ニュース
Intel、エッジサーバー向けに100GbE内蔵の新プロセッサ「Xeon D-2700/1700」を提供
2022年2月25日 01:00
米Intelは24日(現地時間)午前にオンラインで会見を行い、同社がMWC(Mobile World Congress) 2022向けに発表する概要を明らかにした。
この中でIntelは、間もなく出荷開始となるXeon Scalable Processors(以下、Xeon SP)の次世代製品(開発コード名:Sapphire Rapids)を利用したvRAN(virtual Radio Access Network)ソリューションを、Rakuten Symphony(楽天子会社)、サムスン、エリクソンなどと共同して提供していく計画であることを明らかにした。
また、同時にエッジサーバー向けの「Xeon D」の新しい製品としてXeon D-2700とXeon D-1700という2製品を追加したことを明らかにした。上位グレードとなるXeon D-2700は、24コアのSunny CoveコアのCPUを搭載し、4チャネルのDDR4-3200メモリ、最大で32レーンのPCI Express Gen 4などのスペックを備える。さらにチップに100Gbpsのイーサネットコントローラを統合し、内蔵されているスイッチング機能を利用して最大8ポートのイーサネットを実装可能になる。
これらにより、前世代と比較して画像認識で2.4倍、5G UPFのようなネットワークの処理で1.7倍程度性能が向上しているとIntelは説明している。
間もなく投入される次世代Xeon SPがvRANのキャパシティを倍にすると公表、楽天子会社などで採用予定
Intelは3月に、次世代Xeon SPとなるSapphire Rapidsの出荷を計画していることを、既に明らかにしている(正式発表がいつになるのかはまだ明らかにされていない)。
今回のMWCにおいて、Intelは、このSapphire Rapidsベースの次世代Xeon SPを用いたvRAN(仮想無線アクセスネットワーク:通信キャリアなどの通信を制御する機器を汎用のサーバー機器で置き換えること)を利用することで、vRANのキャパシティが倍になると説明した。
同社によれば、通信キャリアが商用で既に実用化しているvRANは、現状はIntelのXeonベースがほぼ100%で、通信キャリアが5Gへ移行するのと並行して、従来型の専用機からXeon SPベースのvRANへの転換が進んでいるという。こうして次世代Xeon SPベースに置き換えることで、例えば64T64RのMassive MIMOといった、負荷の高いパケット処理なども十分にまかなえる性能が実現できるとした。
なお同社では、Sapphire Rapidsを採用したvRANのシステムは、楽天子会社のRakuten Symphony、サムスン、エリクソンなどから登場する見通しで、現在それらの会社と協力して開発を進めていると説明している。
100GbEを内蔵したXeon D-2700/1700、前世代と比較してAI推論性能が2.4倍に強化
そして今回Intelは、開発コード名「Ice Lake-D(アイスレイクディー)」で知られてきた、ネットワーク機器やエッジサーバー向けの新Xeon Dを発表した。
発表されたのは、Xeon D-2700/Xeon D-1700の両シリーズで、前者は2018年に投入されたSkylake(開発コード名)ベースのXeon D-2100の、後者は2019年に投入されたHewitt Lake(開発コード名)ベースのXeon D-1600シリーズの後継となり、エッジサーバー向けの製品として投入される。
いずれもSoC(System on a Chip)として提供され、Xeon D-2700は52.5×45mm、Xeon D-1700は45×45mmのBGAパッケージで提供される。
開発コード名にIce Lakeの名前が含まれていることからもわかるように、CPUコアのアーキテクチャには、Ice Lakeに採用されていたSunny Coveコアが採用されており、Intelの10nmプロセスルールで製造される(従来製品は14nmで製造されていた)。
コア数はXeon D-2700が20~4コア、Xeon D-1700が10~4コアとなる。Xeon D-2100が16~4コア、Xeon D-1600が8~2コアだったことを考えるとどちらもCPUコア数が増えている。
特に、2100(Skylakeベース)から2700(Ice Lake-Dベース)はCPUのアーキテクチャが大きく進化しており、L2キャッシュが1MBから1.25MBに、L1データキャッシュが32KBから48KBに、Out-Of-Orderウインドウが224から352に、インフライトのロード+ストアが72+56から128+72へと強化された(いずれもコアあたり)ほか、Deep Leaning Boost(VNNI)などのAVX512の新命令が複数追加されるといった強化が行われ、暗号化や復号化、AI推論などで性能が大幅に向上している。
また、新しいセキュリティ機能としてIntel SGX(Software Guard eXtentions)に対応しており、重要なデータを保護した状態のままアプリケーションを実行し、ハッカーなどの攻撃からデータを保護することが可能になる。
メモリはDDR4-3200に対応し、2700は4チャネル構成、1700は3チャネル構成が可能。PCI Express Gen4は2700が32レーン、1700が16レーンとなっており、いずれの製品も24レーンのPCI Express Gen3をサポートする。そのうちいくつかをSATAに割り当てたりUSBに割り当てたりといった、柔軟なI/Oポート構成が可能になっている。
新Xeon Dの最大の特徴は、強力なイーサネットコントローラと、暗号化処理をオフロードできるQAT(Quick Assist Technology)を搭載している点で、CPUに負荷をかけずにパケット処理を行える。
Xeon D-2700は100Gbpsに対応したイーサネットコントローラに加え、FPP(Flexible Packet Processor)とスイッチ機能も内蔵。さらにはQATも最新の第3世代QATが搭載されており、より高速なIPsecの暗号化パケット処理が可能になる。
Xeon D-1700は100Gbpsイーサネットコントローラを内蔵するが、FPPの搭載は無く、QATも従来世代(第2世代)が搭載されている。なお、いずれの製品も最大8ポートのイーサネットポートを実装可能だ。
Intelによれば、新しいXeon D-2700(Xeon D-2798NX)と従来モデルのXeon D-2100(Xeon D-2187NT)を比較した場合に、セキュリティ関連の処理で1.52倍、AI推論による画像認識で2.4倍、5G UPFのネットワーク通信処理で1.74倍の性能向上を実現していると説明している。
Intelによれば、70を超えるネットワーク企業が新しいXeon Dの採用を検討しており、その中には楽天子会社のRakuten Symphony、Cisco、Jupiter Networksなどが含まれているとのことだ。