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日立の2024年度上期連結業績は減収増益、ただした日立Astemoを除いた3セクターでは増収増益に
2024年10月31日 00:00
株式会社日立製作所(以下、日立)は30日、2024年度上期(2024年4月~9月)連結業績を発表した。
売上収益は前年同期比8.3%減の4兆5459億円、調整後営業利益は同24.2%増の4047億円、Adjusted EBITAは同16.5%増の4670億円、税引前利益は同36.4%増の4393億円、当期純利益は同39.8%増の2922億円と、減収増益になった。
だが、2023年10月に連結対象から外れた日立Astemoを除いた3セクター(デジタルシステム&サービス、グリーンエナジー&モビリティ、コネクティブインダストリーズ)の売上収益は、前年同期比16%増の4兆5459億円、Adjusted EBITAは前年同期から1327億円増の4924億円と、大幅な増収増益になっている。
日立 執行役専務 CFOの加藤知巳氏は、「第2四半期は、国内IT市場においてDXおよびモダナイゼーションの追い風を受けるデジタルシステム&サービスと、送電網設備などの更新需要や再生可能エネルギー、データセンター関連ソリューションが好調なグリーンエナジー&モビリティがけん引している。第2四半期の売上収益は社内計画に対して約1100億円増加しており、Adjusted EBITAは140億円の増加となっている」と述べた。
2024年度第2四半期(2024年7月~9月)のLumada事業の売上収益は前年同期比25%増の7200億円となり、全社売上収益に占める割合は31%となった。
Lumadaの売上収益の内訳は、マネージドサービスが同44%増の2570億円、コネクテッドプロダクトが同8%増の2020億円、システムインテグレーションが同25%増の1780億円、デジタルエンジニアリングが同20%増の830億円。
Lumada事業のセグメント別売上収益は、デジタルシステム&サービスが前年同期比14%増の3050億円、コネクティブインダストリーズが同24%増の2680億円、グリーンエナジー&モビリティが同58%増の1470億円となった。
Lumada事業に関するトピックスとして、シンガポールテレコムと、日本およびアジア太平洋地域における次世代データセンターおよびGPUクラウド分野での戦略的提携を拡大し、顧客企業のAI導入サポートを強化したほか、日立エナジーが、GlobalLogicおよびHitachi Digital Servicesと連携して、設備資産の統合管理などのデジタル事業を強化し、これをLumadaとしてラインアップ。
鉄道システム事業では、NVIDIA のAIテクノロジーを搭載したデジタルアセットマネジメントサービス「HMAX」を開発し、コペンハーゲンメトロから「HMAX」を受注。列車や信号といったインフラの管理を最適化するAIデジタルソリューションの提供を通じて、デジタルサービス事業を拡大したという。
また、ロボティクスSI企業の独MA micro automationと、製薬エンジニアリングサービス企業の米Castle Hillの買収が完了し、成長分野におけるインテグレーション事業の強化に乗り出したことも強調した。
なお、GlobalLogicの第2四半期業績は、売上収益が前年同期比18%増(ドルベースでは14%増)の735億円、Adjusted EBITAは前年同期から18億円増の144億円と、増収増益になった。欧州を中心に顧客投資抑制が継続するものの、北米での受注により高い成長を維持。デジタルシステム&サービス以外のセクターとのシナジー効果や、生成AIに関する需要を新たに取り込んでいるという。
また、データセンター事業についても説明。これまでの国内データセンター事業者との連携に加え、シンガポールテレコムとの戦略的提携により体制を強化。日立エナジーの変圧器や、日立ヴァンタラのストレージ、日立GLSの空調機器のほか、コネクティブインダストリーズの受変電機器やUPS、入退室管理システムを含めてビジネス機会を拡大しているという。「データセンタービジネスは海外が圧倒的に多い。だが、今後は国内需要も増加することを期待している」と述べた。
セグメント別の上期業績
セグメント別の上期業績は、デジタルシステム&サービスの売上収益が前年同期比10%増の1兆3124億円、Adjusted EBITAは前年同期から341億円増の1691億円となった。
