ニュース

Intel、「Xeon 6 6700E」を正式発表 第2世代Xeon SPと比べ1/3のラック数で性能2.6倍/電力効率4.2倍を実現

 米Intelは、6月4日から台湾・台北市で行われているCOMPUTEX 2024の基調講演において、同社 CEO パット・ゲルシンガー氏が登壇し、同社の新製品などの各種発表を行っている。

 この中でIntelは、同社が開発コード名「Sierra Forest(シエラフォレスト)」として開発してきた、CPUコアの密度を高めた新製品「高効率コア搭載 インテルXeon 6プロセッサー」(英語名ではIntel Xeon 6 processors with Efficient-cores、以下、高効率コア搭載Xeon 6)を正式に発表した。

Intelが発表した高効率コア搭載 インテルXeon 6プロセッサー(開発コード名:Sierra Forest)

 PC向けのプロセッサーで採用されている、電力効率に優れたEコア(高効率コア)を採用した高効率コア搭載Xeon 6は、マイクロサービスのような、クラウドでのアプリケーション実行などに特化しているほか、1CPUで144コアというコア数を実現し、高密度なサーバーを構築できることが特徴。第2世代インテルXeonスケーラブル・プロセッサー(Cascade Lake)と比較して、サーバーのラック数が1/3になりながら、電力効率は4.2倍になり、ピーク性能は2.6倍になるとしている。

新しいXeon 6のブランド名が導入されるSierra ForestとGranite Rapids

 今回のCOMPUTEX 2024でIntelが発表したのは、電力効率が高いCPUコアとなるEコアを採用した高効率コア搭載Xeon 6だ。

 これまでIntelは、Xeonのブランド名を「第x世代Xeon スケーラブル・プロセッサー」と、製品名に世代名とスケーラブルをいれて呼んできたが、今回から世代名を廃止し、Xeonの後に世代名を意味する数字を入れるとともに、スケーラブルの名称を廃止し、単にプロセッサーとだけをつけて呼ぶように変更している。

 このため、今回発表されたXeon 6は「インテルXeon 6プロセッサー」(以下、Xeon 6)が正式名称となる。今後はこの形で、Xeon 6、Xeon 7……などの形で名称がアップグレードされていくことになるだろう。

 従来世代と今回世代で大きく異なる特徴は、2つの開発コードネームを持つ製品が、どちらもXeon 6のラインアップの1つとして発表されたことだ。Intelは、クライアントPC向けとして、2つの異なる種類のCPUコアを搭載し、必要に応じて切り替えることで低消費電力と高性能のバランスを実現している。

 低消費電力のCPUコアデザインを「Eコア」(高効率コア、Efficiency-Core)、高性能のCPUコアデザインを「Pコア」(高性能コア、Performance-Core)と呼び、Core Ultraなどのクライアント向けPCには両方を搭載している(これをIntelでは、ハイブリッドと呼んでいる)。

 それに対して今回のデータセンター向けの製品では、Eコアを搭載した製品が「Sierra Forest」、Pコアを搭載した製品が「Granite Rapids(グラナイトラピッズ)」と別々の製品として開発され、ハイブリッド構造にはなっていないことが特徴だ。

2つのXeon 6

 なぜデータセンター向けではハイブリッドにしないのかというと、データセンターではその必要性がないからだ。

 クライアントPCはアイドル状態であることがほとんどで、CPUの利用率が100%になることがむしろ少ないため、ハイブリッドにして、アイドル時はEコアに切り替えることで、消費電力の削減が可能になる。

 それに対して、現状のデータセンターではCPUはほとんどフルロードの状態なので、ピーク時の消費電力を削減することには意味があるが、アイドル時の消費電力を削減する意味はあまりない。

 ただ顧客からは、ピーク時の性能が必要なアプリケーション(例えばAIなど)と、ピーク時の性能よりもとにかくCPUコア数が多い方がいいアプリケーション(例えばマイクロサービスなど)は違っており、それぞれに異なった種類のCPUがほしいという声(だからこそCSPは密度を高めたArm CPUを自社設計して投入している)があり、今回Intelは、それに応えて、ワークロードに合わせた2種類の製品を投入したという形だ。

AIとマイクロサービスは5倍に成長しているが、それぞれのワークロードはCPUに求めるニーズが違う
左がPコアに最適なワークロード、右がEコアに最適なワークロード

Eコア2製品、Pコア2製品の展開だが、Eコア製品とPコア製品はピン互換のXeon 6

 Xeon 6は、以下の4種類のシリーズがあり、それぞれ異なる製品が投入される計画だ。

 というのも、Sierra Forest、Granite Rapidsそれぞれにバリエーションがあり、それぞれの製品が異なるワークロードに対応するためだ。

(1)Xeon 6 6700E(Sierra Forest、1ダイ版、最大144 Eコア)
(2)Xeon 6 6700P(Granite Rapids、2ダイ版、1ダイ版、ハーフダイ版、最大86 Pコア)
(3)Xeon 6 6900E(Sierra Forest、2ダイ版、最大288 Eコア)
(4)Xeon 6 6900P(Granite Rapids、3ダイ版、最大128 Pコア)

