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JBSが2023年9月期上期連結業績を発表、買収企業の影響を加えた2025年度の財務指標も公開

決算会見の様子

 日本ビジネスシステムズ株式会社(以下、JBS)は8日、2023年9月期上期連結業績を発表するとともに、それにあわせて中期経営計画を上方修正。その詳細を発表する会見を5月9日に開催した。また、エンタープライズAIに注力していく方針を打ち出し、2023年4月からChatGPT導入コンサルティングサービスを開始したことなどについても説明している。

 JBSでは4月に、エンタープライズAIの導入支援サービスとして、「アイプリシティ チャット Powered by ChatGPT API」の提供を開始。機密情報の漏えいリスクを回避したChatGPTアプリケーションを提供し、安心安全でスピーディーな導入をサポートすることを発表している。

 JBS コーポレート戦略本部兼HR戦略本部 担当執行役員の前田憲仁氏は、「ChatGPTを企業で活用する際には、オープンソースのデータだけでなく、企業内のデータベースにアクセスし、そのナレッジを活用できる環境構築が求められている。セキュアなデータベース連携をJBSのソリューションとして提供し、これをコンサルティングサービスと組み合わせることができる」と説明した。

エンタープライズでの活用を想定した、「ChatGPT」導入コンサルおよびアプリの提供を開始

 さらに「Microsoftでは、さまざまな製品領域でAIに関するアップデートを発表している。Copilotシリーズの提供も予定されており、これらを活用することで、オフィスワークの生産性革新や開発自動化などを実現できる。AIを活用した業務アプリケーションの開発も期待され、その点でも貢献できる」とした。

 エンタープライズAIの活用については、すでにさまざまな業界から引き合いがあるという。

 JBS 代表取締役社長の牧田幸弘氏は、「米Microsoftでは、生成AIを開発しているOpenAIへの投資を積極化しており、今後は、同社のクラウド製品のすべてにAIを搭載することを発表している。ChatGPTを中心としたクラウドAIサービスは世界中で利用者が増加しており、エンタープライズ企業のなかでも、安心安全に、セキュリティを担保した形で利用したいというニーズが高まっている。エンタープライズ企業向けのAIサービスを、導入コンサルティングから利用サポートまでを提供するとともに、この分野に向けて積極的な人材や資金を投入していく」と述べた。

JBS 代表取締役社長の牧田幸弘氏

買収したネクストスケープの効果を盛り込み、2025年度の財務指標を上方修正

 またJBSでは、2025年度(2025年9月期)を最終年度とする3カ年の中期経営計画を2022年11月に発表していたが、買収したネクストスケープの効果を盛り込み、2025年度の財務指標を上方修正。前回公表値に対して売上高は44億円増の1244億円、営業利益は4億円増の89億円、営業利益率は7.2%とした。売上高の年平均成長率は13%、営業利益の年平均成長率は30%という高い成長を目指す。

 あわせて、未定としていた2023年9月期の通期見通しも発表。売上高は1017億300万円、営業利益は46億6700万円、経常利益は47億2200万円、当期純利益は28億8000万円とした。

 JBS ファイナンス&GA本部 担当執行役員の勝田耕平氏は、「JBS単体の業績予想に変更はなく、ネクストスケープと日テレWandsの持ち分法適用による影響を加味した。ネクストスケープとの連結により、売上は増加する一方、取得コストが先行したことで、2023年9月期の営業利益は減少する」と説明した。

中期経営計画(~2025年9月)
連結:2023年9月期業績見通し

 JBSの前田執行役員は、「クラウドIDを軸にエンタープライズ企業のDXを牽引する、という基本方針に変更はない。アジャイル開発で実績を持つネクストスケープを子会社化することで開発力を強化し、JBSが持つクラウド業務アプリケーションの実績、ノウハウなどと組み合わせることで、Microsoft Cloudの需要拡大に対応する。公共、メディア、流通、製造といった顧客に対してソリューション提供を推進するとともに、業界特化、業界横断、継続的に顧客を支援するマネージドサービスの3軸で展開していくことになる」とした。

 また「JBS Cloud Suiteは、CAF(Microsoft Cloud Adoption Framework for Azure)によってクラウドの導入効果を最大化するベストプラクティスを提供でき、ここにJBSが持つソリューションのノウハウ、実績を組み合わせて、パッケージ化できることが強みになる。データセンタークラウド化、クラウド型シンクライアント、ビッグデータ活用が、ニーズが高いシナリオであり、ここにおいて実績が積みあがっている」と述べた。

