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サイオスが2024年度の事業戦略を説明、SaaS・API・生成AIで売上拡大へ

 サイオス株式会社は13日、2024年度(2024年12月期)の事業戦略説明会を開催。「SaaS・サブスク事業への継続的投資」、「APIソリューション事業の拡大」、「生成AIによる事業強化」の3点に注力することを示した。

 代表取締役社長の喜多伸夫氏は、「当期の成長戦略は、以前から取り組んでいるSaaS・サブスク事業に引き続き注力しつつ、未来を見据えて新たな領域を切り開きたいと考えている」と説明。売上拡大と販管費減少などで増収増益を実現しながら、新領域での売上増加を目指す方針だ。

代表取締役社長の喜多伸夫氏

 なおサイオスでは、2024年12月期の業績見通しとして、売上高は前年同期比4.5%増の166億円、営業利益は2億5000万円、経常利益は3億3000万円、親会社株主に帰属する当期純利益は2億2000万円と発表している。

2024年12月期通期業績予想

 喜多社長は、「売り上げについては2期連続の増収、営業利益の黒字化を見込んでいる。これまでコロナ禍の影響があり、利益的には苦しい時期が続いたが、当期には黒字に戻ることを目指している」と説明する。

 利益黒字化を実現するために、売上増による総利益増加を実現しつつ、研究・開発費の絞り込みなど販管費を押さえ、収益を確保する方針だ。「2024年度は売上高が7億1000万円増加する見込みで、売上原価も増加するものの、売上の増加が大きいことから、総利益増加につなげていきたい。その結果営業利益2億5000万円を実現したい」(喜多社長)という。

 この売上増を担うのが、SaaS・サブスク事業への継続投資、APIソリューション事業の拡大、生成AIによる事業強化の3つの事業だ。

2024年12月期の成長戦略

 すでに売上好調なSaaS・サブスク事業は、ワークフローシステムの「Gluegent Flow」、IDaaSの「Gluegent Gate」など、Gluegentシリーズの月末におけるMRR(サブスクリプション契約等に基づき毎月繰り返し得られる収益の月間合計)×12カ月である、ARR(Annual Recurring Revenue)成長のための施策を、さらに強化する。

Gluegentシリーズの実績

 ARRの成長には、新規顧客と既存顧客のアップグレードが、既存顧客のダウングレードや解約を上回る必要がある。そこで新規顧客、既存顧客にとって魅力になるように、Gluegent FlowにはMicrosoft 365との連携強化、Gluegent Gateには統合ID管理機能を実装した。

 「Gluegent Flowは、Excelを介してGluegent Flowと基幹システムが自動連携できるようになった。ユーザーの業務を大幅に効率アップする取り組みであり、新規ユーザーにメリットをアピールすると共に、既存ユーザーの皆さまにはアップグレードを促したいと考えている。Gluegent Gateは、ゼロトラストを前提に企業グループだけでなく、サプライチェーンも含めた効率的なID管理を実現する。昨年加わった機能だが、これによってワークフローの申請、人事方針などに基づくIDの追加、削減といった作業が容易になる。企業グループだけでなく、サプライチェーン含む関係者のID管理を一元的に行えるようになるというメリットをアピールし、新規ユーザー獲得、既存ユーザーのアップグレードにつなげていきたい」(喜多社長)。

 ダウングレードやユーザー離脱への対策としては、Gluegent Flowでは、ユーザーが抱える課題を解決するための体制を構築し、基幹システムとの連携作業をサポートすることや、レクチャー会等を通じたフォローアップを行う。Gluegent Gateの方では、導入前のコンサルティングから導入後の課題に対するサポートまで、継続的に顧客を支援できるカスタマーサクセス体制を構築している。

 ほかのSaaSアプリケーションについても、サブスクリプション利用増加を促す施策や製品アピールを強化して、売上拡大につなげていく。

Gluegentシリーズの成長施策

 APIソリューション事業は、「多くのシステムがAPIでつながり、動作する」と予見し、2017年からAPIソリューション事業を開始している。現在までに、API関連技術をブラッシュアップするための人材採用・育成と、多くの先進技術を採用したアプリケーションの設計、開発を行ってきた。今後は、システム開発事業会社、コンサルティング事業会社、クラウド事業会社とのパートナーシップを強化するとともに、人材のさらなる増強により、幅広いニーズに応えられる体制の構築を目指す。

 「大型案件では、プラットフォーマー指向のお客さまが多く、システム開発事業者をはじめ、コンサルティングファーム、クラウドプロバイダーなどともパートナーシップを強化すると同時に、パートナーの中には特定領域に強みをもったところもあるので、そういったところも含めエコシステムを拡大していくことを目指したい」と、API事業を担当する、サイオステクノロジー株式会社 API ソリューション サービスライン サービスラインヘッドの二瓶司氏は説明する。

 事業モデルとしては、APIの基盤構築に特化した専門チームが、豊富なナレッジに基づき、設計から開発、運用、顧客サポートまで一貫したサービスを提供している。ただしAPI基盤構築には、周辺機能も含めた広範な機能開発、連携が必要となる。「ワンストップでAPIソリューションを提供しているが、関わる範囲が広く、深いために、かなり多面的に見ていかないと、きちんとしたシステムとして動かない。競合もいない分野なのでビジネスを順調に伸ばすことができている」(二瓶氏)。

 こうした取り組みが功を奏し、APIソリューション事業の売上は、2023年度は前年伸長率が40.3%増、CAGRが48.9%増と大きく伸長している。2024年度もさらなるビジネス伸長を目指していく。

APIソリューション事業モデル
API基盤開発支援の概要構成図
APIソリューション事業の実績

 生成AIによる事業強化では、生成AIの積極利用により生産性・効率性の向上と価値創造につなげるビジネスを目指す。新たに生成AIコンサルティングサービスの提供を始めると共に、生成AIの社内導入による業務効率化、既存製品・サービスにおける生成AIの活用促進を行う。

生成AIによる事業強化

 生成AIコンサルティングサービスとして、「Azure OpenAI Service」を使ったコンサルティングサービスの提供を始める。導入プラン作成支援から、PoC支援、設計・開発支援、運用支援とトータルでユーザーをサポートしていく。

 「競合各社もAzure OpenAI Serviceを活用した生成AI関連サービスを開始しているが、当社自身の生成AI導入経験や活用ノウハウを蓄積していくことで、利用者のニーズにあったAI導入コンサルティングを行っていきたい」(サイオステクノロジー株式会社 取締役 専務執行役員 山﨑靖之氏)。

生成AIコンサルティングサービス

 社内体制強化としては、GitHub Copilotの活用によるソフト開発体制の強化、全社員向け生成AI Chat Botの導入を実施している。Chat BotはAzure OpenAI Serviceを活用して開発したもので、こうした経験を生成AIコンサルティングサービスにも反映させていく。

 既存製品・サービスにおける生成AIの活用推進では、テクニカルサポートサービスの過去問い合わせデータをインプットした生成AIと対話できるQAサービスを構築し、課題やメリットなどを社内で実践していく。