Xeon 6の、2つのシリーズの製品概要。6700シリーズ、6900シリーズそれぞれにPコアとEコアの製品がある

 (1)と(2)は同じパッケージサイズ/サーマル仕様でピン互換、(3)と(4)も同じパッケージサイズ/サーマル仕様でピン互換になっており、6700同士、6900同士では同じマザーボード、BIOSで提供され、交換して利用できる。

 こうした仕様を実現できた理由は、Sierra ForestとGranite Rapidsがパッケージ内で、複数のダイが混載するチップレット構造を採用しており、かつIOダイが両製品で同じダイを利用しているため、容易に互換性が実現できるように配慮された設計になっているからだ。

(1)2つのIOダイ+1つのSierra Forestダイ=Xeon 6 6700E
(2)2つのIOダイ+1つ~2つのGranite Rapidsダイ=Xeon 6 6700P

Xeon 6 6700のバリエーション

(3)2つのIOダイ+2つのSierra Forestダイ=Xeon 6 6900E
(4)2つのIOダイ+2つのGranite Rapidsダイ=Xeon 6 6900P

Xeon 6 6900のバリエーション

 同じマザーボードを共有することで、プラットフォームのコストをおさえられる(別々のマザーボードにすると、開発コストや製造コストが上がり、結果マザーボードの価格が高くなってしまう)。

 なお、サポートするソケット数はXeon 6 6700E、Xeon 6 6900E、Xeon 6 6900Pは1~2ソケットとなるが、Xeon 6 6700Pに関しては4ソケットにも対応する。

 また、メモリはXeon 6 6700E、Xeon 6 6700Pが8チャンネルのDDR5-6400ないしは、8800MT/秒のMCR DIMMに対応する。Xeon 6 6900E、Xeon 6 6900Pは同じメモリで12チャンネルになっているのが特徴だ。

 PCI ExpressはXeon 6 6700E、Xeon 6 6700Pが88レーン(Gen 5)、Xeon 6 6900E、Xeon 6 6900P は96レーン(Gen 5)に対応する。いずれもCXL 2.0に新しく対応し、Type 3のデバイスとなるCXLメモリに対応する。

 以前のシステムで利用していたDDR4のメモリモジュールをCXLメモリとして利用可能になっており、インメモリデータベースなどメモリ容量が重要なアプリケーションなどにこれを使うと、性能とコストパフォーマンスの両方を実現できる。

2つのシリーズ、それぞれの特徴

今回発表されたのはXeon 6 6700Eのみ、6900Pは第3四半期に、残りの製品は来年の第1四半期に

 こうした4製品の中で今回発表されたのは、(1)のXeon 6 6700Eのみとなる。残りの製品はXeon 6 6900Pが第3四半期、Xeon 6 6900EとXeon 6 6700Pは2025年の第1四半期が予定されている。

 このように発表時期が分かれたことに関して、Intel 副社長 兼 Xeon Eコア製品担当 事業部長のライアン・タブラ-氏は「どちらの製品も顧客からの引きが強く、準備が整ったものから順次投入することにした」と述べ、Xeon 6 6700Eが最も早く準備が整ったため、こうした対応になったのだと説明した。

Xeon 6のリリース時期、今回発表されたのはXeon 6 6700Eのみで、Xeon 6 6900Pが第3四半期に、残りは2025年第1四半期にリリース予定
Xeon 6 6900Pは2024年第3四半期の正式発表予定
Xeon 6 6700Pは2025年第1四半期の正式発表予定

 ただし、来年にはSierra Forestの後継となるClearwater Forest、そしてIntelはまだ公式には明らかにしていないが、Granite Rapidsの後継となるDiamond Rapidsが計画されており、それらの製品と発表の間が短くなってしまう可能性が懸念点だ。ただ、仮にそれらの2025年版製品がSierra Forest/Granite Rapidsとピン互換であれば、大きな問題にはならないだろう。

 性能に関してだが、2ソケットのXeon 6 6700E(6780E、144コア版)と、2ソケットの第5世代Xeon Platinum 8592+(64コア版)を比較すると、性能はほぼ同じか若干上回る程度~最大42%アップを実現。電力効率は最小でも20%改善から最大では66%改善しており、大きな効果があることが見てとれる。

 第2世代Xeon SPとの比較では性能でおおむね2.6倍、電力効率はおおむね4.2倍となっており、これらの性能を、ラック数でいうと1/3のラックで実現できる。従来製品を置きかえることで、電気代などのTCOを削減できる点が、Xeon 6 6700Eの特徴だと考えられる。

Xeon 6 6700Eと第5世代Xeon SPとの性能比較
Xeon 6 6700Eと第2世代Xeon SPとの比較、右端のネットワークは特別なネットワークSKU同士での比較

 なお、今回発表されたXeon 6 6700EのSKU構成は以下のようになっている。

Xeon 6 6700EのSKU構成