ソリューション・サービス展開を加速

 ネクストスケープの子会社化により、相互送客、自社サービスおよびプラットフォーム開発の促進、メーカー各社との協業強化の3点でシナジー効果が生まれるとも述べた。

ネクストスケープとのシナジー

 さらにJBSでは、2023年4月にEnterprise Business Unitを新設し、顧客志向体制を強化。同ユニットは、トヨタ事業本部、ホンダ事業本部、金融事業本部で構成する。「クラウドシフトに対応するための組織であり、重点顧客に向けて製販一体の組織とした。大型顧客に入り込むことで利益率の高い案件を創出していくことになる」という。さらに、HR戦略本部を新設し、エンジニアのリスキリングを加速する考えも示した。
また、マイクロソフトの最上位認定パートナーであるAzure Expert MSPを更新したことにも触れた。

顧客志向体制の強化

2023年9月期上期の連結業績

 一方、2023年9月期上期(2022年10月~2023年3月)の連結業績は、売上高は466億1400万円、営業利益は22億1100万円、経常利益は21億6800万円、当期純利益は14億3000万円となった。

 JBSは、2022年8月に東京証券取引所スタンダード市場に上場。第1四半期(2022年9月~12月)から四半期連結財務諸表を作成しているため、前年同期との比較は行っていない。

 だが、前年同期(2021年10月~2022年3月)の単体業績では、売上高は378億円、営業利益は25億6000万円となっており、これと比較すると、売上高では前年同期比23.2%増、営業利益は同13.6%減となっている。

2023年9月期上期の連結決算概要

 JBSの勝田執行役員は、「売り上げは順調に増加しているが、エンジニアスキルのシフトや、ライセンス契約分野を中心とした先行投資により、営業利益は前年同期比で若干減少している。ネクストスケープは、2023年1月からの3カ月間の連結となっており、取得費用などが営業利益にマイナスとなった」とした。

 クラウドインテグレーション事業は、売上高が108億2300万円、セグメント利益は16億8500万円。前年同期の単体業績と比較すると売上高は16.3%増、セグメント利益は0.5%増となっている。「Microsoft 365の大型案件が減少する一方、インフラのクラウドシフト案件が増加している。Azureへのエンジニアスキルをシフトする取り組みも継続している」と述べた。

 クラウドサービス事業は売上高が76億7300万円、セグメント利益が11億円となった。前年同期比では売上高が25.9%増、セグメント利益は11.3%増となっている。前年度下期からの大型新規案件が安定稼働し、これによる収益性の改善効果が寄与している。

クラウドインテグレーション事業
クラウドサービス事業

 ライセンス&プロダクツ事業は売上高が281億2400万円、セグメント利益は8億1100万円となった。前年同期比では売上高が25.4%増、セグメント利益は13.4%減となっている。「大型ライセンス契約獲得に伴い、売り上げが増加している。だが、案件獲得のための戦略的な投資により減益となっている」とした。

ライセンス&プロダクツ事業

 JBSが顧客に提供しているMicrosoft 365 IDは、2023年3月時点で207万3000件となり、2022年9月時点の171万9000件から20.6%増となった。また、Dynamics 365 IDは2022年9月時点から26.2%増、Azure Sheetは同23.4%増になっている。

 「リモートワーク需要は一巡しているが、ITインフラやアプリケーション開発の需要が増加しており、内製化に関する引き合いも増加している。今後は、クラウドの支援範囲を広げていく部分に力を注いでいく」(JBSの前田執行役員)という。

ID数の推移

 一方、JBSの牧田社長は、同社を取り巻く事業環境などについて説明。「コロナ禍の3年間で、大手企業を中心にリモートワークが進展し、この環境がほぼ整ったといえる。Microsoft 365をコミュニケーション基盤として導入した大手企業では、Azureをベースにしたクラウドアプリケーションの活用、DXの推進へと、関心と投資がシフトしてきている。その結果、Microsoft 365の大型導入は一巡し、クラウドシフトへの対応が増加し、エンジニアのスキルシフトを進めているところである」と発言。

 また、「日本におけるDXは世界に比べると手つかずの状況であり、DXやクラウドへの投資がこれからの状況である。グローバルのIT大手で人員削減が発表されているのとは異なる状況にある。国内需要は引き続き旺盛である」とした。