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パナソニック コネクト、EBITDAで2027年度に2000億円を目指す 樋口泰行CEOが言及

 パナソニック コネクト株式会社の樋口泰行CEOは、2027年度の新たな指標として、EBITDAで2000億円を目指す計画を打ち出した。2027年度のEBITDA率は15%強を狙う。

 6月1日に開催した「Panasonic Group 事業会社戦略説明会 2023」において言及したもので、「中期経営計画で打ち出している2024年度の売上高、EBITDAはいずれも達成する見込みである。中期でのめどが立ったため、新たに目指す姿を打ち出した。新たな計画も達成できる」と自信を見せた。

27年度に目指す姿
パナソニック コネクトの樋口泰行CEO

 2024年度の売上高は、当初1兆1700億円としていたが、これを1兆2100億円に上方修正。EBITDAは計画通りに1500億円とし、EBITDA率で12.4%を目指す。ここから2027年度に向けて、さらなる成長を続ける計画だ。

中期計画(売上高・EBITDA)の見通し

 2027年度の2000億円のうち、Blue Yonderおよびアビオニクスの合計で1000億円を目指す。「いずれも米国に本社を持ち、米国でオペレーションを行っている事業であり、優秀な経営者に恵まれている。高い成長とともに、20%以上の高いEBITDA率を見込む。成長機会をしっかりととらえ、パナソニック コネクトの成長を牽引していくことになる」と述べた。1000億円の内訳は、どちらに寄ったものではないという。

 また、残りの1000億円は、ハードウェアをベースとしたプロセスオートメーション、メディアエンターテインメント、モバイルソリューションズ、現場ソリューションカンパニーの4事業で稼ぎ出す。EBITDA率は10%強とした。「4事業においては、専鋭化と筋肉質化で収益拡大を目指す」と述べた。

戦略を実行することにフォーカス

 成長の前提となるのは、2022年度後半からの業績回復だ。

 「2022年度上期は、部品調達に苦しんだ。需要は戻ってきたが、部品がないために、作って、納められずに苦戦した。また部材価格の高騰もあった。だが、2022年9月から調達課題が解消しはじめ、下期は大きく挽回(ばんかい)し、価格改定を進めた効果も四半期を追うごとに生まれた。現在では調達課題は解消され、2022年度のEBITDAは999億円と、当初計画の1000億円にほぼ達した。部材の調達で乱れたオペレーションを正常化し、在庫も正常化しており、より効率の高い経営を目指して、2023年度はEBITDAで1120億円を目指す」とし、「2022年度までは外部環境変化を受けたが、今後5年間は、戦略もクリアになる。成長の始まりととらえ、戦略を実行することにフォーカスする」と語った。

 現在、パナソニック コネクトでは、プロセスオートメーション、メディアエンターテインメント、アビオニクス、モバイルソリューションズ、現場ソリューションカンパニー、Blue Yonderの6つの事業領域で展開。「いずれも競争力の高い事業領域であり、業界トップクラスの製品、サービスを有しているエリアである。これらを研ぎ澄まし続けられるように、ハードウェアと、そこに立脚したサービスに経営資源を集中していく。差別化が発揮できる事業として、これからもフォーカスすることになる」という。

コネクトの競争力強化:事業専鋭化

 Blue Yonderについては、「サプライチェーンマネジメント(SCM)が、成長市場であることをとらえ、エンドトゥエンドのソリューションに、生成AIなどの新技術を加え、高度化、進化させることにより、サプライチェーンソフトウェア事業のカテゴリーリーダーとしての地位を確保する」と述べた。

 ソフトウェアビジネスは、規模の経済性が重視されること、SaaSモデルでは迅速な対応と優位な地位の獲得が重視されること、拡張性のある仕組みを用意することが大切であると述べたほか、カスタマーサクセス機能の強化、オペレーションの効率化、Pure SaaS環境へのマイグレーションなどへの投資が重要になると指摘。「スケーラビリティのために、今後3年間で2億ドルの集中投資を追加し、2026年度以降は、売り上げと利益を、全力でドライブするフェーズに入る。SCM業界で圧倒的な地位の確立を目指す」と強気の姿勢を見せた。

Blue Yonderへの投資について

 サプライチェーン領域においては、倉庫や物流における課題解決に対するニーズが高く、Blue YonderのWMS(倉庫管理ソリューション)に、パナソニック コネクトが持つセンシング技術や、ロボティクス制御技術を提供。「パナソニックグループと、Blue Yonder、Zetesの三位一体の提案によって、事業を拡大していくことができる」(パナソニック コネクト 取締役 執行役員 シニア・エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントの原田秀昭氏)とした。

パナソニック コネクト 取締役 執行役員 シニア・エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデントの原田秀昭氏

 また、日本市場を担当するBlue Yonderジャパンでも、パイプラインは3倍に達しているという。

 さらに、パナソニックグループ全体では、Blue Yonderを活用してオペレーション効率を高める取り組みが、約20プロジェクトで動いており、パナソニック インダストリーが、Blue Yonderを活用して、サプライチェーンの計画業務をDX化している例を紹介。「現在、要件定義の段階である。業務改革と同時に推進していくことになる」(樋口CEO)とした。

 アビオニクスでは、「コロナの影響を最も大きな受けた事業であったが、旅客需要や機体生産の回復基調に伴って、機内エンターテインメント機器市場は、ワイドボディ、ナローボディともに伸長する。コロナ禍で高まった地上でのエンターテインメント需要を背景に、機内でも同様のエクスペリエンスを体験したいというニーズが拡大。ナローボディが長距離を飛行するようになり、長距離化に応じた機内エンターテインメント機器の搭載比率が高まっている。さらに、パナソニック コネクトが得意とするワイドボディ分野での生産回復の動きが追加され、ここでもシェアを高めることができる」とした。

