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Intel、Xeon 6の追加シリーズを発表 Pコア版のXeon 6700P/6500P/6300PやvRAN Boost搭載製品など

 Intelは2月24日(現地時間、日本時間2月25日)に報道発表を行い、同社が「Granite Rapids」の開発コード名こと「インテル Xeon 6 プロセッサー(P-cores採用)」(英語名は「Intel Xeon 6 processors with Performance-cores」、以下Xeon 6(Pコア))の新しいグレードとなる「インテル Xeon 6700/6500シリーズ プロセッサー(P-cores採用)」(英語名はIntel Xeon 6700/6500 series processor with P-cores、以下Xeon 6700P/6500P)および「Granite Rapids-D」の開発コード名こと「ネットワーク・エッジアプリケーション向けインテルXeon 6プロセッサー(インテル vRAN Boost搭載)」(英語名はXeon 6 processors for network and edge applications with built-in Intel vRAN Boost、以下Xeon 6(vRAN Boost搭載))を発表した。

Xeon 6700/6500(Pコア採用)(写真提供:Intel)

Granite RapidsのミッドレンジからローエンドモデルとなるXeon 6700P/6500Pの各モデルが発表される

Xeon 6700/6500(Pコア採用)のHCC(写真提供:Intel)

 今回Intelが発表したXeon 6700P/6500Pは、6月に発表されたインテル Xeon 6プロセッサー(E-cores採用)(以下、Xeon 6(Eコア採用))のうちXeon 6 6700E、9月に発表されたXeon 6(Pコア)のXeon 6900Pに次ぐ、Xeon 6の新しいシリーズとなる。

 IntelはXeon 6において、2種類のCPUコアを投入している。この2種類のCPUコアは、2022年にIntelが発表した第12世代Core(開発コード名:Alder Lake)で導入されたもので、低レイテンシーで高いクロック周波数で動く高いシングルレッド性能を発揮するPコアと、コア数を増やすことでマルチスレッド時の性能を引き上げるEコアという2種類のCPUコアが導入されている。

 クライアントPC向けの製品では、このPコアとEコアを1つの製品に異種混載することで性能を高める手法が利用されているが、サーバーでは基本的に異種混載する意味がないため、Pコア製品とEコア搭載製品が別々に投入されており、6月に発表されたXeon 6700EはEコアを144コア、9月に発表されたXeon 6900PではPコアを128コア搭載している。

Xeon 6(Pコア採用)の概要(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)

 今回発表されたXeon 6700P/6500Pは、Xeon 6900Pの下位シリーズとなる製品で、パッケージ上に統合されているタイル(=ダイ、Intelではダイのことをタイルと読んでいる)の数などを減らすことで、CPUコアの数を減らしてよりローコストで提供できるようになった製品となる。

 IntelはXeon 6でのダイ(タイル)とパッケージ構成に関して、UCC(3つのコンピュートタイル+2つのIOタイル)、XCC(2つのコンピュートタイル+2つのIOタイル)、HCC(1つのコンピュートタイル+2つのIOタイル)、LCC(1つのより小型のコンピュートタイル+2つのIOタイル)という、4つの構成を用意している。

4つのXeon 6(Pコア採用)の構成(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)
表1:UCC、XCC、HCC、LCCの構成(Intel社の資料などより筆者作成)

 なお、UCCとXCCに使われているコンピュートタイルは、タイルあたり最大44コア構成になっているが、HCCのシングルタイルは最大48コア構成のタイル、LCCのシングルタイルは最大16コアとUCC、XCCに使われているタイルとは別の設計になっている(UCCとXCCの製品実装上のコア数が最大構成よりも少ないのは、製造時の柔軟性のためにいくつかが無効にされているため)。

 このうちUCCはXeon 6900Pに利用されており、Xeon 6 6700P/6500PにはXCC以下の構成が利用されている。また、UCCではメモリは12チャンネル構成になっているが、XCC以下では製品構成の関係から8チャンネル構成に限定されている。このため、マザーボードなどのプラットフォームもXeon 6 6900Pとは異なっており、Xeon 6 6700P/6500P用の8チャンネルメモリ用マザーボードが別途必要になると、Intelは説明している。

 なおXeon 6900Pと同様に、MRDIMMと呼ばれるマルチランクの機能に対応したメモリモジュールに対応しており、MRDIMMを利用する場合には、データレートが実質的に2倍になるため、より高い帯域幅で活用することができる。

MRDIMMに対応(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)

Xeon 6900は特定顧客向けの限定モデルに、Xeon 6700は通信キャリアの5Gコアなどで採用が進む

 今回発表された製品も含めて、Xeon 6のすべての製品の機能などを表にまとめると、以下のようになる。今回発表されたXeon 6700P/6500Pの特徴としては、最大4ソケット、8ソケットに対応していることになる。

表2:Xeon 6の各シリーズ(Intel社の資料などより筆者作成)
Arm系のプロセッサーは2ソケットまでの対応だが、x86系のプロセッサーは最大8ソケットまで対応(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)

 なお、2042年6月のXeon 6(Eコア採用)発表時点で、今年の第1四半期に発表されるとアナウンスされていた288コア版のXeon 6900Eも、本日より顧客への出荷が開催されたとIntelは明らかにしたが、現時点では特定用途向けとされており、出荷する対象は限定された用途の顧客のみとなる。その意味で、Eコア採用製品の288コア製品が市場に出回るのは、来年の前半に計画されている、後継製品のClearwater Forestがリリースされた後になる。

