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両備システムズ、“IT技術を生かした総合ロジスティクスIT企業を目指す”新方針を説明

2030年度までに同分野で売上高30億円を目指す

 株式会社両備システムズは2日、物流領域におけるソリューション製品のラインアップを強化。新たな方針として、「IT技術を生かした総合ロジスティクスIT企業を目指す」とした。物流ソリューション関連事業で、2030年度までに売上高30億円を目指す計画だ。

 また、2024年度(2024年12月期)からスタートしている中期経営計画の進捗状況について説明。両備システムズ 代表取締役副社長兼COOの小野田吉孝氏は、「まずは自治体システム標準化をしっかりとやりきる。また、自治体システム標準化後を見据え、民間事業の拡大を本格化させることを目指している」とし、「この8カ月間は、大手アパレルメーカーからの受注や、物流ソリューションの導入実績も出ている。省庁関連の大型案件も獲得した。十分な手応えがある」と総括。「IT人材が不足しているという課題がある。人材育成とともに、パートナーとの連携をさらに増やしていきたい」と、今後の成長戦略に意欲をみせた。

両備システムズ 代表取締役副社長兼COOの小野田吉孝氏

 同社では、2030年度に売上高500億円を目指す長期ビジョンを打ち出しており、2024年度~2026年度の中期経営計画を、「浸透・推進期」と位置づけ、既存事業の拡張に加えて、新規事業およびM&Aによる戦略的成長を通じた事業領域の拡大とビジネスモデルの転換を図る方針を打ち出している。

長期ビジョン「2030年に向けて」

 具体的には、同社が得意とする公共事業では、自治体システム標準化への対応を加速する一方、民需事業を拡大に注力。製造・流通、運輸・交通、物流・倉庫内分野向けシステムをクラウドサービスとして提供する体制を整える。また、セキュリティ事業やクラウド事業の拡大、グローバル展開の推進、生成AIの活用やメディカルAIなどの新規事業領域への挑戦を進めている。

中期経営計画(2024-2026)今後の展開:売上目標

 売上高の約7割を占めている公共事業においては、自治体システム標準化への取り組みを強化。両備システムズだけで、1000団体以上が対象になると見込んでいる。また、アフター自治体システム標準化に向けた事業基盤の構築を進める。

 同社では、自治体システム標準化の対象となる20業務システムのうち、重点領域のひとつとして、厚生労働省所管の健康管理システムにおいて、「健康かるて」を提案。総務省所管の税務システムにおいては、グループ会社であるシンクの債権一元管理型滞納整理システム「THINK CreMaS Cloud」による提案を強化する。

地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化

 さらに、健診機関向けソリューションとして、けんしん予約オールインワンサービス「AITEL(アイテル)」、巡回健診データ収集システム「Smart J One」、健康経営・健康管理支援システム「SASAWELL(ササウェル)」を提供し、健診機関の業務をトータルで支援。今後は、これらを統合した健診機関向けソリューション「WELL SHIPシリーズ」としての展開を強化する。

健診機関向けソリューション

 「自治体システム標準化関連の売り上げのピークは、当初見込みの2026年から、2025年に前倒しになると見ている。2024年度には24億円を見込んでいたが、これが22億円となる一方で、2025年度は80億円の見通しが、93億円に拡大する。運用や保守によるビジネスが継続するため、自治体システム標準化後も想定よりは売上は減少しない」と見込んでいる。

 「健康かるて」は、2026年度までに約900団体への導入を計画。「THINK CreMaS Cloud」は、約700団体を目指す。

自治体システム標準化を契機に導入増を図る

 また省庁向けには、デジタル行財政改革における主要施策への対応を推進。関連省庁との連携を強化するため、東京拠点とした営業活動に力を注ぐ。さらに、医療・健康ビジネスにおいては、2022年に買収した電子カルテシステムを展開するマックスシステムとのシナジー創出や、ウェルネスビジネスの拡大に取り組む。

 今後の成長領域に位置づけている民需事業では、製造・流通業向け生産/販売管理システムを地域密着型で展開する一方、アパレル・物流・モビリティ向け製品では、全国展開を進める方針を打ち出している。また、SI系直販ビジネスから、プロダクト系ビジネスへの転換を進めており、現在、約4割をプロダクト系ビジネスが占めている。

 ファッション・アパレル業向け統合システム「Sunny Side」は、アパレルメーカーでの生産業務のほか、販売、物流、小売業務までをカバーしているのが特徴だ。卸販売や生産管理に対応したSunny Side for Salesは、2026年度に10件の導入を計画。小売販売のSunny Side for Retailは27ユーザー、150ブランドへの導入を目指す。2024年末には倉庫管理システムの「Sunny Side for WMS Option」の開発が完了する予定であり、これらを組み合わせた提案も進める。

アパレル向けソリューション

 また、物流向けソリューションでは、2024年問題への対応を視野に入れ、荷待ちや荷役などの時間を見える化して分析、効率化に貢献するソリューションを提供。荷待ちや荷役などの時間を30%以上削減し、最大では60%の削減が可能になるという。

 物流向けソリューションを構成するバース入退場管理システム「R-Teams」では、2026年度に15施設への導入を計画。駐車場管理システム「IT-Parking」では30施設、AIカウントツール「CountShot」では25施設への導入を目指している。