 調査によると、2024年以降は、コロナ前を上回る航空旅客需要が見込まれ、新規機体発注と、ナローボディの生産はすでに回復。ワイドボディも2025年以降に需要回復が見込まれている。

 「コロナ前は、Wi-Fiを整備してしまえば、あとは顧客が機内に持ち込んだ自分のデバイスで楽しむという環境が想定されたが、コロナ禍でエンターテインメントに対する認識が変わり、ナローボディでも機内エンターテインメントを搭載しないと利用者のニーズに対応できないようになってきた。LCCでも、機内eコマースにより、付加価値を提供するといった動きに変わっており、デジタルソリューションが不可欠になっている。性能が高い機内エンターテインメント機器が求められている」とした。

アビオニクスの事業環境

 パナソニック コネクトでは、次世代機内エンターテインメントシステムである「Astrova」を開発し、2024年からの出荷を計画。大幅な軽量化とモジュール設計、4K有機ELディスプレイを採用するといった特徴を持つほか、SKUを削減することが効率化。ナローボディとワイドボディの両方に対応したハードウェア設計としており、「業界のなかでも画期的な製品になっている」と自信を見せる。

 さらに、アビオニクスでは、99%の捕捉率となるテクニカルサービス、機内Wi-Fiのニーズが急速に高まっているコネクティビティ、エンターテインメント以外にも広がる機内サービスを提供するデジタルソリューションの強化により、安定的に事業を拡大する考えだという。「リカーリングビジネスの拡大にもつなげることができる」と手応えを見せた。

パナソニックアビオニクスの事業戦略

 また、プロセスオートメーション、メディアエンターテインメント、モバイルソリューションズ、現場ソリューションカンパニーの4事業については、「より差別化し、より専鋭化した製品、サービスを提供するだけでなく、徹底的なオペレーション改革と生産性向上で、固定費率を2%削減し、収益力を高める。今後3年間で1000人の合理化を図り、さらなる筋肉質化を目指す」という。

 モバイルソリューションズで取り扱っているレッツノートおよびタフブックについては、「半導体の調達問題などにより、苦戦した時期もあったが、レッツノートは特定のお客さまに対して立地がいい事業を継続しており、タフブックは欧米の政府、官公庁、警察などで、これがないとオペレーションが回らないという声があがっている。オペレーションエクセレンスを追求すれば利益がでる」(原田シニア・エグゼクティブ・ヴァイス・プレジデント)と述べた。

各事業体の事業戦略(サマリー)

 2024年度のEBITDA率は、プロセスオートメーションが14%、メディアエンターテインメントが15%、モバイルソリューションズが10%、現場ソリューションカンパニーでは10%を目指す。

 加えて、パナソニック コネクトの本社機能のスリム化も図る計画で、戦略策定機能や経理、品質、調達部門でのプロセス改革による効率化によって、人員を削減するとしている。

構造改革の成果

 一方、樋口CEOは、2017年以降の6年間に渡る構造改革の成果についても振り返った。

 事業立地改革として、セキュリティシステム事業の外部資本導入と、通信衛星サービス事業の売却を実施したほか、POS端末やフィーチャーフォン、ドキュメントスキャナー、PBX、SDカード、光ピックアップ、アグリ事業を終息。2022年度にはビデオ会議システム「HDコム」事業を終息し、これまでに8事業の終息を完了した。また、岡山工場とパナソニック・モバイルコミュニケーションズ北京工場を閉鎖。その一方で、Blue Yonderを買収した。

 「他社と差別化できる分野を選択し、そこに集中した。単品やハードウェア、コモディティリスクが高いものは撤退した。アナログ的な擦り合わせがある事業、模倣されにくい技術を持つ事業、高い利益率を持続できる事業に集中したポートフォリオマネジメントを進め、あわせて構造改革も推進し、約2500人の人員削減を実施した。一定の筋肉質化が果たした」と述べた。

事業立地改革

 また、「ポートフォリオマネジメントに終わりはない。持続的に収益が稼げるかどうかを軸にして、推進していくことになる」としたほか、「米本社を持つアドビオニクスとBlue Yonderでは、米国人経営者によるスピードが速い改革を行っている。パナソニック コネクト全体の経営の近代化を推進するためには、学ぶところも多い。全体の改革を託している部分もある」とも述べている。

 さらに、カルチャー改革の推進についても説明。「カルチャー改革は、すべての戦略のベースになる取り組みであり、企業競争力の原動力と考え、生産性の向上、戦略の健全性につながっている。パナソニックグループのなかでも、リードして改革してきたと自負している。戦略面でも、オペレーション面でも競争力強化につながっている。カルチャー改革は引き続き実行する」と述べた。

カルチャー改革

 また、人材に対して、年間60億円の投資を継続的に行い、「一人ひとりのスキルを向上させ、市場価値に則した報酬レンジで報い、従業員の活躍によって、成長していくという好循環を生み出す会社になりたい」と述べたほか、「年間投資規模は、グローバルカンパニーと同等で、国内上場企業の平均を大きく上回る水準である。研修費用の増加、休暇の種類を増やすこと、報酬を高めることに投資している」とした

 例えば、有給休暇と組み合わせて、5日以上の連続休暇を取得する「コネクターズチャレンジホリデー」では、取得率が目標に届かなかった部門では、担当役員の賞与を減額するという厳しい姿勢で取り組んでいることも明かしている。

 さらに、ダイバーシティの尊重、ハラスメントに対する厳正な対応に取り組んでいることにも言及。「ハラスメントについては、日本の企業で最も厳正に対応するつもりである。最も厳しい懲罰基準に改定している」と語った。

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