ。
「AIプラットフォーム」としては、富士通のAIサービス「Fujitsu Kozuchi」にNVIDIAの技術を組み合わせて、自律型プラットフォームを開発する。
「次世代コンピューティング基盤」としては、2027年にリリースを予定している富士通のデータセンター向け高性能省電力CPU「FUJITSU-MONAKA」シリーズと、NVIDIAのGPUを、高速なインターコネクト技術である「NVIDIA NVLink-Fusion」で密結合し、ゼタスケールの演算性能を実現する高速AIコンピューティング基盤を共同開発する。
「カスタマーエンゲージメント」としては、さらなるエコシステムの拡大を加速させるため、共同でパートナープログラム提供などの活動に取り組む。さらに、社会変革を実現するユースケース開発を特定の産業分野から推進する。ユースケース開発の具体的な取り組みの一つとして、ロボティクス分野におけるフィジカルAIなどの先端技術の社会実装を目指すことが発表されている。
同日開催された記者会見には、富士通株式会社 代表取締役社長 CEOの時田隆仁氏と、NVIDIA 創業者/CEOのジェンスン・フアン氏が登場した。
時田氏は、富士通は社会課題や環境問題などの解決に向けて、テクノロジーで努力を重ねているとして、「そのドライバーとなるキーテクノロジーは、やはりAI」と述べた。
そして、「AIの進化は、データの量と計算能力によって推進されるため、それを支えるさらなる能力を持つAIインフラストラクチャーが必要であり、それをNVIDIAとともに構築していく」と語った。
フアン氏は、「FUJITSU-MONAKAというすばらしいCPUをNVIDIAのGPUと組み合わせることで、省電力で高性能なコンピューティングが実現する」と説明。今回のイニシアティブにより、両社の技術をさまざまな形で組み合わせてAIエージェントを構築し、日本の各業界の問題を解決して、機会を創造していくと語った。
提携の内容については、富士通株式会社 執行役員副社長 CTOのヴィヴェック・マハジャン氏が、前出の3つの取り組みに基づいて解説した。
1つめの「AIプラットフォーム」においては、富士通のAIサービス「Fujitsu Kozuchi」と、NVIDIAのDynamoやNeMo、CUDAといった技術を組み合わせる。
そして、マルチテナンシーの技術を取り入れ、エージェントフレームワークにより顧客がスピーディーに導入できるようにし、それらをマイクロサービスとして顧客に提供していくとマハジャン氏は語った。
2つの「コンピューティング」については、FUJITSU-MONAKA CPUとNVIDIA GPUを密結合するとともに、それによってAIインフラプラットフォームを提供していくと説明。さらに、AIプラットフォームとHPCプラットフォームを合わせて、シミュレーションなどに提供していくと語った。
3つめの「カスタマーエンゲージメント」としては、マハジャン氏は「お客様が一緒にいないと価値提供できない」として、製造や金融、ヘルスケアなどさまざまな業界においてイノベーションと生産性向上を提供すると説明。さらに、産業横断でイノベーションを実現していくことを目指していると語った。
具体例としては、AIインフラとロボティクスの組み合わせをマハジャン氏は挙げた。ロボティクスに必要な3つの技術として富士通が提供する、コンピューティング、AI、ネットワークの3つのキーテクノロジーに、NVIDIAとの連携によるAIインフラを組み合わせて、Brain、Sensing、Movement、Securityの機能を進化させていくという。実現にあたっては、安川電機のロボティクス技術と、富士通とNVIDIAの顧客と一緒に取り組み、プラットフォームを提供していく。
さらに、ロボティクス以外に、ヘルスケアや行政、金融など、さまざまな分野で一緒に展開していきたい、とマハジャン氏は語った。