「第2四半期は、フロントビジネスにおいて前年同期にATM事業での改刷対応があり、その反動を受けたが、国内事業を中心に、大口案件を含むDXおよびモダナイゼーション、マイグレーションなどが堅調に推移した。社会BUでの国内エネルギー関連企業、官公庁などのビジネスが伸びている。ITサービスでは、クラウドやセキュリティの高度化により、Lumada事業が拡大。売り上げの増加に伴い、利益も改善している。サービス&プラットフォームでは、海外ストレージが第1四半期に前倒しとなった影響などによってる売上減があったが、GlobalLogicや国内DX、クラウドサービスが伸長した。国内IT需要の堅調ぶりは続くと見ている」と語った。
グリーンエナジー&モビリティの売上収益は前年同期比33%増の1兆7857億円、Adjusted EBITAは前年同期から732億円増の1529億円。HDVCに加えて、変圧器や開閉装置などが伸長した日立エナジー、信号事業を中心としたタレス社のGTS部門を買収した鉄道BUの売り上げが増加した。
コネクティブインダストリーズの売上収益は前年同期比2%増の1兆4950億円、Adjusted EBITAは前年同期から213億円増の1670億円となった。ビルシステムやインダストリアルデジタル、水・環境、計測分析システムが堅調に推移した。
2024年度上期の受注状況は、デジタルシステム&サービスが前年同期比9%増の1兆5222億円。そのうち、そのうちフロントビジネスは同9%増の7177億円、ITサービスは同11%増の5698億円、サービス&プラットフォームは同9%増の5190億円となっている。
また、グリーンエナジー&モビリティの受注高は前年同期比42%増の3兆1154億円。そのうち、日立エナジーが同18%増の1兆9660億円となった。海外の大口保守サービスの契約を締結した鉄道BUと、HVDCが好調な日立エナジーが大きく伸長したほか、原子力事業も国内大口契約により増加した。
コネクティブインダストリーズの受注高は前年同期比2%減の1兆5198億円となっている。
なお、デジタルシステム&サービスおよびグリーンエナジー&モビリティは、上期受注高が、上期売上収益を上回っているという。
また上期の地域別業績では、日本の売上収益が前年同期比5%減の1兆6790億円となり、構成比は37%。海外は10%減の2兆86698億円で、構成比は63%となった。海外のうち、アジアが前年同期比25%減の9215億円で構成比は20%、北米が同15%減の7412億円、構成比は17%。欧州は同14%増の8725億円となり、構成比は19%。その他地域が同2%増の3315億円で、構成比は7%となった。
2024年度通期業績見通しを上方修正
一方、2024年度(2024年4月~2025年3月)通期業績見通しを上方修正し、売上収益は1500億円増加の前年比5.9%減の9兆1500億円。Adjusted EBITは据え置き、同12.7%増の1兆350億円、当期純利益も据え置き、同1.7%増の6000億円とした。
日立の加藤CFOは、「グリーンエナジー&モビリティで、売上収益およびAdjusted EBITを上方修正した。3セクターで見れば、売上収益は前年比7%増となり、Adjusted EBITは195億円上方修正し、前年比23%増の1兆500億円となる。DXやGX需要による新たな事業機会をとらえており、3セクターでは増収増益を見込む。コアFCFは、2024中期計画の3年累計目標を3000億円上回る1兆5000億円の見通しである。2024中期経営計画のKPIはおおむね達成できる」と自信をみせた。
Lumada事業の売上収益は1000億円増の前年比18%増の2兆7500億円とし、全社売上収益に占める割合は30%を見込む。内訳では、マネージドサービスが1100億円増の9600億円に上方修正している。
「Lumada事業の成長と収益性の向上が、今後の日立全体の売り上げと収益の拡大に貢献することになる」(加藤CFO)と述べた。
なお日立では、2024年度に1兆円の成長投資を計画している。そのうち、3000億円を生成AI分野に投資することになる。
加藤CFOは、「生成AIに関しては、高信頼データ管理ソリューションであるHitachi iQやハイブリッドクラウドを中心とした『インフラの開発』、顧客のニーズに応じて、LLMを選定するサービスなど、生成AIのライフサイクルサービスを提供する『サービスエンジニアリングの強化』、社外リソースを含めた生成AIに関する『人材拡充』に投資をしていく。M&Aについてもさらに検討していく」と語った。
また、残りの7000億円については、「DXとグリーントランスフォーメーション(GX)で成長する製造分野」に対する投資で2000億円、「社会インフラ事業のサービス化の加速」への投資で2000億円、「案件に恵まれた際の機動的M&A」で3000億円を計画しており、「案件に恵まれた際のM&Aは未定だが、7000億円は2024年度に使い切る姿勢で進めている。いまは、成長の機会があると考えており、2025年度からの次期中期経営計画にもまたがってでも、成長投資をしていくことになる」と語った。