物流向けソリューション

 さらに、倉庫内向けソリューションにおいては、ロジスティードソリューションズとのパートナーシップによって、物流センター管理システム「ONEsLOGI/WMS」の販売を開始。両備システムズのデータセンター「Ryobi-IDC」内に環境を構築してクラウドサービスとして提供する。また、両備システムズのセキュリティ製品やBPOサービスと組み合わせた提案を進める。

倉庫内向けソリューション

 加えて、サステナブルな社会への対応として、静脈物流の実現に貢献できるソリューションを創出する考えも明らかにした。

 これらの物流向けソリューションや倉庫内向けソリューションなどの提供により、同社では、「総合ロジスティクスIT企業」を目指す方針を新たに打ち出した。

 両備システムズ 執行役員 営業本部技術営業統括部統括部長の橋本渉氏は、「アパレル向けソリューションにおいては、独自の倉庫管理システムをラインアップする一方、アパレル分野以外の倉庫管理システムはロジスティードソリューションズと協業。さらに、倉庫内や物流向けの各種ソリューションのデータを一気通貫で連動できることを強みとして提案していく。また、自動倉庫やAGV、デパレタイザーなども、パートナーとの連携によって提案するほか、両備グループで輸配送および荷役業務サービスを行う両備トランスポートとも共同で事業を進め、引き続きM&Aも視野に入れている。物流業界全体を網羅することは難しい。まずは、当社が基幹システムを提供しているアパレルや製造、流通といった親和性が高い分野での事業展開を進める。将来的には、経営分析につながるBIツールなどを備えた物流統合システムを提供していくことになる」と述べた。

両備システムズ 執行役員 営業本部技術営業統括部統括部長の橋本渉氏

 また、両備システムズの小野田COOは、「これまでは、『点』で進めてきた物流ソリューションが、『面』で展開できるようになってきた。ソリューションがそろい、データが流れる仕組みを確立することから取り組んでいく。さまざまな形のパートナー連携を模索し、別会社を作って展開することも増えていくだろう」と述べ、「物流ソリューションは、2030年度に売上高30億円を目指すが、気持ちとしては50億円を目指したい」と事業拡大への意気込みを語った。

 一方、セキュリティ事業およびクラウド事業については、自治体や医療、教育分野を中心に140万ライセンスの実績を持つ多要素認証セキュリティ「ARCACLAVIS」で、2024年3月からパナソニックコネクトとの共創を開始。2024年8月から、新製品として、「ARCACLAVIS NEXT」を発売し、ワンタイムパスワード認証機能も提供する。

多要素認証セキュリティ

 また、給付金支援包括BPOサービスでは、給付事務の一括管理が可能な点が特徴であり、AWSやGoogle Cloud、Salesforce、Microsoft AzureといったパブリッククラウドとVPNで接続したセキュアな業務管理を実現している点や、同社が持つBPOサービスとの連携、AIやRPAを活用した業務支援を行える点などが評価されているという。

給付金支援包括BPOサービス

 グローバル展開では、ラオスで実施してきたデジタルIDに関する調査事業が2024年3月に完了。2024年8月から実証試験を開始しているという。実証実験では、2025年3月31日までの期間、ラオスの首都であるラオス首都のビエンチャン特別市内において、現地通信事業者の営業拠点の選定や、ラオス政府機関を始めとする関係者との協力体制を確立したのち、ラオス語化したデジタルID登録システムの構築を進め、ラオス国民の基本情報や顔情報を登録。運用業務面やシステム面での検証を進める。

ラオス デジタルID

 新規事業への取り組みでは、既存製品への生成AIの導入を進めていることに触れた。自治体向けグループウェアシステム「公開羅針盤V4」では、愛媛県宇和島市が生成AIによるAIチャットサービスを利用。全職員が自治体業務における文章作成や添削、専門用語の解説などに使用しているという。LGWAN上で生成AIを利用できる点も特徴だ。また、両備システムズでは、「公開羅針盤V4」において、問い合わせAI回答サービスを提供。自治体ごとに、独自データを学習した生成AIの利活用環境を提供し、業務効率化を支援できるとしている。

 メディカルAI分野では、岡山大学などとの協業による炎症性腸疾患関連腫瘍AI診断システムや、早期胃癌深達度AI診断支援システム、胆道癌AI診断支援システムを開発してきた成果があり、中でも、早期胃癌深達度AI支援システムは、2024年度内に事業化する計画だという。

メディカルAI

 また、Fintechの領域では、為替市場の分析や予測、各取引戦略の正誤判断、運用ポートフォリオのリスク管理、金融市場の変化に対応したアルゴリズムの更新までを行う運用システムを開発しており、2022年7月からインハウスによる運用を開始してきた経緯がある。2025年度には、AI運用による為替ヘッジファンドの設立を計画中であり、年間リターンで15%を目標にするという。

Fintech

 なお、両備システムズでは、9日3日、4日の2日間、東京・丸の内のJPタワーホール&カンファレンスで、「両備共創DX2024」を開催。「民需系製品・サービスの事業拡大を共創によって実現する」をコンセプトに、DX業務ソリューション、セキュリティ、クラウドサービス、カーボンニュートラルの4つのテーマで、ソリューションを展示する予定だ。

両備共創DX2024