 すでに出荷済みのXeon 6700Eに関しては、通信キャリアの5Gコア(キャリアのネットワークで契約情報やサービスなどを提供するデータセンターのこと)で採用が進んでおり、Dell、HPEなどのサーバー機器ベンダーだけでなく、Ericson、NEC、Nokia、Samsungなどの通信機器ベンダー、BTテレコム、NTTドコモ、SKテレコムといった通信キャリアが採用に向けて前向きに検討しているというコメントを出している。

 今回Intelが公開したベンチマーク結果によれば、前世代の8592+(64コア/350W)と、同じ64コア/350Wの676xPを比較した場合は1.14~1.53倍の性能を発揮し、コア数が増えた6787P(86コア/350W)を比較すると1.3~1.54倍の性能を発揮するという。

従来世代との性能比較(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)

 競合のAMDとの比較では、EPYC 9755(128コア)とXeon 6787P(86コア)とをAIの推論処理で比較すると、1.03~1.53倍、Xeon 6787Pが上回っているという(ただしIntel側は、AMDのCPUが対応していないAMX命令を利用した結果)。また、2ソケット環境でEPYC 9965(192コア)とXeon 6880P(128コア)でXeon側にMRDIMMを利用した場合、AI処理が1.2~1.38倍Xeon側が上回っているという。

AI性能でのAMDとの比較(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)
MRDIMMを利用した場合のAMDとの性能比較(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)

 また、今回Intelは昨年9月のXeon 6900P発表時には、まだ発表されていなかった第5世代EPYCとの性能比較に関しても発表している。それによれば、データベースでもHPCでもAIでも、XeonがEPYCを上回っているという結果が出たということだった。

Xeon 6900Pと第5世代EPYCとの比較(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)

 なお、Xeon 6700P/6500P、およびエントリー向けとして発表されたXeon 6300PシリーズのSKUと価格は以下のようになっている。

Xeon 6 6700/6500(Pコア採用)のパフォーマンスSKU(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)
Xeon 6 6700/6500(Pコア採用)のメインストリームSKU(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)
Xeon 6 6700/6500(Pコア採用)のシングルソケットSKU(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)
Xeon 6 6300(Pコア採用)のSKU(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)

vRAN Boost搭載製品の後継となるGranite Rapids-Dが投入、L1アクセラレーターの性能が3.2倍に

 開発コード名「Granite Rapids-D」で知られてきたXeon 6(vRAN Boost搭載)は、2023年のMWCで発表された「Sapphire Rapids-EE」こと、第4世代Xeon SP(vRAN Boost搭載)の後継製品となる製品だ。

Xeon 6(vRAN Boost搭載)(写真提供:Intel)

 第4世代Xeon SP(vRAN Boost搭載)は、同社が「インテルvRAN Boost」と読んでいるL1アクセラレーター(L1ネットワーク層のパケット処理を専用に行うアクセラレーター)を搭載しており、vRANやO-RANなどと呼ばれる、仮想化されたRAN(Radio Access Network)を構築する際に必要な機能を、シリコンレベルで搭載していることが大きな特徴だ。

 通常vRANを構成する場合、高価なL1アクセラレーターを別途搭載するのが一般的なので、Xeon 6(vRAN Boost搭載)を採用することにより、機器ベンダーや通信キャリアはコスト削減を行うことが可能になる。

 なお、vRAN Boost自体の性能も強化されており、vRANに利用した場合の性能は3.2倍に、キャパシティは2.4倍に、そして電力効率は最大70%向上しているとIntelは説明している。

 このXeon 6(vRAN Boost搭載)以外のXeon 6は、I/Oとしてはチップ間を接続するUPIとPCI Expressだけがサポートされているが、Xeon 6(vRAN Boost搭載)は最大200Gbpsのイーサネットおよびメディアアクセラレーター(動画のエンコーダー/デコーダー)も搭載しており、Xeon 6(vRAN Boost搭載)だけでエッジネットワーク機器を構成可能になっていることも特徴だ。

vRAN Boost自体も強化されており、3.2倍の性能向上(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)
AMX命令に対応(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)
メディアアクセラレーター機能を搭載(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)
Xeon 6(vRAN Boost搭載)のSKU(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)

 このほかに、Intelはイーサネット製品として200Gbpsの「インテル・イーサネットE830コントローラ・ネットワークアダプター」(英語名:Intel Ethernet E830 Controllers and Network Adapters、以下E830)および10Gbpsの「インテル・イーサネット E610 コントローラ・ネットワークアダプター」(英語名:Intel Ethernet E610 Controllers and Network Adapters、以下E610)の製品を発表した。

 前者は、データセンター向けの最大200Gbpsのイーサネットコントローラおよびアダプターを構成可能で、1×200GbEないしは2×100/50/25/10GbE、8×25/10GbEの構成が可能になっている。後者は10GBASE-T、5G/2.5G/1000BASE-Tのイーサネットアダプターとして利用することができ、アプリケーションやエッジやワークステーションなどが想定されている。

Intel E830(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)
Intel E610(出典:Intel Xeon 6 Product Launch、Intel)