ニュース

日本IBM、システム開発や運用に生成AIを活用する「IT変革のためのAIソリューション」を発表

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は7日、ビジネスのためのAIおよびデータプラットフォームであるIBM watsonxをはじめとした最新のAI技術を活用し、戦略策定からシステム開発、運用、プロジェクト管理まで包括的に支援する「IT変革のためのAIソリューション」を体系化し、提供を開始すると発表した。

 日本IBMでは、多くの企業がITシステム開発の効率化と迅速化やシステム運用の省力化、高度化のため、さまざまな技術を活用し、成果を上げてきたが、現在利用しているシステムのモダナイゼーションや、今後、急拡大が予想されるAIを活用した新たなシステムの開発、ますます複雑化するシステム運用などに加え、先端IT人材の不足もあり、人手での対応はさらに難しくなってきていると説明。

 今回体系化した「IT変革のためのAIソリューション」は、システム開発や運用などにAIを活用することで、省力化や生産性向上、有識者の知見の大規模言語モデル(LLM)への取り込みが可能となり、情報システムに携わる人々の働き方を大きく変革していけるとしている。実際に、複数の企業で同ソリューションを適用した実証実験において、AIを活用したシステム構築モダナイゼーションとIT運用の自動化、それぞれにおいて生産性向上が図れたという。

 「IT変革のためのAIソリューション」は、AI戦略策定とガバナンス、コード生成のためのAI、テスト自動化のためのAI、IT運用高度化のためのAI、プロジェクト管理のためのAIの5つから構成される。

 AI戦略策定とガバナンスでは、ITライフサイクルにおける生成AI活用の戦略策定とガバナンスを提供する。さまざまな事例に基づいた最適なAIユースケースや、コード生成のためのAIなどを活用した、生成AIプロトタイプによる生成AI活用シナリオの早期確立と、生成AIを組み込んだ開発プロセス・標準策定によるガバナンスと適用対象を拡大する。将来的には、ベストプラクティスを学習した生成AIによる新たな価値提供も実現する。

 コード生成のためのAIでは、生成AIとローコード開発などを最適融合し、システム構築ライフサイクル全体を効率化する。基盤モデルのwatsonx.aiに、IBM共通追加学習と顧客標準コードを個別学習させることで、顧客環境に最適化した「仕様書からJava/COBOL/PLIコードを生成」「コードから仕様書の作成」に加え、「COBOL/PLIの既存システム分析や、テスト自動化、基盤コード生成」が可能となる。これらはハイブリッド/マルチクラウドにも対応する。

 テスト自動化のためのAIでは、従来のテスト自動化の仕組みに生成AIを組み込み、テスト効率化と仕様変更に対する柔軟性を向上させる。要件や仕様情報を入力後、テストデータを自動生成し、テストスクリプト生成からテスト実行/検証まで、画面打鍵テストのプロセスをシームレスに自動化する。これまで自動化が難しかった単発の機能テストや、仕様変更が多いアジャイル開発でも柔軟に自動化を適用することで、効率化を実現する。

 IT運用高度化のためのAIでは、生成AIや自動化技術の活用により、IT運用を高度化する。問い合わせに対するチャットボットでの自動応答によりオペレーターの負担を軽減し、定型作業の自動化、インシデント検知から対応まで自動化し、複数イベント集約による復旧時間を最小化する。また、生成AIがインシデント要約を作成し、過去の対応実績から障害の根本原因や解決策候補を、関連する設計書や手順書を検索して提示する。定型作業や復旧作業を自動化し、自動化スクリプトの生成など、インシデント・定型作業対応を高度化する。

 プロジェクト管理のためのAIでは、AIテクノロジーでプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)の作業を支援し、プロジェクト品質を確保する。社内プロセスや規定、プロジェクト管理関連の質問へのチャットシステムの自動回答、プロジェクトレポートの自動生成、プロジェクトKPI自動評価やAIによる総評、要注意プロジェクト情報の提供、過去実績データに基づくプロジェクト品質の確保や評価・予測により、PMO業務を支援する。

 日本IBMでは今後、2027年には、分析、要件定義、設計/開発、テスト、運用における仕様書作成やテストを中心に効率化し、有識者によるレビューを含めても30%以上の効率の向上を目指すと説明。さらに2030年には、自動化に加え、有識者の知見を大規模言語モデル(LLM)に取り込んだAIによるレビューの仕組みを構築することで、開発と運用全体で50%のスピード向上と抜本的な効率化を目指し、IT変革を加速していくとしている。